SERIES
コーヒースタンドを起点とした場づくりの舞台裏

ランナーの日常を育む、リアルな“場”ーRuntrip BASE YOYOGI PARK

2025年6月にオープンした「Runtrip BASE YOYOGI PARK」。

朝、仕事前にひとっ走りしてコーヒーを飲み、そのまま仕事へ向かう人。仕事終わりの夜に走り、そのままここでビールを飲む人。仲間と走った後に、カジュアルに食事やドリンクを楽しみながら過ごしていく人たち。

この場所には、走ることをキッカケに、人ぞれぞれの過ごし方があります。ラントリップは、ランニングを起点に人と人をつなぎ、日常の中に新しい体験を生み出してきたサービスです。

Mo:take MAGAZINEではこれまで、ラントリップ代表・大森英一郎さんに、ランニングをめぐるコミュニティのあり方や価値観などについてお話を伺いました。

振り返ってみると2018年2022年、そして今回の2026年。なんと4年に一度のペースで取材をさせていただいています。今回は、これまでの流れを踏まえながら、代々木公園のそばにある「Runtrip BASE YOYOGI PARK」を舞台に、前回の取材から今に至るまで、そしてこれからのラントリップについてお話を伺いました。

バラバラだった体験が、ひとつになっていく

−−本日はよろしくお願いします!気づけば大森さんには、4年に一度のペースでお話を伺っていますね。前回が2022年だったので、今日はそこからの4年間について、ラントリップとしてはどんな時間だったのか、その辺りをお伺いできればと思います!

大森さん:4年に一度…オリンピックみたいですね(笑)。この4年間は、本当にいろんな動きがありましたね。そして自分たちがやりたいことや、想い描いていたものに対して、必要なピースがやっと揃ってきたという感覚がある4年間でした。

もともとうちは、ランナーの皆さんが走ることを楽しむためのツールとして、“オンライン”でいろんな形の場をつくってきました。アプリ、メディア、ECもあって、リアルなイベントもやっていて…色んなサービスを作ってきたんです。

でも、ユーザーさんはメディアを見る人、ランニングの計測にアプリを使う人、ECを利用する人とそれぞれ異なる人たちだったりして、それぞれの体験が独立しているような感じだったんです。なので、それぞれのサービスを独立させるんじゃなくて、サービス全体をひとつの体験としてつなげたいという想いがずっとありました。

 

−−なるほど!サービスとしていろんな機能がある中で、それぞれが分かれて存在していたものを、ひとつの体験としてつなげることでコミュニケーションのキッカケが生まれたり、幅もひろがりそうですよね!

 

大森さん:そうですね。実際に2023年から、「アプリ」をプラットフォームに情報をインプットしたり、交流したり、ショッピングもできるようになって、2024年にポイントプログラムも始まったことで、ようやく全部が横断してつながっていきました。

たとえば、走ってポイントがたまって、そのポイントでECの商品を買えたり、メディアで見たアイテムをイベントで試せたり、そういう体験が、少しずつつながってきたんです。

今ではユーザーさんも、アプリでメディアも見ていて、ポイントもためていて、ECでも買っている、みたいな状態になってきているので、バラバラだったものが、ちゃんとひとつになってきた感覚があります。

 

−−そうなんですね!体験として全部がつながってきたというのはすごく大きな変化ですよね。でもこれって、最初からこういう使われ方を想定していたというよりは、結果的にそうなってきた、そんな感覚にも近いんでしょうか?

大森さん:そうなんですよ、最初からこういう使われ方を細かく設計していたというよりは、自分たちがこういう体験をつくりたい、というところからスタートしていました。それを実現するために必要な機能をつくっていったら、結果的に今のような形になってきたという感覚が近いかもしれないですね。

もちろん、行き当たりばったりではなくて、“こういう風に使ってほしい”というイメージはあったんですけど、ユーザーさんの使い方はそれを少しずつ超えてくるんですよ。

気づいたら、僕たちが思っていた以上に自然に色々な機能を横断して使っていただいていました。

 

−−なるほど!そう考えると、ユーザーさんの行動の変化と一緒にサービスも育ってきた、という見方もできそうですね!

 

5年前に思い描いていた“最後のピース”

−−ここまでお話を伺っていると、この場所(Runtrip BASE YOYOGI PARK)が2025年に生まれたというのも、すごく自然な流れだったのかなと感じました。改めて、この場所について教えていただけますか?

