2019.11.26. | 

[Vol.1]みんなで食の未来を創りたい「Mo:take」ヘッドシェフ坂本英文×「Yuinchu」代表 小野正視

見た瞬間、わくわくする。食べるとうれしくなって思わず隣の人に話しかけたくなる。そうして笑顔が広がっていく━━。体験型ケータリングサービス「Mo:take」の料理は、そんな場をたくさん生み出してきました。今回、Mo:takeヘッドシェフの坂本英文(さかもと・ひでふみ)と、Mo:takeを運営する株式会社Yuinchuの代表、小野正視(おの・ただし)にインタビュー。Mo:takeの未来について語っていただきました。

Mo:takeをもっと面白くするために。
一念発起してフルリニューアル

Mo:takeのWEBマガジンとして「Mo:take MAGAZINE」がオープンしたのは2018年6月。それからは、生産者、料理人、生活者の想いを丁寧につなぎたいという想いで、食やライフスタイルに関わる分野で活躍する人や魅力的な食のストーリーを発信してきました。

お気づきになった方もいるかもしれませんが、Mo:take MAGAZINEはこの秋にリニューアルをしています。なぜ、リニューアルしたのか。今回のリニューアルに込められた想いを伺いました。

 

小野:5年前にMo:takeの事業を始めたのですが、その後、「料理を誰に届けたいのか」を明確にするため、「Mo:take PLUS」を立ち上げました。Mo:take PLUSではケータリングにとどまらず、場やイベントの企画、運営、プロデュース、メニュー開発なども行っています。このMo:take PLUSを展開することで、場に食がかけ算されると、場が生き生きとして、豊かになることを実感したんですね。そうした気づきから得たものを情報発信するために創刊したのがMo:take MAGAZINEです。

Mo:take MAGAZINEでは、丁寧に取材をして伝えることで、「ごはんが美味しかったね」、「楽しい時間だったね」といった感想だけでなく、その場や食にどんな想いが込められているのか、どうやって生まれたのかを伝えることができる、そう確信しました。このことは、Mo:take MAGAZINEを立ち上げてから1年半の間に僕自身が収穫できた種だと思っています。

 そして、Mo:takeをフルリニューアルすることが、この種を芽吹かせる大きなきっかけになるだろうと思ったんです。これまでのMo:takeはケータリングがメインサービスだったのですが、Mo:take PLUS、Mo:take MAGAZINEをあわせた3つの軸によるサービスへと進化することで、よりお客様のご要望にお応えできる事業にしていきたいと考えています。そして、一念発起するなら今、このタイミングでやりたいと思ったんです。

 

 

レンタルスペースサービスの
料理として始まったMo:take

続いて坂本は、Mo:takeの始まりについて語ります。

 

坂本:僕たちは最初、「GOBLIN.」というレンタルスペース事業で起業しました。その後、レンタルスペースで提供するための料理をつくりはじめたんですGOBLIN.を始めたのは10年くらい前ですが、当時はまだレンタルスペースという文化がなく、貸会議室という認識の方が強かった。そのなかで、撮影やパーティなどの用途を取り入れたりして、会議にとどまらない、みんなが集まる場所をつくる事業としてGOBLIN.を展開していたんです。その頃は、まだ料理は脇役という立ち位置だったと思います。

 

小野:いい意味でのサブキャラでした。

 

坂本:でも、食事があると、場の雰囲気や盛り上がり方が全然違うんです。そこでGOBLIN.限定のケータリングということで料理提供を始めたんですね。そうやって僕たちが料理を提供したり、スペースを活用していくうちに、食はお客様にとってコンテンツになると感じるようになっていきました。食がコミュニケーションのきっかけになっている、と。さらにお客様の利用の様子を見ていくうちに、この領域をもっと突き詰めていきたいと考えるようになって。自社のレンタルスペースだけではなく、外部ケータリングとしてMo:takeを始めるようになりました。

 

