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意外と知らないローカルフード
2025.12.10. | 

【兵庫】屋台で食べたい、兵庫の「テッパン」!|意外と知らないローカルフード

食の歴史や文化、そして土地の魅力がぎゅっと詰まった“地域の味”を再発見して楽しく紹介する「意外と知らないローカルフード」。このコーナーでは“誰もが知っているあのメニュー”ではなく、知る人ぞ知るローカルフードや、昔から変わらないその土地ならではのこだわりの逸品、時代を超えて今もなお愛される一皿、その「食」の背景にある物語をひも解きながら、その地域ならではの味とは何なのかをカジュアルにお届けします!

第18回となる今回は『兵庫』。この時期の兵庫といえば、12月14日に開催される「赤穂義士祭」。忠臣蔵のゆかりの地として知られる赤穂市で行われるこの祭りは、主君の仇討ちを果たした赤穂浪士たちの忠義をしのぶ行事で、毎年全国から多くの人が訪れます。

寒空の下、勇壮な武士たちの掛け声と太鼓の音が響き渡り、赤穂の街が一年で最も熱くなる瞬間です。今回は、この赤穂義士祭に並ぶ屋台でも食べられるかもしれない、今兵庫で食べたい、注目の一皿を調べました!

あれをかける!? 「ぼっかけ焼きそば」

兵庫県といえば、まず思い浮かぶのが神戸です。異国情緒ただよう街並み、神戸牛、洋食の老舗を思い浮かべる人も多いかもしれません。しかし、今回紹介したいのは、長田地区発祥のもうひとつの神戸の味「ぼっかけ焼きそば」です。そもそも、「ぼっかけ」って何? と疑問に思った方も多いでしょう。

ぼっかけとは、牛すじ肉とこんにゃくを砂糖・醤油・酒・みりんなどでじっくり煮込んだもの。地域によっては「すじこん」と呼ばれたりもしますが、神戸・長田では昔から「ぼっかけ」という独特の呼び名が根づいています。

語源には諸説あり、煮汁や煮込んだ具を “ぶっかける”がなまって “ぼっかける”となったことが由来という説があります。今回のメニューは、この「ぼっかけ」を、香ばしいソース焼きそばにたっぷり絡めたもの。世界中に知られている神戸ビーフほどの派手さこそありませんが、庶民が守り続けてきた濃厚な生活の味です。

 

家庭の味が「ご当地グルメ」代表に

「ぼっかけ」が生まれたのは、戦後の復興期。神戸といえども肉の高級部位など到底手が届かない時代です。各家庭では精肉店で手に入る安価な牛すじを長時間煮込み、味をしみこませたものをご飯のおかずや酒のつまみにしていました。

こんにゃくを合わせるのは、ボリュームを出すためと、食感の対比を楽しむための工夫だと言われています。牛すじのとろける旨みとこんにゃくの歯ごたえが調和し、いつしか「下町のごちそう」と呼ばれるようになりました。

そんな「ぼっかけ」を焼きそばにかけたのは、鉄板文化が根づいた長田ならでは。家庭や屋台で鉄板を囲む食文化が盛んで、焼きそばやお好み焼きが庶民に愛されているこの街で、「ぼっかけ」を焼きそばに混ぜるということは、逆らえぬ運命だったのかもしれません。

昭和40年代にはホットプレートが普及し、家庭でぼっかけの煮汁や具材を焼きそばにちょっと混ぜてみる調理法がポピュラーになります。平成の世になりB級グルメやご当地グルメがブームになると、「ぼっかけ焼きそば」の名前も定着。今では静岡の「富士宮やきそば」や秋田の「横手やきそば」とともに「ご当地焼きそば」の一角を担っています。

 

高級だけじゃない、リアルなおいしさ

さて、「ぼっかけ焼きそば」の作り方は至ってシンプルです。キャベツやもやしを炒め、茹でた麺を加えてソースを絡めたら、そこに温かいぼっかけをたっぷり投入。じゅうじゅうと立ちのぼる甘辛い香りは、空腹を直撃します。

麺に染み込むソースの香ばしさと牛すじのコク、こんにゃくの食感。最後に青ねぎや紅しょうがを添えれば、長年愛される地元の味の完成です。神戸のグルメといえばステーキやビーフカツなどの洋食が注目されがちですが、「ぼっかけ焼きそば」のような“下町グルメ”こそ、土地のリアルが見える一皿です。

決して高級ではないけれど、口に運ぶたびに人々の暮らしが感じられる、そんなメニューを楽しみたいものですね。

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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