SERIES
Food Future Session
2023.06.20. | 

[Vol.3]「共用部を使いたいからIsaI AkasakAを借りたい」と思われる場を目指す【Sコンサルティング 軽部×RJオフィス 岸田×Yuinchu 小野】

「Food Future Session」という壮大なタイトルで展開する、×Mo:takeの座談会。今回は、7月に赤坂にオープンする複合型シェアオフィスビル「IsaI AkasakA」の管理者である株式会社RJオフィスの岸田浩治さん、コンセプト開発を担当するSコンサルティングの軽部拓さん、そしてビル内に今後オープン予定の「Mo:take STUDIO赤坂」を担当するYuinchuの小野正視の座談会です。Vol.3では、キッチンのある共用部をどう使っていくか、共用部をどう育んでいくかについてお聞きしました。

キッチンでは「小野家の献立」のような
プライベートなメニューが食べられるかも!?

 

――IsaI AkasakAの共用部に入っている機能について教えてください。

 

岸田さん:基本的に絶対に必要なのは会議室とWebルームです。会議室のニーズが減ってきているとはいえ最低限は必要なので大小6部屋を作り、オンラインミーティング用のWebルームは15部屋用意しました。仕事ができるオープンスペースやラウンジといったワークスペースも1階と2階に作るので、機能はだいぶ充実していると思います。

 

――赤坂は外で食べられる飲食店が豊富なので、ビル内にカフェなどは必要なさそうですか。

 

岸田さん:結構みなさん面倒くさがりなので、本当は中で食べられるものを提供したいんですが、建物の申請上、外に向けたレストランはできないんです。ただ、入居している人向けの食を、管理者であるRJオフィスが提供することはできます。立派なキッチンもあるので、プロに商品開発などをしていただきながらやれることを考えています。

 

小野:外に開けていない飲食の場所だからこそできたら面白いなと考えているのは「入居者の誰々さんのオーダーです」というメニューができないかな、ということです。個人からレシピを提供してもらい、それをプロが再現したものをプロダクトとしてRJオフィスさんに渡し、RJオフィスさんから提供してもらうことはできますから。

 

――広く一般の人に合わせる必要がないからこそ、謎のメニューが提供されてもいいわけですね(笑)

 

軽部さん:謎のメニュー、いいですね。

 

小野:軽部さんのグランドデザインのイメージをお借りするなら、多分、共用部を育んだ末にそれが実現できると思います。最初は美味しいコーヒーを出すとか、10食限定先着順といったことから始めるけれど、だんだん場が育まれ、共用部が活性化して、外部刺激も入ってきた先に、最終的に「あの人の家のメニュー」が作れるところまでいけるといいなと思っています。

 

岸田さん:共用部ってそういうのが起こる場所ですよね。小野家の献立がランチで出てきたり。

 

小野:完全プライベートなメニューもあれば、このメニューを公開するかどうか迷っている事業者がテストキッチンとして作り「限定30食無料で提供させていただきます」ということもできますし、振り幅も出せますよね。

 

キッチンのある共用部が
働き方の変化を支えていく場になる

 

軽部さん:これは最初の働き方の変化の話ともつながっていると思います。

今までお弁当を作るときには、材料を大量に仕入れて安く抑えてロスが出ないように献立を考えて売ってきました。でも、そこにはだんだん価値がなくなってきて、むしろ一人ひとりの頭の中に価値があるようになると、例えば小野家の献立から新しい価値が生まれて、それが他の人にとっても美味しいものになっていく。それを体現しているということだと思うんですよね。だから、働き方の変化を、本当にこの共用部が支えてくれる。そういう場になろうとしてるんだと思います。

効率的に作ったものではなく、そういう関わりの中から新しい商品がどんどんできていく時代になると思うので、それをIsaI AkasakAがまずやり始めるっていうか。大きな会社ってやっぱり今までの文脈で価値のあるものを作ろうとしますけど、新しい価値のあるものの作り方をここでやってあげるっていうのがいいと思っています。

 

――今ここから始めるからこそできる在り方ですね。大企業でもこういう新しい場所を一つ借りて、飛び地みたいな感じで使ってもらえるといいですね。

 

小野:そういう使い方を提案していきたいですね。やることが義務ではなくって、やらなきゃ損、ぐらいの感じでいいんでしょうね。

 

