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抽出家、藤岡響さんに聞いてみた
2023.05.23. | 

[Vol.5]家でもできる、おすすめの抽出フードやドリンクは?:抽出のプロ、藤岡響さんに聞いてみた

ドリンクやフードの世界で、近ごろ「抽出」が注目されていることをご存知ですか?美味しさや成分をさまざまな方法でひきだす「抽出」。その奥深さに魅せられ、抽出を探求し、広めているのが、抽出家の藤岡響さんです。Mo:takeサポートクリエイターでもある藤岡さんに、編集部メンバーが「抽出」のことを教わります。皆さんも、藤岡さんと一緒に抽出の世界をのぞいてみませんか?

「手間をかけても抽出したほうが絶対おいしい」。抽出のプロのおすすめは?

抽出家の響さん、こんにちは。
前回のコーヒー抽出の回を読み、家で日夜コーヒーを抽出してみています。ちょっとした条件の違いで味が大きく違うのって、本当に面白いですね!

インスタントコーヒーもそれはそれで美味しいのですが、やっぱり自分の手で淹れてみるとより美味しいし、楽しさを感じます。コーヒー以外にも、家でできるおすすめの抽出フードや抽出ドリンクがあれば、ぜひ教えてください。

(編集部/T)

 

家庭でも簡単に試せる抽出となると水出しが思いつきますね。

珈琲やお茶、出汁など用途は様々ですが、水を入れるポットやタッパーに浸しておくだけなので簡単に作ることができます。

その中でも特にこれからの時期におすすめしたいのが水出しの煎茶です。
ペットボトルを買うよりも美味しく、自分好みのお茶を作ることができますし、価格も茶葉によりますが安価で作れます。

作り方は非常に簡単です。

・水1Lに対して15-20gの茶葉を用意して浸すだけ。

茶葉はポットに直接入れるよりも、麦茶用や出汁用の不織布のパックに入れると後処理も簡単で衛生的です。浸したら6〜10時間ぐらいで茶葉を引き上げます。寝る前に作って冷蔵庫に入れれば、翌朝にはできていますのでとても簡単です。

茶葉は浸しっぱなしにせず、必ず引き上げるようにしてください。

なぜなら、水にひたして抽出する浸漬法の場合、抽出が進むと成分が溶け出しにくい状態になり、水が成分を取り込めなくなります。我々も、空腹時にはご飯をたくさん食べられますが、お腹いっぱいになると食べれなくなりますよね?それと同じで、水の中に成分が溶け出していくと水の抽出力が下がっていきます。たとえば珈琲の水出しの場合は、ある程度長い時間浸した場合、後半は抽出される成分は落ち着いていきます。珈琲はメインディッシュまでが早くてすぐお腹いっぱいになる。そんなイメージです。

一方、煎茶の場合は、抽出される成分の全体量が多いので、漬け込み過ぎると渋みや収斂味(しゅうれんみ/口中が締め付けられるような感覚になる味のこと。)などの味わいが強くなる可能性があります。例えるなら、バイキング。食べ放題だからとあれこれ余計な食べ物を取ってしまってバランスが崩れてしまったり、取り過ぎて最後食べ切れなくなってしまったり(笑)、みたいなイメージです。そうならないよう、美味しいものだけを選別して食べたいですよね。それと同じで、うま味や甘みをバランス良く感じる水出しを作りたいなら早めの引き上げ、渋みしっかりが好みなら長めに浸すのがおすすめです。

作ったら味をみて、次に作るときに茶葉の量や抽出時間を調整すれば、だんだん自分好みの冷茶が完成していきます。

オフィスでお弁当を食べる時にマイボトルに入れたこだわりの自分用冷茶があると、いつもの昼食のレベルがぐっと上がります。

冷茶作りに慣れてきたら、さらに好みのハーブやスパイス、スライスしたフルーツ等を加えてみてください。オリジナルのブレンド冷茶の完成です。これも、分量は様子を見ながら。ベースの煎茶との相性やバランスを考えて少量ずつ加えて一緒に浸してみましょう。夏はミントやレモングラス等のハーブやレモンなどの柑橘がすっきりしておすすめです。

作り方はとても簡単ですが、茶葉、浸す時間、水の質など奥深い水出し冷茶。これから暑くなり、冷茶が美味しい季節になります。是非お好みのレシピを探ってみてください。

ライター / 藤岡 響

2005年よりバリスタの道を志す。cafékitsune 等、多くのカフェ、コーヒーショップの立ち上げに携わり、2015年ブルーボトルコーヒー清澄白河の立ち上げに参画。トレーナーとして多くのバリスタの育成に携わる。日本の日常に寄り添う独自のカフェスタイルの構築を目指し、2018年西荻窪に「Satén japanesetea」をオープン。2020年より独立、珈琲に限らず、水を介して抽出する抽出物全般を扱うバリスタとしてコーヒー、日本茶等の商品開発、店舗監修、専門学校講師等を行なっている。ユニット香飲家としても活動し、著書に「飲食店の為のドリンクの教科書」がある。

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