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Food Future Session
2023.04.06. | 

[Vol.4]100年続く島作りというヴィジョンのもと、アボカドの国産率UPというミッションに挑む【Tobase Labo × Mo:take】

「Food Future Session」という壮大なタイトルで展開する、×Mo:takeの座談会。今回は、熊本県の八代海に浮かぶ戸馳島(とばせじま)で「100年後も持続可能で魅力溢れた唯一無二の島作り」を目指している「Tobase Labo(トバセラボ)」の中川裕史(なかがわ・ゆうし)さん、下田恭平(しもだ・きょうへい)さんとMo:takeの小野正視の座談会です。最終回は、トバセラボのこれから、について語っていただきます。

パッションフルーツの加工品で日本一を目指す
リードタイムの長いアボカドで収支を合わせる仕掛け

小野:トバセラボの今後の展開について少し話をさせてください。農業についてはリードタイムの長いアボカドがメインなので、トバセラボというブランドの概念と経済をつなぎ込むために、リードタイムの短い農作物を作りながら、その間にパッションフルーツの加工品、リリコイバターなどの加工品を作っておこうという話を提案しています。

 

花の学校については、大きく攻めすぎると支出と収入が合わなくなるので、小さく存在を示していき、海水浴場に来やすくすることで観光地化しようという話をしていますね。

 

中川さん:僕の頭に描いたものを下田に伝えるのが下手なので、僕の頭の中と彼の認識しているものが違いすぎるんですが、一度マインドマップを作って僕の頭の中をバラバラの状態で見せました。そして、これを順位づけしようと話をしたところ、一番に上がったのがやはり経済で、加工品事業を伸ばしていこうという話になりました。次に花の学校の事業、その後にアボカドの苗づくり、販売と続きます。

パッションフルーツの加工品は日本ではまだ少ないので、わざわざ求めて買う人はいません。だからこそ狙い目ですし、パッションフルーツの加工品で日本一を取れるのではないかという話もつい最近してきたばかりです。熊本で、手に取ってもらいやすいパッケージデザインをしている方たちとYuinchuさんと一緒に商品を作っていこうかと話しています。

 

下田さん:加工品も頑張ってもらいながら、地域をどれだけ巻き込んでいけるかと考えていくと、島の人たちに理解してもらいながら、島から少し離れた町の人たちとどれだけ親和性を作っていけるかが大事だと思っています。そしてコミュニティマネージャー的に、外から入ってくる会社と島の人たちをつなぐ役目をしていくのが僕の役割だと思っています。

花の学校という大きな箱を動かすためにはアライアンスパートナーが絶対に必要なので、1階はそういう人たちが集う場所に、2階はオフィスという共存した施設にできればと思っています。

 

「何もない」戸馳島を、どうやって行きたくなる島にするか

小野:下田さんは元々場づくりをやりたいという思いがあったので、トバセラボの中でも観光と呼ばれる事業の方に熱量がありますね。熊本と言えば阿蘇、天草という観光地があり、天草にはかなりの数の観光客が来ていますが、なぜ入り口にある戸馳ではなく天草に人が集まるようになったと感じていますか。

 

下田さん:天草は食の強さと、海の綺麗さがあります。そして旅館などの宿泊施設がありますし、リゾラテラス天草というリゾート感あふれる商業施設もあります。冬は旅館で温泉に入ったりと、春夏秋冬楽しむことができます。

 

中川さん:そして天草は移動距離が長いので、ドライブで海を見ておしゃべりしながらあっという間に着いちゃうような自然の力がすごいですね。

 

下田さん:最初は天草も、ブランド鶏・天草大王、車海老、紫ウニを全国で売っていましたが、単価の高い旅館や施設、グランピング施設もできて人の流れができるようになりましたね。逆に戸馳は、食べるものも市内で調達していかないといけないほどです。

 

中川さん:出来上がった観光地を目指すのではなく、何もないから島を一周したり、自然の風景そのままがいいと言って来てくれる人も絶対にいると思います。なので、わざわざ何かを作らなくても、という議論もまた出てくるのですが。

 

小野:何を設置するかという話ですよね。自然の中で過ごしやすくするためのソフトとしてのカフェだったり。以前、Mo:take MAGAZINEで取り上げたVILLAGE INC.さんも近いイメージですが、「なんでもないがある」という中でどう滞在させるか、演出が必要ですね。

伊豆の式根島も民宿しかない、自転車で1周できてしまうような島ですが、何をしに行くのかと聞かれると、コンテンツはないんです。ただ、滞在できるソフトウェアはある。電波が届くようにするとか最低限の準備をしてあげつつ、もう少し何か欲しいと思った時に、すぐにアクセスできるように用意できるといいかもしれないですね。

 

「3年後に景色がどう変わっているか、また取材に来て下さい」

小野:最後にもう一度アボカドに話を戻したいと思います。冒頭で、国産アボカドの農家を増やして産地の負担を減らしたいという話がありましたが、アボカド農家になる魅力はなんだと思いますか。

 

中川さん:まずは課題からになりますが、初期投資が高いこと、そしてリードタイムが長いのですぐお金になるものができないという課題があります。なので、例えばイチゴなど収益性のあるものを育てながら挑戦するか、もしくはトバセラボで土壌の調査、苗の剪定までをして、栽培技術を教え、卸先とのマッチングまでをするというパッケージも今作っています。

 

できるだけ初期投資を抑えるために契約も2年間で分割できるようにして、収益化できる別の事業にも費やせたらいいなと。そこは多分、僕らしかできないと思っています。

アボカドって他の作物をやるよりも作業時間が少なくて、ミカンよりも高収益の作物です。アボカドが今の価格帯の5分の1になったとしても大丈夫です。行政からの補助はありませんが、その分、僕らがしっかりと実績を作り、補助金をつけてもらえるようにしていきたいなと考えています。

 

下田さん:トバセラボで3年ぐらいの木まで育ててあげて、4年目の木からスタートできますよ、というプランもいいのかな、と。これから to B 向け、農業に参画したいという企業向けに展開していくとしても、5年待てる企業はそんなに多くないかもしれないので。

いずれにしても、僕らが戸馳でどれだけ成功できるか、第一人者としてどれだけ轍を作れるか、だと思っています。

 

小野:花の学校が、いろいろな方たちと触れあうタッチポイントになれば最高ですね。二人はやりたいことがありすぎで、それが唯一の悩みかもしれないですが、100年続く街づくりと、アボカドの国産率を1%にすることが両天秤であった時に、前者が二人のビジョンで、後者がミッションなのかもしれないですね。

 

下田さん:3年後にはまただいぶ景色が変わっていると思うので、そのころにまた、ぜひ取材をして欲しいと思います。

 

– Information –
Tobase Labo

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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