軽部さん:義務感がある時点で逆に価値が上がっていかない面はありますよね。だからこそ義務感を見せずに自発的にやってもらうというやり方が、IsaI AkasakAのやり方ですね。

 

ーーやっている側が面白がっていることも大切ですよね。

 

岸田さん:その意味でいうと、ここにはあえてフロントは置きません。入り口での「いらっしゃいませ」はもうやめて、スタッフは各所共用部にいてもらおうと思っています。そう言うと「採用の基準はなんですか」と聞かれますが、答えは、これを楽しめる人、好きな人。じゃないと成り立たないと思っています。

 

軽部さん:楽しんでやるのは本当に大事ですね。

 

10年後には、入居したら家賃分を稼げるオフィスにする

 

――グランドオープンが7月なので、まだ見えていない部分もあると思いますが、5年、10年経ったときにここがどうなってると面白そうだなと思いますか。

 

岸田さん:毎回言っていてまだ実現してないんですが、入った瞬間に家賃以上が稼げるオフィスです。例えば家賃が20万だとすると、入った瞬間に毎月20万以上稼げる。入居して、楽しみながらコトが起きていくことによって、中の人に購入してもらえるようになり、結果として家賃以上を稼げる。それが私がオフィス事業でやりたいことの極論です。

湾岸エリアのスモールオフィス「the SOHO」でも、初台センタービルでも、中にはそれを実現できている人もいますが、こちらがいろいろなものを提供することによって、現実的にそういう機能が生まれるオフィスにしたいんです。

 

小野:面白いですね。

 

――入居した瞬間に、ご近所さん同士の小さい商いみたいなものが生まれるということですね。

 

岸田さん:仲良くなって一緒に仕事してるねというのはすごく嬉しい話ですよね。これまでは喫煙所でしか成り立たなかった動きが、共用部で生まれるようになってくるといいですね。

 

軽部さん:それってやはり物件性が育っていくということだと思うんです。育つ物件という意味では、この物件自体が異才じゃないと育たないので、異才であってほしいと思いますね。

先日行われた広島サミットは、かつて原爆を落とされた広島で開かれたことに大きな意味があります。コロナ禍で場に縛られずどこでも働けるようになったけれど、逆説的にやっぱり場にも意味があると思います。特に、コロナ禍を経てもう一度会社に集まることになった背景には、刺激し合う場が求められていて、だからこそ場が持つ意味は大きいと思います。

 

その意味で、赤坂という場所にはすごくポテンシャルがあると思います。TBSや博報堂がありますし、赤坂という名前の通り坂が多くて、坂上の高いところは“気”が強い。日枝神社は日本でも有数のパワースポットですし、赤坂で働いていることを誇りに感じている人も少なくないですよね。

今はIsaIが赤坂の名前を借りていますが、5年後10年後は逆に「赤坂に行けばIsaIがあるよ」というように、赤坂とIsaIの関係を逆転させたいですね。

 

小野:Yuinchuとしてレンタルスペースをしてきて、貸すことで家賃は実質ただ、という経済的な意義を叶えてきましたが、ここ3,4年はもう少し個人に寄った形で誰かが何かをやり、価値をシェアしていくことが増えてきました。そうすると、その時に求められるのは家賃を絶対に回収したいというマインドではないんです。

そういう感覚が増えてくると、岸田さんが言っていたように家賃が回収できればもちろん一番いいけれど、共用部で何かをすること自体に意味を感じるようなオフィスになったらいいなと思うんです。「俺、共用部で定期的にイベントをやりたいからオフィスを借ります」と言えるような。

赤坂だからオフィスを借りるのではなく、IsaIが赤坂にあるから「赤坂でもいいよ」というのと同じ感覚で、目的を逆転させる。そうしたらもしかして、結果的に岸田さんの夢が叶う確率も上がると思うんですよね。

 

――岸田さんがおっしゃってることと、結果として一緒ですね。この場所でアクティブであるほど、家賃がなくなっていくと。

 

小野:そのときに、入居者が動きやすくなるであろう装置としてのサービスやコンテンツを僕たちが持ってきました、という立場になりたいな、と思いますね。

 

次回は6/29(木)に公開予定です。Mo:take STUDIO赤坂、そしてIsaI AkasakAが最終的に目指す在り方について熱く語っていただきます。(つづく)

 

– Information –
IsaI AkasakA

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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