大森さん:そうですね、ここが誕生するのは必然だったと思います。23年から24年にかけてオンライン上の機能はまとまってきたんですけど、ただひとつだけ足りなかったのが、“リアルな場”でした。

僕の中では、ラントリップのユーザーが実際に集まれる場所があって、そこにコーヒーやビールがあって、走ったあとに人が自然と集まる、そんなカジュアルな場をつくりたい、という構想があったんですよね。

 

−−そうだったんですね!ちなみに、これまでもラントリップとして「ユーザーさんにこういう体験をしてもらいたい」という視点で機能を整えてこられていたと思うんですが、その延長線上に“リアルな場”もあったと…。

大森さん:ありましたね!しかも、ちょっとしたエピソードがあるんです。

実は、2019年頃にホテルにこもって、「5年後のラントリップを見てきた」というレポートを書いたことがあるんです。そのレポートは、“5年後のラントリップを実際に体験したつもり”で書いたレポートなんですけど、書いた後は特に振り返ることもなくて、そのレポートの存在すら忘れていたくらいだったんです。

ただ、この場所ができてから、そのレポートが出てきて、何気なく見返したら…..驚いたことに、そこから25年までに僕たちがやってきたことが、そこに書かれていたんですよ!

なので、2025年にここが誕生して「必要なピースが揃った!ようやく形になったぞ!」っていう実感がすごくあるんですよね!

 

−−書き出した想いが現実になっていたんですね!なんか未来を予見していたような!(笑)でも、それまでのオンラインでの体験もちゃんとつながって、この場ができるというのはやっぱり必然ですね!これまでのユーザーさんの体験も変わってきたのでは?という印象はありますか?

大森さん:そうですね。ユーザーさん同士の関わり方が変わってきたという感覚はあります。ただ使うだけじゃなくて、「ここに行こう」とか「誰かと一緒に走ろう」とか、自然とそうしたコミュニケーションが生まれていますね。

それと、ユーザーさんに限ったことではなくて、自分たちの(社内の)チームとしても、「ここで会おう」「一緒に走ろう」という機会が増えて、場所があることによって社内のコミュニケーションの取り方も変わってきたんですよ。

 

−−そうなんですね!ユーザーさんだけでなく、社内のコミュニケーションにも変化があるというのも「リアルな場」の良さや、必要性を実感できるポイントかもしれませんね。やっぱり“場があること”によって、人の動きや関わり方そのものが変わってきている感じがあるんだなぁと改めて思います。

 

リワード+コミュニティで健康をサポート

−−実際にこの場所に来てみると、カフェとしても過ごせるというか、すごく居心地がいいです…つい長くいたくなるような空気がありますね。

大森さん:ありがとうございます。ランニングステーションって、一般的にカフェのような機能まで併設するケースはあまり多くないと思うんですよ。シャワーやロッカーなどの機能を優先した方がユーザーさんにとっても、“運営”という立場としても、その方が合理的ではあるんです。

でも僕たちは、成果に対して与えられる特典である“リワード”と“コミュニティ”を一緒に成立させることを前提とした場づくりを考えていたんです。そのためには、カフェのように誰もが過ごしやすくて、コミュニケーションのキッカケになる機能は必要だと思って、あえてコーヒースタンドを併設しました。

 

−−リワードとコミュニティ…つまり、走ったり、ここに来るキッカケになる“ご褒美”と、続ける理由になる“人とのつながり”ということですか?

大森さん:そうですね!ラントリップでは、ユーザーさんが各サービスをどのように利用しているかを分析していく中で、走り始めるキッカケになるのが“リワード”、続ける理由になるのが“コミュニティ”だということが分かってきました。

たとえば、自分の行動パターンを振り返った時に、ポイントがたまったり、何かちょっとしたご褒美があることで、最初の一歩が踏み出しやすくなることはありませんか?

 

−−大いにありますね!(笑)でも、それだけだと続かないっていうのは正直あります。つまり、そこでコミュニティが継続の鍵になると!

大森さん:そうです!そのリワードと同時に、誰かとつながっていたり、関係性があることで、初めて習慣として続いていくんじゃないかと思うんです。

なので、この場所もどちらか一方ではなくて、その両方をちゃんと体験できるように設計しています。たとえば、来店やランニングでポイントがたまって、そのポイントでビールを一杯飲めたり、商品と交換できたりといった形で、“ご褒美”がちゃんと体験として返ってくる仕組みになっています。

 

−−なるほど!“始める理由と続ける理由が違う”というのはすごく納得感があります。それに、ランステーションではあまり一般的ではないカフェ的な機能が「Runtrip BASE YOYOGI PARK」にある理由もよくわかります!

