2023.09.26. | 

[Vol.3]ほんのわずかなちょい足しで、味も香りもガラリと変わった!|日本酒のプロたっちゃんと巡る、おいしいたのしいお酒の世界

突然ですが、日本酒は好きですか? 
「大好き!」「日本酒しか飲まない」という方から、「うんちく語るおじさんが面倒くさい」「お正月しか飲まない」「毛嫌いして飲んだことがない」という方までいるのではないでしょうか。

日本酒に対する印象や思いは人それぞれだと思いますが、これまで体験したことのない、新しい日本酒の世界をのぞいてみませんか? 

ナビゲーターは、日本酒のプロで、創作和食「地のものバル MUJO」の店長、たっちゃんこと小原辰生さん。自ら料理もする小原さんだからこそ、日本酒がもっと身近に、そして楽しくなるお酒の世界を案内してくれること間違いなし!です。

シリーズ3回目の今回は、いよいよ“ちょい足し”の実践編。薬味や調味料による、日本酒の味の変化を楽しんでいきます。

“どこかクラシカル”の日本酒が、
レモン2,3滴で“さわやか好青年”に早変わり!

小原さん:では早速、レモンからいきましょうか。レモンを合わせるといいのは甘み、コク、香りがあり、でも酸味がない日本酒です。

まずはレモンを入れずに日本酒をそのまま味わってみてください。

 

−−昔からあるような THE日本酒という感じの味わいですね。

小原さん:そこにレモンを垂らしてみてください。

 

ーーどれくらい入れればいいですか?

小原さん:2,3滴で十分ですよ。一回飲んでみて、もう少し入れたいなと思ったら後から足すこともできますから。

 

ーー(2,3滴レモンを入れてにおいをかいでみる)

 

小原さん:すでにレモンのいい香りがしませんか? 飲んでみてください。瞬間で日本酒の透明度が変わると思います。

 

ーー(一口飲んで)わっ!全然違う!

小原さん:すごいキュっとしてキレイになりますよね。

 

ーーそのまま飲んだ時は、“どこかクラシカル”というイメージだったのに、ものすごく飲みやすくなりました! スッキリしました!

小原さん:急に可愛らしくなるというか、さわやか好青年に近づいてくる感じがしますよね(笑)

 

大葉に青ネギ、ミョウガ
夏の薬味が日本酒を彩る

ーーこんなに変わるんですね。

小原さん:酸味だけが欠けている日本酒に、レモンによって酸味を埋め込むようにしてあげるんです。

 

ーー私は最初にそのまま飲んだ時に、この日本酒には酸味が欠けている、というのがわからなかったです(苦笑)

小原さん:酸味の強いやつを飲むと、酸味が欠けているのがわかると思いますよ。

例えばこちらの、リンゴ酸が強い日本酒を飲んでみてください。賀茂金秀という広島のお酒ですが、これだとレモンを入れなくてもキュッとした感じがありませんか?

 

ーー確かに!

小原さん:これだとレモンは必要はないんですよね。でも、これに少し香りをたしたいので、大葉をモグモグしながら飲んでみてください。

 

ーーこれは夏にいいですね。大葉の香りが抜けるというか。

小原さん:ネギもいいんですが、大葉の方がより香りの出方が強いです。

 

ーーいいですね、これ。大葉好きにはたまらない。

小原さん:薬味レベルだけでも十分日本酒が美味しくなるんです。お父さんのおつまみ作るのが面倒だったら、ネギだけ切ってはいって出せばOKです(笑)

ミョウガは、水に晒したり生姜に晒したりしたものの方が合わせやすくなりますね。薬味として使うミョウガだとミョウガが勝ちすぎて、全身ブランドものみたいになっちゃうので、たまに一点だけブランドものを合わせる、ぐらいの感覚で使うのがちょうどいいですね。

 

クセのあるお酒には、
あえてクセのある食材を合わせにいく

小原さん:左側の日本酒「玉川」はイギリス人が京都作っているお酒です。唯一の外国人杜氏さんなんですが、作っているお酒はすごくクラシカルなんです。

これを、酒盗と合わせてみましょう。

 

ーーそのまま飲むと、本当にTHE 日本酒ですね。結構強烈な感じがします。そして酒盗もまた、日本酒のおつまみの定番なイメージです。

 

小原さん:口の中で酒盗をモグモグしてから、お酒を飲んでみてください。クセの強いおじさんだったのが、ナイスミドルないい感じの男性になりません?

