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Food Future Session
2023.04.04. | 

[Vol.3]戸馳の二人が、東京にいる小野とのミーティングを続けている理由【Tobase Labo × Mo:take】

「Food Future Session」という壮大なタイトルで展開する、×Mo:takeの座談会。今回は、熊本県の八代海に浮かぶ戸馳島(とばせじま)で「100年後も持続可能で魅力溢れた唯一無二の島作り」を目指している「Tobase Labo(トバセラボ)」の中川裕史(なかがわ・ゆうし)さん、下田恭平(しもだ・きょうへい)さんとMo:takeの小野正視の座談会です。Vol.3では、二人と小野との出会い、関係性や二人が小野から得ていることなどについてお聞きしていきます。

出会いは、突然の直メからの「ここで働かせて下さい!」

小野:僕との関わりについて話を展開していきたいと思います。最初は下田さんから話していただきましょうか。

 

下田さん:僕は当時、フリーで民泊やホテルの立ち上げ、カフェやキッチンカーの手伝いをしていたのですが、その頃「お節介」が自分のモチベーションでもあり幸せを感じる部分だったんです。しかし、だんだんと規模が大きくなってくるとわからないことがたくさん出てくるようになり、小野さんが経営しているYuinchuを見て、立ち上げ方やブランディングの勉強をさせてもらっていました。

そしてある時、突然直接メッセージを送り「話を聞いてください!」と連絡させていただいたんですよね。まるで映画「千と千尋」の千のように「ここで働かせてください!」と(笑)

 

小野:あの時は驚きましたね。でも話を聞いて、「Yuinchuに合う合わないとか、東京に合う合わないとかを度外視して、やってみりゃいいじゃん」って(笑)。会社のメンバーにも「彼、トライアルしたいんだって」とすぐに伝えて入ってもらいました。

 

下田さん:最初はカフェをどう立ち上げるかを学ぶために、お台場のSWITCHI STAND ODAIBAの立ち上げ部分に関わらせてもらいました。

半年後、中川がいよいよ花の学校を動かし始めることになったので熊本に帰りましたが、お互いにまだ、法人化したり組織をコミュニケーションデザインしていく部分が未熟でした。「どうしよう。困った。頼れるのは小野さんしかいない!」という状況になり、無理を承知で今、お手伝いをしていただいています。

 

小野:当時はトバセラボの事業内容があまりわかっていませんでしたが、戻ってすぐに頼ってもらえたことは嬉しかったですね。彼らがやろうとしていることは社会において大事なことだと思ったので、僕でよければ応援したいし、関わらせてもらいたい、と思い、即決しました。

関わったからには応援したいと思って、毎月最低でも1〜2回はオンラインで話をしてきました。

 

概念を定めて、何をするか決め
経済と概念のつなぎ込みをする

下田さん:この機会に小野さんに聞いてみたいのですが、僕のような感じで相談がきた時、通常はどんな形でお手伝いされているのでしょうか。

 

小野:僕のところに来るものは、まだ輪郭がぼやっとしているものが多いですね。先方は早く店を出したいから、場所を作る順序や何をすべきか、という具体的なところを聞きたがりますが、僕はあえてそこをずらして話をします。

例えば、花の学校については、トバセラボの会社の方向性や概念を決めてからじゃないと作るのはお勧めしないよ、と言いましたよね。特にカフェや複合施設は、そこを整理してからじゃないと始めないほうがいいんです。そして「短いリードタイムで稼げるとは思わない方がいいよ」とか「カフェだけで収益構造が成り立つと考えない方がいいよ」とか、概念と経済のバランスを議論します。

 

トバセラボの場合は、農作物の販売に主構造があるので、そのマッチングで考えると、こういう店や施設がいるんじゃないかという概念とつなぎ込みをしました。僕はそれを座組みと言いますが、そこに長期プランがあり、短期はこういうプランでこういうことをやった方がいい、と。ちょうどその話をさっきしてきましたね。

お手伝いを初めて1年経ってようやくここに取り掛かったのは、農業も、観光としての施設運営もどちらもやりたそうだったので、まずは経営方針としてどっちにするかという概念を決めることが先だったからです。そして、農業の収益と場づくりをする体力も含めて経済と概念のつなぎ込みもできたので、座組みをビジュアルとして見せていく段階に入った形です。

 

中川さん:概念と経済は、世の中で流通している言葉でいうと、ロマンとそろばん、ですね。

小野さんと話していると、いつも脳みその凝りが全部取れて、言いたかったけどうまく言えなかったところ、雲がかかっていたところを全部言語化してもらえるんです。

 

できない理由があることと、できないことは違う
だから、決して否定から入らない

下田さん:小野さんって、僕らがやりたがっているけれどやめたほうがいいことを、僕らの方から「やりません」と言わせるのがものすごく上手ですよね。やりたい気持ちがある中で、「ダメ」と言われるとその気持ちが後を弾きますが、小野さんの問いかけに沿って紐解いていくと、自分達で「これはできませんわ」となるんです。そこで燃やし尽くすので、すぐ次にいけますね。

 

中川さん:そして小野さんは、絶対に否定から入らないですよね。だからこそ、「これは絶対にいけそう」という部分が明確になります。

 

小野:そう言われると嬉しいですね。

僕自身はあまりコンサルタントを頼ったこともありませんが、ロマンとそろばんをつなぎ込むときに、できない理由を否定的に捉えさせてしまう人たちも結構多いと思います。でも僕は、できないことはないと思うんです。

できない理由があるだけで、「できない」ではありません。であれば、今できない理由は明確にするけれど、否定する必要はない。やりたければやればいいけれど、時間軸は今ではないのでは?という捉え方をするようには意識しています。だからこそ、否定はしないけれどできるはず、とさっき言ってくれたことが僕のコンセプトなのかもしれないですね。

 

下田さん:オンラインで「では、さようなら」と言った後に、二人で「やばいね」「また掘り返されたね」って言い合っています。どうしても、地方で生まれ育った自分たちの知見で考えてしまうので、毎回刺激になります。

それに小野さん自身がこれまでされてきた経験がベースにあるので、頭ごなしに言われている感じが全くなく、むしろ貴重な体験をシェアしていただいていると感じられます。

 

小野:僕は役得な感じですね。第一次産業である農業には簡単には関われないけれど、このポジションで関われるのだから一生懸命やらないともったいないと思います。農業は僕の事業にもリンクしますし、個人の身体にも関係してきますから。

 

次回は4/6(木)に公開予定です。最終回は、トバセラボのこれから、について語っていただきます。(つづく)

 

– Information –
Tobase Labo

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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