2022.04.21. | 

[Vol.2]地方のテレビ局がネットワーク作りの窓口になり、作り手自らが自分を売り出す。「ロコの星プロジェクト」宮本ひでさん

地方(ローカル)で輝いているヒト・モノ・コトを応援し、全国に発信している「ロコの星プロジェクト」。全国12地域のローカルテレビ局と連携し、テレビ放送やオンラインを通じて全国、世界のマーケットにつなげる「地方の新しい売り方」の確立を目指しています。
今回は、ロコのプロジェクトが目指してきたことや新たに取り組んだライブ配信ショッピングについて、引き続き代表の宮本ひでさんに聞いていきます。

商品や作り手が持つストーリーこそが、地方の弱さを克服できる武器になる。

川崎で開催した物産展の体験から、都市部の消費者の関心を引くには、生産者や商品が持つストーリーがフックになると気づいた宮本さん。どうせ開くなら、セミナーをただ聞くだけではなく事業者自らが楽しみ、考える機会を作れないか、と考えました。それが、「ロコの星プロジェクト」だったのです。

ここで、他にも持ってきてくださったロコの星プロジェクトの商品も見せていただきました。

「これは、山形の女性が作っているお米とポン菓子です。笑顔が素敵な女性が独特の製法で作っているお米なんです」「これは、大分の婦人会の皆さんが地元の栗で作ったジャム。たくさんは作れないので、どう打ち出していいかが課題で、知る人ぞ知る、みたいになっています」。

食品だけでなく、塗り物やガラス製品などの工芸品も見せていただきました。数ある商品のどれについて聞いても、スラスラと淀みなく説明してくださる宮本さん。しかもただの商品説明ではなく、どんな人が作っているのか、地元でどんな存在なのか、課題は何なのかも含めて的確に説明してくださいます。ひとつひとつの商品の背後には人がいて、それぞれのストーリーがある。そんなことを改めて感じさせられます。

 

宮本さん:事業者さんにも、自らが自分たちの商品の魅力やその背後にあるストーリーを的確に伝える力をつけてもらいたいと思っています。
事業者さんは、想いがあるあまりどうしても話が長くなってしまうので、時間を区切り、スライドや動画を使いながら自分で発表できるように、やり方をお伝えしました。そうすれば事業者さんの成長にもつながり、物産展での見せ方や伝え方も変わっていくと思ったんです。

 

テレビ局の関連会社に所属していたからこそできたこと

一方、宮本さんの強みはテレビ局の関連会社に所属していたこと。その地域の魅力的なヒト・モノ・コトは、日々取材している地元のテレビ局が一番知っています。そして、映像を使ってそれを多くの人に伝えていく力もあります。宮本さんは早速、全国各地のテレビ局に企画を持ち込みました。

 

宮本さん:2019年には、10地域のテレビ局と連携して「プレゼンテーション型商談会」を開きました。それまでの間に事業者にもプレゼンテーションの力を身につけてきてもらっていたので、この場で事業者自らがステージに立ち、映像やスライドを使ってバイヤーにプレゼンテーションすることができました。
バイヤーの評価も高く、事業者さんもそれぞれ力と自信をつけることができたのは大きかったですね。この商談会はバイヤー向けのものだったので、これをもっと広く一般の人にも知ってもらおうと、2021年に「ロコの星プロジェクト」を立ち上げました。

 

2021年と言えば、コロナ禍真っ只中。経済状況も厳しい中、新しいプロジェクトを進めるには難しいタイミングだったのではないでしょうか。

 

宮本さん:コロナ禍でテレビ局もイベントができなくなり、放送外収入をいかに得るかが課題になっていました。そもそも、コロナ以前から「キー局さえあれば地方局はいらないんじゃないか」とも言われるようになり、宣伝収入も減っていました。だからこそ、テレビ局側も新たにできる何かを模索していたんです。
ローカル局からも巻き返したいと思っているテレビ局と、たくさんの人に自分たちの商品を知ってもらいたいと思っている地方の事業者。両者を結びつけたことが、ロコの星プロジェクトの強みとなっています。

 

オンラインショップからライブコーマスへ

プロジェクト1年目は、オンラインショップ「ロコの星みーっけマルシェ」を展開しました。ちょうど、コロナ禍で迎える初めての年末年始というタイミング。「おうちでおいしく、みんなでたのしく」をテーマに、おうちで楽しめるお取り寄せ商品を全国の事業者に考えてもらいました。

こだわったのは、単に商品を売るだけではなく、ストーリーを売るショップとして、事業者の人柄やその場所の情景が浮かぶような見せ方。事業者にも「商品の魅力を一言で言うと?」「どんなことを伝えたい?」と質問を繰り返しぶつけながら、ストーリーを引き出すことに注力したといいます。

それをさらに発展させ、season2として取り組んだのが、テレビ放送とライブコーマスを連動させたライブ配信ショッピングでした。地方のテレビ局が発掘した商品をそのまま紹介するのではなく、オーディションを開催することでブラッシュアップ。3月の3日間、12地域をライブ配信でつなぎながら、気に入った商品をオンラインで買えるという試みでした。

 

宮本さん:ライブ配信ショッピングには、たくさんの人が見に来てくれました。でも、なかなか購入につながらなかったのが、今回の課題です。ライブ配信の時間がかなり長かったのもあると思いますが、視聴した世代の人たちがまだまだライブコーマスになじみがなかったのも大きいと思います。次回以降の課題ですね。

一方で収穫もありました。これまでのテレビ局の番組の作り方では、プレゼンテーションの内容をすべて台本化して、掛け合いのやり取りさえも台本として、完成した映像を見せてきました。ところがこれがライブ配信になると、いくらキレイにできても、見ている人たちが求めるライブ感がないとすぐに離れてしまいます。

その点でテレビ局側の意識も変わってきたと思いますし、事業者さんたちもただ長く話しても聞いてもらえないことがわかり、ポイントを突いた話ができるようになってきたと思っています。

 

4/26(火)に公開予定の次回は、“富士山型”、そして“阿蘇モデル”という言葉を通して、ロコの星プロジェクトのこれからについてうかがいます。プロジェクトの未来の姿をどうぞお楽しみに。(つづく)

 

– Information –
ロコの星プロジェクト
Webサイト:https://www.rakuten.ne.jp/gold/loconohoshi/
     :https://loconohoshi-m.com
Facebook:https://www.facebook.com/loconohoshi

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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