SERIES
食とカルチャーの交差点
2026.10.07. | 

薪焼きレストラン「Dominic」店主・ドム|食とカルチャーの交差点

映画や音楽など、好きなカルチャーの向こう側には、その人の価値観や生き方が映し出されています。そんな視点からお話を伺う、連載『食とカルチャーの交差点』。

今回登場いただくのは、松陰神社前で薪焼きレストラン「Dominic」を営む、ドムさんこと近藤大介さんです。

以前、Mo:take MAGAZINEでは、料理人として歩んできた道のりや、薪火を選んだ理由、お店づくりに込めた想いを伺いました。今回は少し視点を変えて、そんなドムさんの価値観を育ててきた音楽や映画について、お話を伺います。

以前の取材を通して見えてきたのは、自分が納得できる料理を、自分の責任で届けること。そして、こだわりを一方的に押しつけるのではなく、まずは目の前のお客さんに「美味しい」「楽しい」と感じてもらうことを何より大切にしている姿でした。

そんな想いは、料理だけではなく、音楽や空間づくりにも自然と表れています。

今回は、店の一日の終わりに流す音楽と、記憶に残り続ける映画の食のシーンを通して、ドムさんの”今”に触れていきます。

日常の延長線上にある、少し特別な時間

編集部: Dominicもオープンしてしばらく経ちましたが、今、一番ワクワクしていることを教えてください。

 

ドムさん: Dominicは住宅街にあるお店だからこそ、日常の延長線上で少し特別な時間を過ごせる場所にしたいと思っています。料理だけでなく、音楽や空間も含めて、心地よい時間をつくることを大切にしています。その時間をお客さまに楽しんでいただけたと実感できる瞬間が、一番ワクワクしますね。

 

編集部: 以前のお話でも、薪料理のコンセプトを前面に押し出すより、まずは「美味しい」「楽しい」と感じてもらいたいとおっしゃっていましたよね。

 

ドムさん: そうですね。自分なりの考えやこだわりはもちろんありますが、最初から「こういう店です」「こう楽しんでください」と決めすぎたくないんです。

何も知らずに来て、料理やその場の時間を自然に楽しんでもらえたら、それでいいと思っています。

 

編集部: お店では「心地よい時間」を大切にされているんですね。では逆に、ドムさんご自身は、どんな時間を過ごすと気持ちが整うんでしょうか?

 

ドムさん: 休日はピストバイクに乗って、気分転換をしています。

ピストバイクは固定ギアなので、便利な自転車ではないんです。でも、不便だからこそ、自分で考えたり、身体を使って調整したりする面白さがあるんですよね。

 

編集部: 以前のお話でも、薪火はその日の湿度や薪の状態に合わせて、自分の感覚で火を調整していく面白さがあると話されていましたよね。

 

ドムさん: そうなんです。環境に合わせて、自分の感覚で少しずつ調整していくところは、薪火とピストバイクは似ていると思います。思いどおりにならないことも含めて、その過程を楽しんでいるのかもしれませんね。

薪火にもピストバイクにも共通していたのは、自分の感覚で少しずつ向き合い、調整していく面白さでした。

そんな感覚が、ドムさんらしいお店づくりにも自然とつながっているように感じました。

 

一日の終わりに流れる、静かで壮大な音楽

編集部: ここからは、ドムさんの好きなカルチャーについて伺います。お客さんにゆっくり食事を楽しんでもらうために、店内で流したい音楽を教えてください。

 

ドムさん: Sigur Rósの『Svefn-g-englar』です。

 

編集部: この曲とは、どんなキッカケで出会ったんですか?

 

ドムさん: 数年前に、友人から「これ好きそう」と教えてもらったのがキッカケです。初めて聴いた時に、静かだけれど、その奥に力強さや壮大さがある空気感に惹かれました。

 

編集部: Dominicでは、どんな時間に流しているんですか?

 

ドムさん: 一日の終わりの店の雰囲気に合うように、閉店間際にこの曲が流れるよう、プレイリストを組んでいます。

 

編集部: 閉店前の時間に、この曲がしっくりくるのはどうしてなんでしょうか?

