2021.04.27. | 

[Vol.2]「おいしいと、みんな笑う。」だから今日も、秘密基地でお弁当をつくる 秘密厨房・ドムさん

この1年で地域にすっかり浸透した武蔵小山の小さなお弁当屋さん、秘密厨房(ひみつキッチン)。丁寧に作り込まれた彩り豊かなお弁当は、16時の営業終了時間を待たずしてお弁当が売り切れてしまう日もしばしばです。Vol1.では秘密厨房の秘密についてお伝えしましたが、Vol.2ではスポットを主宰のドムさんに当て、料理人としての原点や、料理人としてのヒストリーに迫っていきたいと思います。

お弁当に入っていると、人気者になれたハンバーグ
料理人は、憧れのヒーローだった

皆さんは小さな頃、何に憧れましたか? ウルトラマン、仮面ライダー?
長崎県佐世保市で生まれ育ったドムさんにとって、憧れのヒーローは“料理人”だったといいます。

 

ドムさん:実家がハンバーグやナポリタンなど昔ながらの洋食を出すレストランをやっていたんです。40年ほど続いているお店でした。80席ほどあったので、結構広かったですね。

地元の人たちが、誕生日とかちょっと特別なお祝いの時に家族で利用してくれるようなお店で、僕がお店の息子だってこともみんな知っていました。遠足のお弁当にハンバーグが入っていると、みんなの人気者になれたのを覚えています。ハンバーグ、おいしかったですね。

 

地域の人たちに愛されたお店の厨房で、お父さんとお母さんが働いている姿。そして、美味しそうに食べて笑顔でお店を後にしていく地元の人たちーー。

いつも間近で見ていたドムさんは、両親をとても誇らしく思ったことでしょう。物心ついた時には、自分も料理人になることを夢見て、それ以外の道は考えもしなかったというのもうなずけます。

現在ではお店は実家の手を離れてお弟子さんが引き継いでいますが、ドムさんにとって料理人としての原点であることは、今でも変わりはありません。

 

 

有名店で踏み出した、料理人の一歩
そこで見た“リアル”とは

大学で管理栄養士の資格を取得したドムさんは、卒業後、“日本一予約が取れない”と言われたイタリアンレストランで、料理人としての一歩を踏み出すことを希望しました。

料理人の世界と言えば、調理師学校を出てすぐにお店に入る人がほとんど。四大卒という経歴は敬遠されがちなため、ドムさんは手紙に自分の思いをしたためてお店に送ったといいます。

想いは届き、研修を経て働き始めたドムさん。しかしそこで目にしたのは、飲食店の厳しい労働環境と、人気店ならではの現実でした。

 

ドムさん:単純に過労というか、労働時間がすごく長くて、新人を10人採っても10人がやめていく、みたいな。とにかく辛かったですね(苦笑)。スタッフが巣立たっていかないので上が詰まり、若手が上に行ける見込みもまったくありませんでした。

2年でお店を辞めたドムさんは、北イタリアの郷土料理のレストランで2年間勉強。そして、撮影用の料理を作るフードスタイリングの仕事のアシスタントを始めました。

 

ドムさん:料理人への憧れの気持ちは変わらないし、料理から離れる気持ちはありませんでした。ただ、飲食店の労働時間の長さや慢性的な人手不足の現実を目の当たりにするうちに、軸足は料理にあるけれど、違うアプローチをしているような業態に興味がわいてきたんです。

 

そんなドムさんが、シェアハウスの仲間を通じてYuinchuと出会い、入社することになります。2015年のことでした。

 

 

ケータリング、レンタルスペース
Yuinchuで体験した飲食 × ◯◯の新たな形

ドムさんには、忘れられないケータリングの場所があります。それは、Yuinchuに入って最初のケータリングの現場となったキャンプ場でした。

 

ドムさん:それまではガチガチの飲食にいたので、いくらキャンプ場とはいえ、僕たちがはしゃいではいけないと思っていたんです。ところが、坂本英文(さかもと・ひでふみ)Mo:takeヘッドシェフはザリガニを捕まえたりして思い切り楽しんでいたんですよ。衝撃でしたね(笑)

 

キャンプ場以外のケータリングでも、お客様が一瞬で喜んでくれるような料理をさまざまな業態やシチュエーションに合わせて作り、その場にいる人を楽しませていく姿を間近で見れたのは貴重な経験だったといいます。

同時に、飲食店の店舗経営だけでのビジネスモデルの不安定さや疑問を感じていたドムさんにとって、さまざまな業態と接点を持っているケータリングや、レンタルスペースとして貸し出しながらのカフェ営業は、飲食店の新たな形や可能性を見出すきっかけにもなりました。

 

ドムさん:Yuinchuでの経験を通して、店舗営業以外のところでしっかりと売り上げを出していくことができれば、最終的にはより良い料理を提供できるようになる、と確信できるようになりました。

コロナ禍で飲食店の営業が制限される状況になった今、まったく違う業態に軸を持っておくことの重要性を改めて感じています。

とはいえ僕は、軸を料理の範疇の外には持っていきたくないというか、料理の範疇の中でできることをしたくて。それを実現できれば、今後飲食業界で働くことを目指す人たちにも再現性があるのかなと思っています。

 

次回は5/4(火)に公開予定です。秘密厨房でお弁当を作っているドムさんが大事にしていることや、秘密厨房のこれから、そして“ドム”というニックネームの由来まで!余すことなくお伝えします。(つづく)

 

– Information –
秘密厨房
東京都目黒区目黒本町4-16-7 1F
03-4361-4385
11:30〜16:30(なくなり次第終了)
年中無休
https://himitsu.kitchen
https://www.instagram.com/himitsukitchen_food/

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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