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Food Future Session
2022.03.03. | 

[Vol.1]コロナ禍の2年間で、Mo:take LABOはこう変わった!【界外亜由美×Mo:take】

「Food Future Session」という壮大なタイトルで展開する、×Mo:takeの座談会。
今回は、Mo:takeとの関わりが長く、Mo:take MAGAZINEの食コラムでもおなじみの界外亜由美(かいげ・あゆみ)さんとの対談です。

界外さんがインタビュアーになってMo:takeの小野正視と坂本英文にインタビューしたのは2020年5月。初めての緊急事態宣言が出され、飲食店の営業自粛や営業時間の短縮など、新型コロナウイルスの影響が広がった時でした。

あれから2年。「コロナを経て食の価値や存在意義がどう変化したか」をメインテーマに、3人が語り合います。

Mo:take LABOが、本当のラボになった

小野:2年前のインタビューを振り返ってみると、3つのキーポイントがあったと思います。

一つは、ケータリングのセントラルキッチンとして使っていた恵比寿の店舗を「Mo:take LABO」と名づけて、お弁当を作り始めたこと。そして、その業態自体をシステム化するためにHYPHEN TOKYO というサービスを立ち上げたこと。三つ目が、「Mo:take Food TRUCK」事業として、住宅街までキッチンカーで美味しい食事を届けに行き始めたことでした。コロナ禍でケータリングができなくなり、一人ひとりの元へ届けたいという強い思いが新しい届け方へとつながったのです。

そしてその後、製造工程やお届け方を含めてさらに探求していく過程で、Mo:take LABOが本当のラボになりました。

 

界外さん:本当のラボになっちゃったとは、どういうことでしょうか?

 

小野:本当のラボという意味には、二つあります。一つは、お弁当を個人に届けるという事業に喜びはあったけれど、僕たちがやるべきことは食体験というものを本質的に明らかにするための「研究」だと考えて、方向を転換したという意味です。

そしてもう一つは、物理的にラボが移設した、という意味です。料理家・フードコーディネーターのSHIORIさんが事務所兼料理教室として使っていたアトリエ兼キッチンスタジオの後を縁あってお借りできたので、そこをラボ化しました。

コンセプトは「人をお招きできるラボ」です。誰も入ってこない研究室ではなく、オープンソース化したラボにしようと考えました。企業や、僕たちの力を必要としてくださる方々の食のコンテンツづくりに僕らが伴走し、プロデュースしていくための場所です。

 

界外さん:インタビュアーとして何回かお2人からお話を聞いていますが、最初からずっと、そういうことをやるとおっしゃっていましたよね。構想が実態を伴っていよいよ現れた、という感じですね。

プロデュース事業は空間に紐付けなくてもできる部分もあります。今までも実際にされていましたが、場所を持ったことで肉体感のある動きになってきたな、と見ていて感じます。

 

同じ場にいるからこそ、
脳が活性化し、新しいものが生まれる

小野:このご時世ではなかなか言いづらい部分ではあるのですが、感染対策を徹底した上で、一緒にサービス開発しようという議論を同じ空間でしたり、開発風景を見ていただいたり、一緒に味見をしてみたりできるのは結構大きな価値ですね。

 

坂本:そうですね。同じ空間で手を動かしながらリアルタイムで一緒に作っていくのは、ラボだからこそできることだと思います。

ガスコンロも5か所にあるので、同時進行的にいろんなことを進められて、まさにラボ、という感じです。「リアルタイムを体感して、一つのものを作り上げていくことができる場所」だと実感しています。

 

界外さん:コロナになってから、「リアルスペースなんて無くてもいいんじゃないか」という議論もあります。そんな中でラボというリアルなスペースを新たに持ったのはすごく大事なことですね。

先日、サイバーエージェントの藤田晋社長のコメントを見かけたんですが、ゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」みたいなコンテンツを思いつくのは飲んでいる時だけだ、と言ってたんです。「馬を美少女化して走らせるなんていう発想、午前中に思いつくわけないじゃん」って(笑)