 

ーー変わった! この雰囲気の男性となら一緒に仕事してもいいかな、という感じになりました(笑) 

小原さん:日本酒らしいコクと、酒盗のコクがいい意味で相殺しあって、残りのいい部分が目立ったんです。クセのある食材はクセのある日本酒と合わせることですごく美味しくなる。酒盗の磯臭さみたいのが消えましたよね。

 

ーー確かに、酒盗の生臭さが薄れました。

小原さん:そうなんです。でも、酒盗をコクの強い日本酒ではなく、女性的な香りの華やかな日本酒と合わせると、女子高生が乗っている女性専用車両に夏の汗臭いおじさんが紛れ込でんきちゃったような違和感が生まれると思います(笑)

 

ーー秀逸な例えで、とてもわかりやすいです(笑)

 

バジルソースやピーナッツバターまで!?
ちょい足しに向いてる調味料

ーー他にも“ちょい足し”に向いた食材があったら教えてください。

小原さん:ホールのクミンは、口の中で日本酒を合わせる口内調味の“ちょい足し”としてよく使います。どんな日本酒を飲んでも、一度甘みがきてからクミンの香りが一瞬抜けて、そしてまた日本酒の方に戻ってくる。とても優秀です。

あとは五香粉(ウーシャンフェン)もいいですね。

 

ーーこれは1回買って使ったものの、その後使わないスパイスの代表の一つです(笑)

小原さん:一回使ったきりで余ってるスパイスや全ハーブ類は、意外と日本酒の味を引き立たせてくれたりすると思うんです。どれも、一度合わせてみていいと思いますよ。一口分だけ食べて、飲む、という。

この時に一番大事なのは、先ほどもいった口内調味です。必ず口の中で混ぜる。モグモグ、ゴクっと食材を飲み込んでから日本酒を飲むのではなく、必ずモグモグしながら一緒に飲むようにしてください。日本酒やワインの味を一番引き立たせてくれます。

近所のスーパーで売っているものでイイので、ぜひバジルソースも試してみてください。あとは、生胡椒。

 

ーーバジルソースと生胡椒を日本酒と。想像を超えてきますね!

小原さん:ピーナッツバターは、白和えを作る時に、味噌半分ピーナッツバター半分で作ると、時々ジャンキーな部分が香りになって日本酒と合わさり楽しいですよ。もし家にあれば、白和えに加えてみたりしてください。

 

恐る恐る飲んでみたら、意外にも美味しかった
みりんのソーダ割り!

小原さん:話が少し逸れますが、調味料と言えば、みりんって飲んだことありますか? べっこう飴みたいな味がするんですよ。飲んでみますか?

 

ーーえ、みりんを炭酸で割って飲むんですか?

 

ーーみりんを飲むのはもちろん初めてですし、なんだかとても不思議な感じがします(笑)しかも見た目は、スパークリングワイン! ちなみに、みりんはお酒ですか?

小原さん:このみりんは14度あります。酒類免許がないと売れないですね。一方で、みりん風調味料と呼ばれるもののアルコール度数は1%未満です。

 

ーーでは、ちょっと怖さもありますが、飲んでみます!

 

ーー飴の香りがして美味しいかも! 確かにこれは、べっこう飴です! シュワシュワしてていい感じ。

小原さん:トマトの酸味と合うので、トマト料理と一緒に味わうのがおすすめです。

 

ーーこれは、言われなければみりんを飲んでるとは思いませんね。

小原さん:そうですよね。料理は調味料一つで味が大きく変わりますから、調味料はいいものを使ってほしいですね。買う時には高く感じるかもしれませんが、少しずつしか使いませんから、一食あたりに換算すると5円、10円の世界ですよ。

お口直しがてら、ちょっとこちらをどうぞ。

 

ーーこれはなんですか? 美味しい!

小原さん:トウモロコシのペーストにお出汁が入ってます。合わせるお酒によってはトウモロコシの香りが消えて出汁が目立ったりして楽しいですよ。

 

次回は10/3(火)に公開予定です。
次回はいよいよ、“ちょい足し”の実践編。味の変化を楽しんでいきます。何をちょい足しするとどう変わるのか、お楽しみに。(つづく)

 

– Information –
地のものバル MUJO

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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