2021.05.04. | 

[Vol.3]「おいしいと、みんな笑う。」だから今日も、秘密基地でお弁当をつくる 秘密厨房・ドムさん

武蔵小山の小さなお弁当屋さん、秘密厨房(ひみつキッチン)。最終回となる今回は、秘密厨房でお弁当を作っている主催のドムさんが大切にしていることや、秘密厨房がこれからどうなっていくのかという未来予想図、そして“ドム”というニックネームの由来までお聞きしていきます。

お客様にしっかりと表現したいこと
あえて見せないようにしていること

ドムさんは言います。

 

ドムさん:ケータリングのセントラルキッチンとして最初にこの場所を作った時から、環境のことを考えてできるだけロスが出ないようにしたいとか、生産者の方が大変な作業を重ねて作った有機野菜を無駄にしたくないとか、サステナブルであるというところも大切にしています。

有機野菜を作っている同世代の農家さんとコミュニケーションを取りながら、時々農作業を手伝いにいったり、たくさん取れて余った野菜を箱で送ってもらって加工したり。できる限りのことをやっています。

 

でも、秘密厨房のWebサイトを見ても、お店に足を運んでも、「環境に優しい」とか「野菜を無駄にしません」といった、お店のウリになりそうな言葉はまったく目に入りません。

そこには、ドムさんのこだわりがありました。

 

ドムさん:秘密厨房のテーマは「おいしいと、みんな笑う。」です。僕が提供したいと思っているのは、人とのコミュニケーションをとる時の真ん中にある食事、完全に娯楽としての食事であり、エンターテイメントとしての食事です。

なので、環境やサステナビリティへのこだわりは、僕が勝手に持っておくものだと思うんです。そういった問題と向き合うことも大切だけれど、お客様に対しては、「楽しいし、美味しいですね」と思ってくれる範囲で表現するようにしています。

 

 

お店がいつまでも続いてほしいーー
お客様の声に支えられて

お客様には、ただただ、おいしく食べて、笑ってほしいーーと願いながら一つ一つのお弁当を作り、手渡しているドムさん。インタビューをしながら感じる人柄から、きっと、お客様に愛されているんだろうなと容易に想像できます。

 

ドムさん:地域の方たちには本当に支えて頂いています。僕らは皆さんに便利なように利用していただきたいと思っているんですが、コロナ禍で飲食店が厳しいというニュースを見た方が「お店が継続できるように買いに来ています」と来て下さったり。

そもそもお店が絶望的な気持ちから始まったので、きれいごとではなく、お客様の声は本当に支えになるんだなと実感しています。

 

お弁当が軌道に乗り始めた昨年の10月頃からは、ロケ弁もスタート。以前働いていた株式会社Yuinchuが運営するレンタルスペースで提供するお弁当も、秘密厨房が請け負っています。

以前一緒に働いていたMo:takeヘッドシェフの坂本英文(さかもと・ひでふみ)に、当時のドムさんの印象を聞いてみました。

「何かをしても、ドムだから許されるという空気感は、社内に限らず周辺でもありました。みんなから可愛がられるキャラでしたね。また、何かのプロジェクトを開発から一緒にやりたいですね」

ドムさん、いかがでしょうか?

 

ドムさん:関われることがあるならぜひ一緒にやりたいと思いますし、娯楽としての食を一緒に追求できたら楽しいだろうなと思っています。

 

そう遠くないうちに、Mo:takeと秘密厨房がタッグを組む日がくることを楽しみにしております。

 

 

たくさんの人に楽しんでもらえる
レストランを作りたい

そろそろ、“ドム”という名前の由来についてお聞きしたいと思います。

 

ドムさん:佐世保(長崎県)にあった実家のレストランの名前が「ドムニセイ」だったので、いつの間にか「ドム」と呼ばれるようになっていたんです。本名ではずっとあだ名がなかったので、僕も気に入っちゃって、ドムと名乗るようになりました。ドムは、「Dream Organization Merchant」の頭文字で、夢をお客さんに提供するという意味を込めてつけた名前だったそうです。

ドムという名前ともう一つ、秘密厨房で出している黒カレーも、ドムニセイで出していた黒カレーが元になっています。長崎の大村あたりで食べられるような、フルーツのチャツネを使った甘みのあるカレーなんですが、父が10年前に亡くなっていたので、残っていたレシピと舌の記憶を辿りながら作りました。

 

地元の人たちに愛されていた実家のレストランと同じように、地元に根づき始めた秘密厨房。まだまだここからどんな方向にも展開できる可能性をたくさん秘めています。

 

ドムさん:お弁当を提供しながら感じたのは、生活の一部に僕らのサービスとの接点があることの良さです。その接点を起点としながら、いずれたくさんの人に楽しんでもらえるような箱を作り、レストランという形でやっていけるような流れを作っていくのが次の目標です。

 

秘密厨房から枝葉が分かれ、いろいろなサービスが広がっていく。同時に、秘密厨房をいいと思ってくれた人たちが広がっていく。そんな流れを実現したいと思っています。

秘密厨房のレストラン、想像しただけでワクワクしますね。一度食べてその美味しさの虜となった1ファンとして、これからもお弁当を買いに行かせていただきます!

 

– Information –
秘密厨房
東京都目黒区目黒本町4-16-7 1F
03-4361-4385
11:30〜16:30(なくなり次第終了)
年中無休
https://himitsu.kitchen
https://www.instagram.com/himitsukitchen_food/

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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