小野:実は、Mo:takeの前身は「goost.」というサービス名でした。GOBLIN.は日本語で「妖精」という意味。そこで提供する料理だから、「おばけ」。グッドの「goo」とテイストの「st」で「goost.」。語呂もいいなあと。脇役という意味も込めていましたね。おばけって見えるようで見えないじゃないですか。かわいらしい雰囲気のロゴもつくりました。陰で支える、かわいい脇役のおばけがいると場がもっと華やかになる、そんなコンセプトで立ち上げたんです。

 

当時は脇役として捉えられていた料理。でも、提供していくうちに、二人は、「料理は脇役に収まりきらないコンテンツなんじゃないか」と思うようになります。

 

 

お客様に気づかされた。
「料理はメインのコンテンツになる」

小野: Mo:takeのケータリングは、あなたの場を彩るための料理をどこへでも持って行きます、というサービスです。あくまでお客様のつくる場が主役だと考えています。ですが、料理がお客様の場づくりの重要な要素だと思うと、脇役という言い方では収まらないんです。

 

坂本:次第に、「料理は主役にもなるコンテンツなんだな」と思うようになりました。お客様に気づかされたんですよね。

 

小野:それに気づいたのは、「GOBLIN.ではない場所での利用なのですがいいですか?」とすごく申し訳なさそうにお問い合わせいただいたのがきっかけです。レンタルスペースではなく食の部分だけを選択されるということは、GOBLIN.のサブのサービスにとどまらないのではないか、と思うようになりました。

 

起業当初は目新しかったレンタルスペースサービスも、シェアリングエコノミーの台頭で、不動産会社やIT企業などの参入が増えていきました。ですが、レンタルした場を彩るケータリングについては、まだそれに適した料理を作るプレーヤーはいませんでした。goost.のように、場を彩る遊び心を盛り込んだ食事が求められるようになったのは、自然なことなのかもしれません。

 

小野:その後、立て続けに「ケータリングをお願いしたい」というお問い合わせが2件あって、次の依頼がきたら、もうケータリングを事業化するしかないと思ったんです。

 

こんなふうに、二人は、お客さんから何を求められているのかを感じ取っていったそうです。

 

小野:お客様が求めていることを提供したい。僕たちの根幹はそこにあります。

 

坂本:僕たちの事業は、お客様に気づかせてもらった部分が大きいと思います。

 

小野:会社のサービスをお客様が作ってくれたという実感がありますね。レンタルスペース業界に様々な企業が参画しはじめると同時に、GOBLIN.の飲食売上は少しずつ落ちていきました。その中で、自分たちの強みは何か、なにを提供すると喜ばれるのか、改めて考える必要がありました。その流れの中でMo:takeを立ち上げたんです。

 

坂本:Mo:takeの立ち上げから1~2年後、数字がどんどん伸びていきました。反対にGOBLIN.飲食の数字は落ちました。昨年が象徴的でしたね。

 

 

お客様の声はすごく聴く。
必要なことだし、楽しいから。

お客様からの気づきでMo:takeが生まれ、サービスが作られてきたと二人は話します。視点を変えると、二人の想像を超えたところで力が働き、それが事業を変えていった。そんなふうにも言えるのかもしれません。

 

小野:僕たちは怖がりなんですよね。だから人一倍、お客様の声に耳を傾けるのかもしれない。マーケティングやリサーチといった机上の論理ではなく、お客様の声を聞いて、お客様の欲しているものを正しく届けたいという思いがあるんですよね。未熟と言えば未熟だし、とてつもない強みだとも思います。

 

お客様の声を聴く。その上で、自分たちが得意とするものを商品やサービスに仕立てる。それがふたりのやり方なのでしょう。

 

小野:完全なマーケットインかといえば、そうとは言い切れない部分もありますね。「食べられる土」など、自分たちが面白いと思うものを作って、「これ面白くない?」って出すことが好きです。ただ、出した後は、お客様の声を聴くことが必要だよね、という意識が強いですね。必要だし、楽しい。Mo:takeマガジンも、お客様の声を聴いて、それを加速させて生まれたものなんですよね。

