宝箱のようなお弁当に詰まった
“ほんのちょっと”想像を越えた味
曲げわっぱの中にたくさんのおかずがギュギュっと詰まったお弁当は、彩り豊かでとても華やか。ひと口ごとに異なるおいしさが口いっぱいに広がり、顔が自然とほころんできます。
そのおいしさは、一人で食べていても思わず「わあ!おいしい!」と、口をついて出てしまうほど。次はどんな味かな? とワクワクしながら箸でおかずをつまみ上げる瞬間は、まるで宝箱から一つ一つ宝物を取り出しているような気分です。
ドムさん:毎日日替わりのお弁当では「こんなお弁当があったら楽しいな」を表現しています。
目指しているのは、料理人としてのこだわりを押しつけすぎず、“ほんのちょっと”想像を超えた味です。馴染みがあるおかずなんだけど味付けが少し変わっていたり、和風のおかずを洋風にアレンジしていたり。
仕切りがないので、隣のおかずと味が組み合わさっても邪魔にならないように詰めています。また、カレーの付け合わせの「アチャール」という漬物をイメージした「人参のラペ」を毎回入れていて、おかずを混ぜて食べてもトータルで食べておいしくなるように仕上げています。
メインの他にも、卵焼きや揚げ物など7、8種類のおかずが入った日替わりのお弁当。これで750円(税抜)では申し訳ないと思えるほど手間暇かかり、愛情が込められたお弁当です。
1年前、たった1通のメールで
一瞬にして仕事がなくなった
秘密厨房は、東急目黒線の武蔵小山駅から、昔ながらの街並みが残る平和通り商店街を抜け、住宅街を少し歩いた先にあります。なんでこんなところに? と思うような場所ですが、それには理由がありました。
ドムさん:2019年の末にこの場所を借りた時は、ここをセントラルキッチンにして、ケータリングをやっていこうと思っていたんです。ある会社の専属のケータリングとして走り出すことも決まっていたので、その他の仕事は整理して、準備を進めていました。
ところがコロナ禍で状況が一変。たった一通のメールで、その仕事がなくなってしまったといいます。
ドムさん:すでに他の仕事は整理してしまっていましたし、一瞬にして、誰からも仕事を求められない状況になってしまったんです。誰も僕になんか仕事を求めている人はいないんだ、と思うと相当落ち込みました。
でも、この場所は残っている。絶望的な状況の中で、とにかく人のためになることをやろう、と思ったんです。緊急事態宣言が出て近所の人たちも家で仕事をするようになっていたので、お昼ご飯を買えるお弁当屋さんとして始めることにしました。
仕事がストップしたのが3月。そこからDIYで内装工事に取り掛かり、1ヶ月後の4月末に、秘密厨房がオープンしました。
“秘密の実験場”でつくっているから、
メニューも直前まで秘密!
さて、気になるのは秘密厨房というお店の名前。なぜ、この名前にしたのでしょうか。
ドムさん:ここって厨房がお店の奥に隠れているんです。秘密基地のような秘密のキッチンで、試行錯誤しながら作ったものをお披露目する場所、というのが一つです。
もう一つは、食を楽しむという点でエンターテイメントの要素も大事にしているので、肩肘貼らずに楽しんでもらえる場所にしたい、という遊び心も込めました。
お客様からも名前について聞かれますが、その度に『秘密基地で作ってます』と言ってます(笑)。 お店の名前が会話のきっかけにもなりますし、覚えてもらえるので良かったなと思っています。
長いコック帽をかぶったシェフが人差し指を口に当てているシルエットも印象的です。
ドムさん:実験場のような場所で、こっそり、ひっそりやっていますよ、だから内緒ですよ、というイメージです。
ちなみに、お弁当のメニューも直前まで伝えず秘密にしています。メインだけは前日に伝えたりもするんですけど、基本はインスタグラムのストーリーズに載せるまではメニューがわからないようになっています。
遊び心と確かな美味しさで、ジワジワと近所の人の心と胃袋をつかんでいった秘密厨房は、オープンから1年が経ち、すっかりと地元の人たちの間に定着しました。限定の50食が早々と売り切れてしまうことも多いそうです。
4/27(火)に公開予定の次回は、秘密厨房からちょっと離れ、ドムさんという人物の秘密について迫ります。料理人としての原点から、歩んできた道のりまで明かして頂きましたので、どうぞお楽しみに!(つづく)
– Information –
秘密厨房
東京都目黒区目黒本町4-16-7 1F
03-4361-4385
11:30〜16:30(なくなり次第終了)
年中無休
https://himitsu.kitchen
https://www.instagram.com/himitsukitchen_food/