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編集長が〝今〟届けたいニュース
2026.10.15. | 

「これ、本当にコーヒー?」。雲南で10年向き合って生まれた“醸造珈琲”という新しい一杯

「編集長が〝今〟届けたいニュース」は、Mo:take MAGAZINEが“今、この人や取り組みを届けたい”と感じた食にまつわるヒト・コト・モノを紹介するシリーズです。最新の話題に限らず、私たちが出会い、心を動かされた取り組みを通して、新たな発見や再発見のキッカケをお届けします。

「これ、本当にコーヒーですか?」

グラスに注がれた一杯を飲んだ人から、そんな言葉がこぼれるコーヒーがあります。

ワインを思わせるような香り。ハイカカオのチョコレートのようなほろ苦さに、果実のようなやわらかな甘み。

でも、砂糖や香料は使っていません。もちろん、アルコールも0%です。

宏納株式会社が手がける「醸造珈琲」。

その名前の通り、特徴はコーヒーチェリーを“醸す”ことにあります。

ただ、今回Mo:take MAGAZINEが気になったのは、「発酵させた珍しいコーヒーだから」ではなく、なぜ、コーヒーを醸そうと思ったのか。

その背景を辿ってみると、中国・雲南省の農園で10年にわたってコーヒーと向き合ってきた人たちの姿がありました。

コーヒーを「醸す」

「醸造珈琲」の大きな特徴は、コーヒーチェリーの状態で発酵させながら、香りや味わいをつくっていくことです。

完熟したコーヒーチェリーを一つひとつ手摘みで収穫し、密閉容器へ。

そこで天然の酵母や乳酸菌の力を借りながら、温度や時間、発酵の進み具合を細かく見ていきます。

発酵条件が変われば、当然、出来上がる味も変わる。

今回の「醸造珈琲 春醸濃」では、カカオや黒糖を思わせる甘い香りと心地よい余韻を目指し、約30℃の環境でおよそ2週間発酵させています。

「発酵させたコーヒー」と聞くと、それだけでかなり新しいものに感じます。

でも、その背景にあるのは、奇をてらった発想ではありませんでした。

 

雲南で10年、コーヒーと向き合う

醸造珈琲の出発点となったのは、中国・雲南省にある自社農園「軍馬渓谷農園」。

2016年から、この土地でコーヒーの栽培と加工を続けています。

自然の中で育つコーヒーは、毎年同じ状態になるわけではありません。

気候が変われば、果実も変わる。

だから、決められた方法をただ繰り返すのではなく、その年の状態を見ながら、収穫や発酵、乾燥の方法を少しずつ変えていくのだといいます。

そんな農園で、農園主のリーさんがよく口にする言葉があります。

「We just focus on making the coffee.」(ただ、コーヒーをつくることに集中する。)

10年間、何か特別なことをしようとしてきたのではなく、目の前にあるコーヒーと向き合い続けてきた。

「醸造珈琲」も、その積み重ねの先に生まれた一杯なのかもしれません。

そして、雲南で育てたコーヒーを、その意図や背景ごと届ける場所として、大阪・東三国には焙煎所カフェ「KOUNOU-COFFEE」があります。

農園から、一杯のグラスまで。

つくる人と届ける人がつながっているからこそ、その味が生まれた理由まで伝えることができます。

 

日本と雲南をつなぐ、「醸す」という文化

「醸造」という言葉も、このコーヒーを知るうえで面白いところです。

日本には、味噌や醤油、日本酒など、発酵によって時間をかけて味を育ててきた文化があります。一方、コーヒーを育てる雲南にも、プーアル茶をはじめ、発酵を取り入れた食文化が暮らしの中に息づいています。

遠く離れた日本と雲南。

でも、微生物や自然の力を借りながら、時間をかけて味をつくっていく。

そんな感覚には、どこか重なるものがあります。

醸造珈琲を飲んだときに感じるという、

「初めてなのに、どこか懐かしい」

という感覚。

それはもしかすると、私たちが昔から親しんできた「醸す」という食文化と、どこかでつながっているからなのかもしれません。

 

朝でも昼でもない。コーヒーに「夜」という時間を

そして、醸造珈琲が提案しているのは、新しい味だけではありません。

このコーヒーのために想い描かれたのは、仕事を終えたあとの静かな夜でした。

照明を少し落とす。

ワイングラスにコーヒーを注ぐ。

香りを楽しみながら、一口ずつゆっくり飲む。

そこにチーズやナッツ、ドライフルーツを合わせてみる。

目を覚ますためでも、仕事に集中するためでもない。

一日を終える時間に寄り添うコーヒー。

ワインのような余韻を持ちながらアルコールは0%であることから、つくり手たちはこの一杯を「酔わない夜の贅沢」と表現しています。

コーヒーそのものを変えるだけではなく、コーヒーを飲む時間まで変えてみる。

そう考えると、「醸造珈琲」がつくろうとしているものが、少し違って見えてきます。

 

『醸造珈琲』を〝今〟届けたい理由

最初に「醸造珈琲」という言葉を見たとき、

「コーヒーを醸造するって、どういうことなんだろう?」という素朴な疑問を持ちました。

発酵させたコーヒー。

ワイングラスで飲むコーヒー。

それだけ聞けば、ちょっと変わった新商品として紹介することもできます。

でも、その背景を知っていくと、今回届けたいと思った理由は、その珍しさとは別のところにありました。

雲南の農園で10年間コーヒーと向き合い、その年、その日の状態を見ながら、収穫や発酵、乾燥の方法を考える。

そして、目指した味を一杯にするだけではなく、「夜にゆっくり楽しむ」という新しい時間まで提案する。

新しいことをするために、珍しい方法を選んだわけではない。

届けたい味や体験があって、そのために選んだ方法が「醸造」だった。

そこに、この取り組みの面白さを感じました。考えてみれば、私たちは知らず知らずのうちに、

「コーヒーは朝に飲むもの」

「仕事の合間に飲むもの」

と、楽しみ方を決めているのかもしれません。

でも、飲む時間や器、合わせる食べ物を少し変えるだけで、いつものコーヒーにもまだ知らない楽しみ方が見つかるのかもしれません。

朝でも、仕事の合間でもない。

一日の終わりに、ゆっくり味わう一杯。

『醸造珈琲』を知ったことで、コーヒーとの付き合い方が少しだけ広がったような気がしました。

いつもの一杯を、いつもとは違う時間に楽しんでみる。

そんな小さな変化が、新しいコーヒーとの出会いのキッカケになるのかもしれません。

 

-information-

KOUNOU-COFFEE

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

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