その感覚、わかりますよね。論理だけではたどりつかないクリエイティブなものは、熱狂感とかリアリティとか身体感覚とかがぐちゃぐちゃになった時にようやく生まれてくるって。

 

小野:すごくわかります。

 

坂本:その場の空気感ってすごい大事だと思うんです。オンラインになったからこそ、遠隔でもできることがあるという気づきはあったんですけど、場の空気感の大事さもあらためて実感しました。

 

界外さん:これまでオンラインでは無理だとされていた学校や教育関係、そして医療までオンラインでできて、オンライン最高!と盛り上がったけれど、2年経って見てみると、やっぱりリアルな場が必要な瞬間があるんですよね。オンラインの良さとリアルの良さの両方がわかってきましたよね。

 

坂本:本当にそうですね。ちょっとした動作や表情など、オンラインでは感じられないものがリアルにはあります。

 

界外さん:現場に集まると温度や湿度が上がる感覚とかあるじゃないですか。ああいう熱狂の中で脳が活性化されるというか、ハイになる時に一番面白いものが生まれるんですよね。

 

「企業がラボに期待しているのは
 自由度、突飛さ、ワクワク感!」

小野:ラボには「お招きできる研究所」というコンセプトがありますが、もう一つ「あなたたちも研究員ですよ」という裏のコンセプトもあるんです。クライアントに対して一緒に研究員になろう、というのは少し乱暴な言い方かもしれませんが、すでに大手企業さんから、食の分野でやろうとしていることをラボで一緒にディスカッションしたいというご依頼を受けています。

 

界外さん:昔だと、大手企業が求めているものはスキルや実績だったと思うんです。でも、ぶっちゃけて言いますが、そういうことだけを求めていたらYuinchuさんには依頼してないと思うんですよね。

 

小野:おっしゃる通りだなあ(笑)。それに、外部パートナーに任せてアウトプットしてもらったものをそのまま上司に提供するというのは、今や大手企業でも価値が落ちてきているんですよね。

 

界外さん:それって、宝物を全部削ぎ落として箱だけ渡してるような感じですよね。アウトプットまでのプロセスの中に宝物があったんじゃん!という。

 

小野:そうそう。それが最近は、むしろそこでどんなキャッチボールが起きたか、何が課題で、何がポジディブだったか、という部分を含めて議論させていただけるようになりました。そうなった時に、それをラボという場でディスカッションできることが付加価値に、さらにはメインの価値になる時代が到来するのかなと思っています。

実際に、関わる企業さんからは「我が社の課題に対して、こんなに真剣に向き合おうとしてくれているのか」という印象を持っていただいているようです。

 

界外さん:大企業とイノベーションは相性が悪いと昔から言われてきた中で、企業側がどういう人と組みたいかというと、単純に何かワクワクさせてくれる、むしろちょっと得体のしれない感じのある相手の方がいいんでしょうね。

 

小野:言い方を間違えると大変なんですけど、僕はいわゆるパフォーマンスを出そうとは思ってないんですよね。

 

界外さん:わかります。企業側も、そうやって小さくなってほしいとは思っていないはず。小野さんがあえて自由でいようとしてくれていることにむしろ期待しているんじゃないかと思います。自由度がない、突飛なことを言い出さないようなスタートアップと大企業がつきあってもしょうがないじゃないですか。

 

小野:ラボの存在意義は、意外とそこなのかもしれないですね、一番は。
本質や主体性をどう見せていくかという点で、同じ場で一緒に向き合える環境をつくれることが、ラボの一番の強みになっているんだと、いま自覚しました。

 

界外さん:環境って大事ですよね。Mo:take LABOは入った瞬間からキッチンスタジオとしての雰囲気が満点で、ラボ感もある。実験できそう、今日ここで面白いものを作るんだな、と気持ちが高まりますから。

 

次回は3/8(火)に公開予定です。このMo:take MAGAZINEについて触れつつ、忙しく働きながら家族のために日々の食事を作っている界外さんのお話が展開されていきます。どうぞお楽しみに!(つづく)

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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