2019.10.24. | 

[Vol.3]「ぶどうに来てもらう」都市型ワイナリーの実験と挑戦 深川ワイナリー東京 上野浩輔

ワイナリーならではの魅力を街なかで気軽に味わえる「深川ワイナリー東京」訪問。Vol.3は、深川ワイナリー東京の「これから」についてお伝えします。現在進行中の屋上ぶどう畑計画のこと、2020年のオリンピックに向けての展望について、ぶどうの木に囲まれながらワインを楽しめる「深川ワインガーデン」でお話を伺いました。

イメージはNYのブルックリン。屋上ぶどう畑化計画

日が落ちかかる頃、わたしたちが向かったのは駅直結のスーパー「赤札堂」。屋上に上がると「深川ワインガーデン」があります。

 

上野さん:ここに100本の苗をもってきてぶどうを育て始めて、今2年目が終わるところです。ここまではとにかく枝を伸ばす時期。来年は枝を剪定して形を整えて、実をつけていきます。4年後には1本あたり3、4キロ取れる予定です。

 

時間をかけて育てていくのだと知ると、プランターからちょっと頼りなげに伸びているぶどうの木たちが貴重なものに思えてきます。そもそも、どうしてぶどう栽培をしようと思ったのでしょうか。

 

上野さん:「ぶどうに来てもらう」ということでやってきたけれど、ぶどうがそばにあるのもやっぱりいいんですよね。

 

上野さんの前の職場は滋賀県内のワイナリー。「ぶどうのそば」で長年ワイン醸造の仕事をしてきた上野さんらしい言葉です。

イメージはニューヨークのブルックリンなんです、と上野さん。ブルックリンでも屋上果樹園としてぶどう栽培をする取り組みをしているのだそう。

 

上野さん:今、江東区内の工務店さんから、他のビルの屋上でもぶどう栽培をやらないか、というお誘いをいただいてます。地図広げて、「こことここと、ここ合わせたら1000平米くらいになるよ」なんて話をしているところです。将来的には、獲れたブドウを少しずつ全種類のワインに仕込んで、「全部江東区産のワインです!」ってね、やりたい(笑)。

 

 

「ガラスと木材の街」から、人が集まる「醸造所のある街」へ

ブルックリンも、深川と同じように川の多い街です。また、クラフトビールで有名な街でもあります。深川とブルックリンは、街の雰囲気がどこか似ているのかもしれません。

 

上野さん:この辺りも、今ブルワリー(ビール醸造所)が増えてます。江東区内には今、ワイナリーが2つ、ブルワリーが4つあるんですよ。

 

この夏には、江東区内の6つの醸造所がタッグを組んで、スタンプラリーを行なったそうです。

 

上野さん:これね、最高なんですよ。一軒入ってちょっとひっかけて、お店出てから散歩がてらてくてく歩いてってまた一軒。途中で餃子屋さんとか寄り道したりね。最後にはけっこう出来上がってますね(笑)。

 

楽しそうな様子が目に浮かびます。

 

上野さん:江東区はもともと工業を中心とした、ガラスと木材の街です。そういう場所で、何か人が集まるような新しいことをするといいんじゃないかと思ったのがこの街に来た理由でもあります。だから、今こうやっていろんな人たちとつながりながら、新しいことをやっていけているのが楽しいですね。

 

商店街の一員として、納涼大会や桜祭りといった地域のお祭りにも参加しているそうです。

 

上野さん:「ここワイナリーさんの枠ね」って言ってもらって。ほんとに地域のメンバーとして、どっぷりやらせてもらってます。

 

 

2020オリンピック・パラリンピックと深川のこれから

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催のカウントダウンに入り、区内に多くの競技場を擁する江東区でも、開催に向けての熱気が少しずつ高まりつつあるようです。

上野さんに、東京オリンピック・パラリンピックに期待するところを聞いてみました。

 

上野さん:ここからだと、選手村が割とすぐ近くなんですよね。せっかくだから、いろんな国の選手やお客さんが、ふらっと立ち寄ってくれたらいいなあ、と思いますね。深川の街は、川もあるし、いいエリアなんです。下町らしい人情味もあって。オリンピック・パラリンピック開催を機に、ワインだけということでなく、街全体が盛り上がればいいな、と思っています。

 

取材後、誰からともなく屋台のワインとおつまみを買い求め、テーブルに陣取った取材チーム。日はすっかり落ちてテーブルにはランプの炎が揺れ、気持ちのいい初秋の風が吹いています。気楽におしゃべりをしながらワインを傾けていると、こんな時間をもっと日常の中に持ちたいな、という気持ちがわいてきます。

深川ワイナリー東京は、そうした日常の中の気楽な喜びを支えてくれる、心強い味方になりそうです。

 

 

 

– Information –

深川ワイナリー東京

東京都江東区古石場1-4-10高畠ビル1F

<平日>15:00~22:00

<土日祝日>12:00~22:00

・17:00からバータイム(L.O 21:30)

・試飲は17:00まで
※定休日:火曜日

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ライター / 八田 吏

静岡県出身。中学校国語教員、塾講師、日本語学校教師など、教える仕事を転々とする。NPO法人にて冊子の執筆編集に携わったことからフリーランスライターとしても活動を始める。不定期で短歌の会を開いたり、句会に参加したり、言語表現について語る場を開いたりと、言葉に関する遊びと学びが好き。

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