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Food Future Session
2022.08.04. | 

[Vol.4]「楽しい」の幅を広げたい。美味しいご飯も立派な目標になる【ラントリップ × Mo:take】

食の未来をユニークな仕掛け人たちと語る「Food Future Session」。今回は、ランナーのためのSNSアプリ「Runtrip」を開発・運営する株式会社ラントリップ代表取締役の大森英一郎さんとMo:takeの座談会です。Vol.4は、スポーツと食の可能性についてYuinchu代表の小野と語り合います。

朝ランがインプットの時間に最適な理由

小野:今、週に3~4回ランニングしているんですよ。走ると、自分の体調や体力に気づきやすいんですよね。前日お酒を飲んでないと、「調子がいいな」と感じられる(笑)。僕にとってランニングは大事な体調のセンサーになっています。

それと、最近気づいたんですが、走っている時の方が音楽の歌詞やインプットしたい情報が耳に入りやすいんですよ。走っているとメモできないから覚えようとするし、自分の身体がすごくシャープになる感覚があります。

 

大森さん:わかります。僕もインプットしたい情報は、走る時に聞いています。特に朝ランはインプットに向いていると思います。一日の始まりだから新鮮な気持ちで情報も吸収しやすくなる気がします。

朝走ると、美味しいコーヒーを飲みたくなります。走り終わった後、自宅でシャワーを浴びて、その後ゆっくりとコーヒーを淹れて飲む時間が幸せなんです。走った後だから、よけいにコーヒーの奥深さを味わえる。

 

小野:自分の身体が整った後だから、味わいもより深く感じられるんですね。

 

大森さん:だから、案外リッチな味わいのものが嬉しいんですよね。ランニングの後って、さっぱりしたものをゴクゴク飲むイメージがあるかもしれませんが、水分補給ではなくご褒美として、味わいを楽しめるものを飲みたいですね。

 

速く走ることは、走る楽しさのうちのひとつ

大森さん:ランニングの世界では、まだまだ「タイムが速い」ことが大きな価値を持っています。もちろん、速いから楽しいと思える人がいてもいいんです。ただ、僕自身は「楽しい」の幅をもっと広げたい。「速さ」以外で楽しいと思えるきっかけを増やしたいと思っています。

一方で、「速さ」と「楽しさ」は、相反するものではないとも考えています。 「楽しさ」の要素の中の一つとして、「速く走る」があると思うんです。

 

小野:Mo:takeが目指していることも同じです。シェフは独立して自分の店を持つことがやりがいや楽しさだと思われることも多いですが、今は店を持つ以外の楽しい選択肢はたくさんあります。「独立する」は、あくまで選択肢の中のひとつ。それをもっと伝えていきたいんですよね。 

 

大森さん:ただ、「速くなくても楽しめる」と言っているだけだと、速く走れないことの言い訳にも聞こえちゃうんですよね。

それで昨年末、フルマラソンの大会に出たんです。フルマラソンでは、ゴールまで3時間を切れるのはランナーの上位2%未満だと言われています。そこを目指してチャレンジしたんですが、その際に、プロセスを楽しむ様子を見せることを意識しました。結果、10数年ぶりに3時間切ったんですよ。「楽しみながら速く走ることもできる」と証明できたことは嬉しかったですね。

 

小野:箱根駅伝時代に苦しい思いをしてきた大森さんが、14年経って、「楽しみながら速く走る」を体現したんですね。

 

大森さん:速く走る楽しさも知っているからこそ、「それ以外の楽しさもある」という言葉に説得力が生まれるんだと思います。実際、速さを求めたくない人は、速く走れる人に「速くなくても楽しい」と言ってもらえることで救われることがあるらしいです。

 

バーチャル×リアルイベントのゴール地点をカフェに置く

大森さん:毎月開催しているオンラインのランニングイベント「Vitality Run&Walk Challenge(VRWC)」には最高で3万3000人のランナーが参加してくれていますが、そこにリアルの良さを絡めたいと思って、「REAL VRWC」という取り組みを始めました。手を挙げてくれた全国の有志にリアルなゴールテープを作って配っているんです。

 

小野:それはいいなあ。

 

大森さん:バーチャルレースなんですけど、目指すゴール地点にはリアルなゴールテープがあるんです。ゴールテープを切った瞬間を写真に撮ってSNSにあげることもできる作りにしています。

今後それをもう一歩進めて、カフェがゴール場所になったら面白そうですね。走ってカフェにたどり着くとゴールテープがあって、完走証を見せたらドリンクが10%オフになったりもして。そうなったら、ランのコミュニティもできるし、お店にとっても良いし、面白そうですよね。

 

小野:面白い。まず実証実験としてやってみたいですね。

 

大森さん:それと、朝ごはんを提供してくれるお店もほしいんですよね。都心では増えてきましたが、日本はまだまだ少ない。

 

小野:たしかに。洋食、和食ともに少ないですね。

 

大森さん:スポーツは朝と相性が良いから、きっかけがあればコミュニティが生まれやすいと思うんです。美味しい朝ごはんがあればランニングのご褒美にもなるし、目的の一つになりますよね。

 

美味しい朝ごはんのために走るのも立派な目標

大森さん:今、人は周りと比較して自己肯定感を失うことも少なくありません。でも、ランニングという少しおっくうなことを乗り越えると、自己肯定感が高まっていくんじゃないかと思うんです。僕らはそのために、いろんな選択肢を提供しています。

その中で、美味しい朝ごはんを食べることも、走る目的になると思います。逆に、朝ごはんを作るために20分必要なのだとしたら、その時間をサービスの提供で浮かせて、走る時間にあててもらってもいいですよね。

 

小野:ランナー向けの朝ごはん、いいですね。僕もそれぐらい自然な形でやってみたいです。これまで僕たちは、イベントという非日常の時間に食を提供してきましたが、今、コーヒースタンドの運営やプロデュースを通じて、日常にフォーカスしてきています。ラントリップさんともし今後ご一緒できるなら、「走る」と「食べる」がつながって、個人の日常生活に馴染んでいくようなことをやっていきたいです。

実際に朝ごはんを提供するとしたら、どんなものがいいだろう……。走った後の身体だからこそ美味しく感じられるような、シンプルなものがいいかもしれませんね。例えば塩むすびはどうでしょう?素材だけこだわって、できるだけシンプルに。

 

大森さん:それはいいですね!

 

– Information –

ラントリップ

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ライター / たかなし まき

愛媛県出身。業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。人の話を聴いて、文章にする仕事のおもしろみ、責任を感じながら活動中。散歩から旅、仕事、料理までいろいろな世界で新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。

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