 

自分を賞賛する時間、コーヒースタンドの役割

−−もう一つお聞きしたいのは、ここのメニューは割と一般的に馴染みのある軽食やコーヒー、ビールなどですよね。私の勝手なイメージですが、こういった場で提供されるメニューは、高タンパク、低糖質、美容と健康に良いメニューというラインナップになるのかなと思ったのですが…。

大森さん:そこはすごく重要なポイントなんですよね。僕自身やっぱり、走ったあとには“ご褒美”が必要だと思っているんですが、パフォーマンスを上げるためだけじゃなくて、走ったことに対する“賞賛”として、ビールも飲みたいし、ラーメンも食べたいし、みたいな感覚があるんです!(笑)

だから、メニューもプロテインやスムージーを中心にするというよりは、誰でも親しみやすいものをあえて用意しています。あとはその方が、ユーザーさんも日常に馴染んで過ごしやすいかなと思うんです。

もちろん健康でいたい気持ちもあるんですけど、その間で揺れ動く感じが人間らしさだと思っているので、ここではそういう“あいだ”を行き来できるようなラインナップにしていますね。

 

−−なるほど!さっきの“リワードとコミュニティ”の話ともつながってきますね。単に栄養補給をする場所というよりも、“ご褒美”としての時間があることで人が残って、そこからコミュニケーションが生まれていくようなイメージですね!だからこそ、このカフェの機能が重要になってくるんですね。

 

大森さん:そうですね。コーヒーもそうですし、ビールもそうですが、ただ飲むものというよりも、人と人がつながるキッカケになるものだと思っているので、ここでちょっと一杯飲んで、そこから会話が生まれたり、「じゃあもう少し話そうか」となるような時間が自然と生まれていったらと思っています。

 

−−いいですね!実際に今日も、パソコンを開いて作業している方や、仲間と普通にコーヒーをのんでリラックスしている方もいますね!やはり走ることだけじゃなくて、その前後の時間も含めて過ごせる場になっている感じがします。

大森さん:そうですね。この場所があることで、走ることが少しだけ特別になるというか、
日常の中にちょっとした楽しみが増えるような感覚になればいいなと思っています。

 

−−たしかに、走ること自体は一人でも完結するものですけど、こういう場所があることで、そのあとに誰かと話したり、少しゆっくりしたり、過ごし方の選択肢が増えていきそうですよね。

大森さん:そうなんですよね。走ることってすごくシンプルな行為なんですけど、そのあとにどんな時間を過ごすかで、体験の質は変わるものだと思うんです。ここは、その“余白”みたいなものをつくれる場所にしていきたいですね。

 

場が生む、小さな変化の積み重なり

大森さん:実際に走ったあとに少しここで過ごして、コーヒーを飲んだり、ビールを飲んだりして、会話が生まれるっていう光景を良く目にするんですよ。だから、サービスとの関わり方というか、距離感は確実に変わってきている感覚があります。

また、2025年のオープンから半年で、利用者の累計走行距離が約43,000キロになっていて、その一部は、走行距離に応じて公園の保全活動やスポーツ振興に還元される仕組みになっているんです。走るという日々の行動が、そのまま街や社会にもつながっていくんですよ。

 

−−その仕組み、すごく素敵ですね!個人の体験だけじゃなくて、街や社会にもつながっていくというのがすごく面白いです!この場所から、色々なキッカケがうまれそうですね!

大森さん:そうですね!この場所があることで、周辺で働いている人や住んでいる人の行動が少し変わっていって、結果的にその人の日常や健康につながっていくような場所になったらいいなぁと思っています。

あとは、そういった変化をちゃんと見ていくことも大事だと思っていて、この場所があることでどんな影響が生まれているのか、そこも含めて捉えていきたいですね。

 

−−オンライン、オフラインでのリアルな場、それぞれの場がひとつの場所として生まれたことで、この街の人の過ごし方や、習慣が少しずつ変わって、それが街やコミュニティにも広がっていく可能性があるんですね。今日のお話を聞いて、これからこの場所と街がどんな風に育まれていくのか、すごく楽しみです!本日はありがとうございました!

 

ランニングステーションとしての機能を持ちながら、
コーヒーを飲んだり、ビールを飲んだり、軽く食事をしてみたり。

一人で過ごすことも、誰かと会話を交わすこともできる場所。

そんな何気ない人の過ごし方や関わり方は、
“個”の中にとどまらず、やがて街やコミュニティにも広がっていくのかもしれません。

走ることをキッカケに生まれる、小さな余白。
そして、その余白にそっと寄り添う“食”の存在。

この場所は、そんな時間の中で、ランナーと街の新しい日常を静かに育てているように感じました。

 

– Information –
ラントリップ(WEB / FB / Youtube
Runtrip BASE YOYOGI PARK

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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