 

 

お客様のやりたいことを
+αの表現でもっと楽しく

レンタルスペースの料理がMo:takeというケータリングサービスになり、料理だけに止まらない食を中心としたサービスMo:takePLUSが生まれ、さらに情報発信のためのメディアとしてMo:take MAGAZINEがはじまった。

 

小野:Mo:take PLUSの生まれた背景にも、お客様のニーズがありました。法人のお客様から、イベントなどの食事を依頼されることが少しずつ増える中で、「POPUP SHOP、展示会、PRイベントに食を持って行って、こんな彩りをつくります」というメッセージを伝えるのに、ケータリングサービスがぴったりくるという感覚があったんですよ。レンタルスペースがシェアリングエコノミーの一種として認知され、実際に利用されるお客様の声を聞くなかで、今後は食がもっと場に紐づくぞ、と直感しました。そこで思い切って、Mo:take PLUSの事業を立ち上げました。Mo:take CATERING、Mo:take PLUS、Mo:take MAGAZINEの順番に生まれて、この秋、これらを統合する形でフルリニューアルしたんです。

 

坂本:その流れができたのも、やっぱりお客様の声が大きく影響していましたね。お客様がどういうコンセプトでイベントをやろうとしているのか、食だけで表現するのではなく、総合的なコンテンツとして作ることをMo:take PLUSのサービスに盛り込んでいきました。一般的なケータリングよりもPLUSという概念を含めて、Mo:take PLUSとしたんです。

 

小野:そして、Mo:take PLUSの後にMo:take MAGAZINEが生まれた。これもやっぱり、お客様の声が生きているんですね。場を作りたいとか、食で何かを表現したい人たちが、Mo:take PLUSで何かを形作ることができても、一回のイベントだけは本当の目的を達成することができません。その後どうしよう? となるわけです。 場を作りたい、食で表現したいと思った理由や、そこに至るプロセスもなかなか伝わりません。するとやっぱり、「前後のストーリーや、その人の想いを伝えたいよね」となりますよね。そこで、食を提供するまでの話、そして後の話を発信するメディアとして生まれたのが、Mo:take MAGAZINEです。

 

 

「食」で目の前のことを面白く、自由にする

まだ貸会議室というイメージが強かった頃、レンタルスペース事業に新しい価値を作っていった小野と坂本。同じように、ケータリングをアップデートし、新しい価値をつくってきました。目の前のことを面白く、自由で、豊かにすることにチャレンジしながら。そのうちに食のコンテンツが、会社の中で圧倒的な存在感を放つようになったそうです。

 

小野:僕の経営するYuinchuは、空間、食、クリエイティブと幅広い事業を創り出してきましたが、なかでも食が一番幅広いんじゃないかなと思います。

 

坂本:食べることって人間にとって当たり前のことというか、一番大事なことだと思うんです。だからこそ、食が新しいことに興味を持つきっかけになれるんじゃないかな。いろいろな形で、いろんな人に寄り添うことができるのが食なのかな、って。大きな可能性を感じますね。



とても自由で型にはまらない事業を作りながらも、「自分たちは怖がりだから、お客様の声には丁寧に耳を傾ける」。その絶妙なバランスが今のMo:takeやMo:take MAGAZINEを面白くしているのだろうと感じたインタビューでした。次回(12/3)は「出会い」について。Mo:takeではたくさんの方々に出会い、食の持つ可能性を強く感じてきました。その話をたっぷりとご紹介します。(つづく)

 

– Information –
Mo:take
https://motake.jp/

ライター / たかなし まき

愛媛県出身。業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。人の話を聴いて、文章にする仕事のおもしろみ、責任を感じながら活動中。散歩から旅、仕事、料理までいろいろな世界で新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。

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