食とおもてなしの街・京都は「隠れ丼大国」
そもそも、京都は都として全国から多様な文化が入り込み、茶の湯や生け花などの生活文化が栄えたり、漆器や陶磁器等の生産が発達したことから、季節感やおもてなしの文化が生まれたり、長い歴史とともに受け継がれてきたさまざまな文化を持つ街です。
食についても同様に、三方を山に囲まれ、鴨川の水にも恵まれた京都は、米や酒、野菜や川魚などの食材にも恵まれただけでなく、瀬戸内のハモなど、各地から食材が運び込まれ、格式高く洗練された京料理、暮らしの知恵を生かしたおばんざいなど、豊かな食文化が育まれてきました。
そのため、京都のローカルフードといえば、湯豆腐や湯葉の懐石料理、鯖寿司などのメニューを思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、今回紹介するのは、ご当地「丼」です。京都で丼ものというイメージはあまりないと思いますが、それでもやっぱり京都らしい一杯があるとのこと。それでは、一緒に見ていきましょう!
名前の由来まで京都らしい「衣笠丼」
では、さっそくですが一品目は京都の定番丼として知られる「衣笠丼」です。京都の飲食店で広く食べられており、特にそば、うどん店や大衆食堂などで提供されています。その正体は、油揚げと九条ネギをダシで煮て、卵で閉じたもの。出汁を吸った油揚げは、京料理らしい上品でやさしい味わいが感じられる上に、満足度も高く、具材に肉や魚を一切入れていないにも関わらず、丼ものに期待するボリューム感も十分な一杯。
衣笠丼という名前の由来についても触れておきましょう。諸説ありますが、金閣寺のそばにそびえる衣笠山から取られたというものが有力です。そもそも、衣笠山は平安時代、宇多天皇が真夏だというのに「雪をかぶった山を見たい」と望んだため、白い絹を集めて山を覆い雪山に見立てたことからその名が付いたそう。油揚げとネギの上にふんわりと乗った卵が、絹をかけられた衣笠山に見えることから、衣笠丼と呼ばれるようになったとのこと。丼もののネーミングにも、京都人らしいこだわりを感じてしまいます(笑)。
関西中で親しまれる「木の葉丼」
さて、京都に行くならもう一品、どうしても食べておきたい丼ものがあります。それが「木の葉丼」です。こちらも、食堂の定番として割とどこでも食すことができます。細長く切ったカマボコに、青ネギと甘みを利かせた椎茸を卵とダシで閉じたこのメニューは、京都だけでなく、関西で親しまれている丼ものです。椎茸から出るうまみと香りが具材にしっかりとしみて、これまた実に品のある味わいです。
こちらも、その名の由来は雅やか。いろどり鮮やかな具材が、風で舞い散る木の葉に見えたというのだから、歌枕の地がいくつも存在する京都人のDNAは恐ろしいとしか言いようがありません……。
いずれも庶民的な食材を使いながら腹持ちがよく、いわゆる丼料理の必要条件を十分に満たしたものでありながら、京都という地域独特の「粋」や「雅」をも感じさせる衣笠丼と木の葉丼。
これから京都に行くなら、敷居の高い京懐石でピリッとした雰囲気を味わいながら食事をするのもいいですが、ゲーム感覚で気軽に食べ比べできるこれらの丼ものを選んでみるのも、いいかもしれません。