 

ドムさん: 静かで穏やかな曲なんですが、ただ静かなだけではなく、その奥に大きく広がっていく感じがあるんです。でも、音楽が前に出すぎることはなくて、自然とお店の空気に溶け込んでくれる。食事や会話の余韻も邪魔しないんですよね。一日の終わりに、気持ちが少しずつほどけていくような感覚があって、閉店前の時間に合うと思っています。

 

編集部: ドムさんにとっては、料理を食べる時間だけでなく、その前後も含めて大切にされているんですね。

 

ドムさん: そうですね。料理を食べ終わったら、その時間が終わりということではないと思うんです。最後の会話や、余韻を楽しむ時間まで含めて、その日の食事として味わってもらえたら嬉しいですね。

Dominicでは、薪火で料理が仕上がるまでの時間も、火を眺めながらゆっくり過ごせるような空間がつくられています。一日の終わりには、Sigur Rósの音楽が静かに流れ、その時間をやさしく包み込んでいます。
Dominicで流れる時間そのものも、このお店ならではの料理のひとつなのかもしれません。

 

一皿は記憶になる

編集部: ここからは、ドムさんの好きな映画について伺います。印象に残っている食のシーンを教えてください。

 

ドムさん: 『最初の晩餐』に登場する、カリカリチーズの目玉焼きのシーンです。

 

編集部: この映画とは、どんなキッカケで出会ったんですか?

 

ドムさん: 長野県松本市へ旅行した時に、立ち寄った食堂でおすすめしてもらったのがキッカケなんです。映画の舞台も松本だと聞いて、その土地の空気を感じながら観ました。そのこともあって、より深く心に残る作品になったのだと思います。

 

編集部: 松本という場所で出会ったからこそ、より印象に残った作品だったんですね。その中でも、そのシーンが心に残ったのはどうしてなんでしょうか?

 

ドムさん: このシーンを通して、料理の本質について改めて考えさせられました。人の記憶に残る料理は、必ずしも豪華だったり、特別に美味しかったりするものだけではないと思うんです。その時の空気や、誰と食べたのか、どんな想いが込められていたのか。そうしたものも含めて、一皿は記憶になるのだと思います。料理人として、とても大切なことを思い出させてくれる作品です。

 

編集部: お話を伺ってきて、改めてドムさんが料理だけでなく、その時間そのものを大切にされている理由が、少し見えてきた気がしました。

 

ドムさん: そうですね。自分がお客さんに食べてほしいと思った状態で料理を提供することは、昔からずっと大切にしています。でも、その料理をどんな場所で、どんな気持ちで、誰と食べるのかによって、受け取り方は変わると思うんです。

だからこそ、料理だけではなく、空間や音楽も含めて、心地よく過ごせる時間をつくりたいと思っています。

 

編集部: 今日のお話を伺って、一皿の料理だけでなく、その時間ごと記憶に残る体験をつくられているのだと感じました。本日はありがとうございました!

 

――――――

「一皿は記憶になる」

ドムさんのその言葉が、とても印象に残りました。

以前お話を伺った時にも、自分が納得できる料理を、自分の責任で届けたいという想いを語ってくれたドムさん。今回のお話を通して、料理だけでなく、その料理を味わう時間まで大切にされていることが、改めて見えてきました。

料理を待つ時間。薪火を眺める時間。食後の会話や、一日の終わりに静かに流れるSigur Rósの音楽。そうした時間の積み重ねが、一皿を「記憶」に変えていくのでしょう。

ドムさんがDominicでつくっているのは、薪火で仕上げる料理だけではありません。
日常の延長線上にありながら、ふとした時に思い出したくなる、少し特別な時間。
その時間が、この街で、これからどんな記憶になっていくのか。楽しみに見守りたいと思います。

 

—– インタビューに登場した食とカルチャー —–

・music:『Svefn-g-englar』/Sigur Rós
・movie:『最初の晩餐』/常盤司郎監督

 

近藤大介 profile

長崎県佐世保市の洋食屋に生まれ、幼少期から料理人を志す。管理栄養士の学部を卒業後、レストラン勤務やフードスタイリング、撮影用料理の制作、ケータリングなど、さまざまな形で料理に携わる。2025年9月、世田谷区・松陰神社前に薪焼きレストラン「Dominic」をオープン。薪火によるシンプルな美味しさと、日常の延長線上にある少し特別な時間を届けている。

 

– Information –

Dominic(ドミニク)
東京都世田谷区若林4-26-8
営業時間:17:00〜24:00(L.O.23:00)
※不定休
※テイクアウトランチあり(不定期)

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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