2021.08.10. | 

[Vol.2]五感にひびく体験を提供し、場の価値を高める。「HYPHEN TOKYO」井上雅之×「Mo:take」ヘッドシェフ坂本英文

Yuinchuが運営を行うHYPHEN TOKYO でディレクターを務める井上雅之(いのうえ・まさゆき)と、「Mo:take」ヘッドシェフの坂本英文(さかもと・ひでふみ)による対談の2回目は、「場の価値」について、場づくりと密接に関わる「食」についてお聞きします。

他にはない、HYPHEN TOKYOの強みとは

ーーHYPHEN TOKYOは、できるだけ合理的に、そして短期間でクオリティの高いカフェを開くためのフォーマットを持っています。だからこそ場の本質と向き合うことを大切にしていると思うのですが。

 

井上:はい、カフェの物理的な部分は最短で作れる自負があるのでそこは進めながらも、本質的な部分を深めるためにまず「なぜこの場を作りたいと思ったんですか?」という問いかけから始めます。

特に法人のクライアント様の場合、「その場が事業に対してどう寄与するのか」「事業のどの部分とシナジーを生み出したいのか」まで考えないと、場所を作って終わりになってしまいます。そうならないように、クライアントと場を利用するお客様の双方にとって最適な形を見つけていきます。

 

坂本:そのプロセスがない店舗は、情報が散ってしまうんですよね。例えば巷でブームのものや、押し出したい目玉商品がたくさんある店舗があるとします。それは売るための戦略かもしれませんが、お客さんとしては情報過多になって逆に印象にも残らない。ブランディングとしてあえていろいろなものを出しているならいいんですけどね。

 

井上:目指す姿と存在意義を言語化する作業ですね。ミッションやビジョンというと、「対外的に発信するためのもの」と考えている方も多い印象があります。でも、僕の場合は判断軸や共通言語として、内部に向けた目線で設定することが多いです。

 

坂本:マサさんは、概念の情報整理も、カフェのオペレーションの情報整理も両方できるんですよね。ピンポイントで的確に、その人たちにぴったりな店舗のお手伝いができるところがHYPHEN TOKYOの強みですよね。

 

井上:まさにそうです。単にお店を開くだけではなく、やりたいことをしっかりと伝えるための軸を作り、社員教育からメニュー展開まで含めてしっかり伴走していけるのが強みですね。

 

坂本:そうやってオペレーションの整理をして伴走することで、思考に余裕が生まれるから、本当に考えるべきことを考えて場を作れる、ということですね。

 

 

差別化のポイントは、商品の背景にあるストーリー

ーー以前と比べ、今はいろいろなものを形にするのが簡単です。一つ一つの商品も、メニューもそうなのかなと思いますが。

 

坂本:簡単になってきたし、同じようなものが増えてきたからこそ、そこでの差別化やストーリーが大事になると思っています。同じような商品でも作るまでのストーリーは全然違うと思うので、そのストーリーをどんな風にピックアップして商品の中に入れ込むかが大切ですね。

それを体現しているのが、HYPHEN TOKYOであり、フラッグシップショップの「OPEN NAKAMEGURO」です。

 

井上:前回お話したOPEN NAKAMEGUROのラムネを使ったドリンクの話もそうなんですけど、「なぜこの商品を売るのか」という背景をメンバーがしっかりと理解している事も重要だと思っています。その商品の意義を知っていて、お客様にも自分の言葉で伝えられる。語るべきストーリーがあることで、単なる表面的な「面白い商品」で終わらない、「意味のある商品」になると考えています。
そこまでできて初めて、お客様の中に「なんかこの場所いいな」という感情が生まれるのではないかと思います。

 

ーー「この場所いいな」という感情を生むために、カフェという場にはどんなことが必要だと思いますか。

 

井上:場として大切にしたいのは、五感を使った体験を提供することです。情報として知っているだけではなく、人としゃべって、においがあって、触れることができる。それはカフェというリアルな場だからこそできることなんだと思います。

 

ーーそう考えると、ドリンクやフードの捉え方も変わってきそうです。

 

坂本:ドリンクもフードも、人も、空間も、お客様とのタッチポイントや、きっかけ作りのための機能にすぎないのかもしれません。そしてそれは、イベントでも定常のカフェでも同じことですね。

 

井上:コミュニケーションツールですね。

 

坂本:そうそう。だからこそ、五感を使って感じられることや、空気感を体験できるることがよりいっそう大事になってきますね。

 

 

カフェで開催するポップアップイベントには
どんなメリットがある?

ーーレンタルスペースなどではなく、定常のカフェでポップアップイベントを行う意味はどこにあると思いますか。

 

井上:一番は、カフェ利用で来た人もイベントに巻き込む事ができる点だと思います。例えばギャラリーでのイベントだと、お客様が来なくても「周知が足りなかった」で終わってしまいます。

一方で、カフェの機能がある場では、ベースとして一定の集客はあるので、イベントに興味のないお客様はどんな風に見るんだろう、どうしたらその人たちに対してブランド認知から商品購入までの道筋を作れるんだろう、と分析して次につなげる事もできるんです。ただのレンタルスペースやポップアップスペースとは違い、そういうところが、生活の延長線上にある場で開催するポップアップの魅力でしょうね。

 

坂本:イベントを定常のカフェメニューに組み込むこともできますよね。OPEN NAKAMEGUROではオープンサンドを出しているんですけど、例えば、クライアントのコンテンツを期間限定でオープンサンドにしますよ、といったコラボレーションも考えられそうです。

食はきっかけづくりのツールになるんですよね。「美味しいものを食べたい」「新しい形のものを体験したい」と誰もが興味を持ちやすいからこそ、導入のきっかけになる。これも食ならではの特性だと思っています。

 

 

8/17(火)に公開予定の最終回のタイトルは「場づくりにおいての食は、手紙に近いものがある」です。食と手紙が近いとは、いったい、どういう意味なんでしょうか。どうぞお楽しみに!(つづく)

 

– Information –

HYPHEN TOKYO
Instagram:https://www.instagram.com/hyphen_tokyo/
WEB:https://hyphen-tokyo.jp

OPEN NAKAMEGURO
目黒区上目黒2-9-17 Nakameguro Crossover1F
11:00〜18:00
Instagram:https://www.instagram.com/open_nakameguro/
WEB:https://open-nakameguro.com/

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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