2020.09.15. | 

[Vol.2]美味しい料理のある空間を演出する 料理家・フードコーディネーター下条美緒 ×「Mo:take」ヘッドシェフ坂本英文

皆さんは、料理をする時にレシピ通りきっちり計量するタイプですか? それとも、「だいたいこんな感じ」と経験をたよりにするタイプでしょうか? 料理家・フードコーディネーターの下条美緒(しもじょう・みお)さんと、Mo:takeヘッドシェフの坂本英文(さかもと・ひでふみ)による対談の2回目は、下条さんが料理の道に進んだきっかけに加えて、お二人の対照的な料理の作り方についても聞くことができました。

建築の仕事から、料理の道への転身

ー下条さんは元々、建築関係のお仕事をしていたと聞きました。そこから料理の道を志すことになったきっかけを教えてください。

 

下条さん:大学では建築学科で都市計画を学んでいたんです。課題が大変で、学校に泊まり込んで模型を作らないと終わらないので、学校の近くに友達と部屋を借りていました。その友達が料理上手でご飯を作ってくれたり、彼女が持っていた料理雑誌、料理本を見せてくれて。

私、その時に初めてカジュアルな料理雑誌を見たんですよね。そうしたら作り方も簡単だし、作ってみると面白いし、みんなが喜んでくれるのが嬉しくって。元々ものを作るのが好きと言うのは潜在意識としてあるんでしょうけど、卒業をする頃には、料理って面白いな、と思ってましたね。

 

坂本:でも、そのまま料理の道には進まなかったんですよね。

 

下条さん:せっかく両親に大学の学費を出してもらって4年間勉強をしたので、まずは建築業界で働こうと、都市計画系の会社に就職しました。でもやはり料理の方に惹かれて。とりあえず調理の基礎を学ぼうと、昼間は建築関係の仕事をしながら夜間の調理師学校に通い、1年半で卒業しました。

お店で調理を、というよりも、空間を演出しながら料理を提案するような仕事をしたいなと考えていたんですけど、当時はまだ料理研究家やフードコーディネーターの認知度は高くなく、調理師学校の卒業後の進路にもありませんでした。当時の調理師学校は職人を育てる色がとても強かったですから。

 

坂本:それ、すごくよくわかります。僕は完全にレストランの出身なので現場が一番強いから、当時は「なんだあいつら」みたいな(笑) そんなこと言っていた僕も今、こんな仕事をしてるんですけどね。

 

 

分量をきっちり計るか、計らず作るか

下条さん:そんな時に、大学時代の友人が「隣のクラスにいたケンタロウって覚えてる? 料理の仕事を始めるらしいよ?」って教えてくれて。私、小林カツ代さんのこともちろん存じ上げていましたが、彼のことは記憶になくて(笑) とりあえず居酒屋でケンタロウと面接したのですが、彼は途中ウトウト寝ちゃうし、「来週から来て」と言いながら、その後の連絡もなくって。結局私から電話をして、やっとアシスタントとして働くことになりました。

 

ーきっと、ケンタロウさんとは結構ウマがあったんですね。

 

下条さん:ケンタロウはとても直感的で瞬発力がある人でした。私はその彼の感覚を理解できるというか尊敬していたというか。料理もバーっと作っちゃう人だったので、それを横目で拾ってレシピにするのが私の仕事でしたね。「塩を入れたらメモしておいてくださいね」と言っても書いてないから、「今、塩入れましたよね」と私が後で測って数字をメモして(笑)

そういう役割だったので、自分で料理する時も、私は調味料を測って入れることが多いんですよ。レシピを全部数字にしちゃってる方が迷いがなくて楽なんです。

 

坂本:僕めっちゃケンタロウさんタイプ(笑)。(Mo:take MAGAZINEのスタッフに向かって)僕が計量してるところ、見たことないでしょ? パスタもタイマーかけないんですよ。麺を持ち上げた時のしなり具合とか、ツヤとかで判断しますね。

レストランの仕事をしていた時は、それこそ1回1回、測っている時間もなかったから、強引に体で覚えた感じですね。だから当時の僕のレシピには、数字がまったくないですもん。文章だけ(笑)

 

 

誰が作っても同じものが作れるレシピを書き起こす

坂本:下条さんにお聞きしたいんですけど、ケータリングの仕事、雑誌などでレシピを提案する仕事と、テレビ番組のタレントさんの補助などの仕事と幅広く活躍されていますが、それぞれで料理を出す時の考え方って違いますか?

 

下条さん:料理自体の考え方は基本的に一緒なのですが、その現場、仕事によって完結の方向性は違ってきます。例えばタレントさんの補助の仕事は、タレントさんの料理を文字、数字にして再現できるレシピを作ることなんですね。

彼らの料理を見ながらメモをとり、食べて、家で試作して、数字を入れたレシピにするのですが、その時は自分の感覚は入れずに、純粋にその味のレシピを作ることをゴールにしなくちゃいけない。自分がどの程度前に出た方がいいのか、引いた方がいいのか、タイミングも含めて何がベストなのかをそれぞれの現場で考えていますね。

 

坂本:確かに僕自身も、ケータリングの仕事や商品プロデュースの仕事では、それぞれで頭の使い方が違うなって思いますもんね。

レシピで言うと、僕が書いたレシピでスタッフが再現した時に同じものが完成物としてできた時には達成感がありますね。もちろん調理技術も関係して来るんでしょうけど、そういう人たちだけではなく、どんな人でも同じものを作れるレシピってすごいなって思いますよね。

 

下条さん:レシピは誰でも作れるものでなければいけないので、作り慣れてる人にとってはなくても大丈夫かなと思える説明も、具体的に何分炒めるとか、こういう状態になるまで混ぜましょうとか、わかりやすい一文を入れるようにしていますね。

 

坂本:言語化するのって、なかなか難しいんだなあと痛感してます。

 

次回は9/22(火)に公開予定です。新型コロナウイルスで大きく変わった社会の中で下条さんが考えたこと、そしてこれからの展望などについて、お二人にお聞きします。(つづく)

– Information –

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ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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