2021.08.17. | 

[Vol.3]場づくりにおける食は、誰かを想い綴る手紙。「HYPHEN TOKYO」井上雅之×「Mo:take」ヘッドシェフ坂本英文

Yuinchuが運営を行うHYPHEN TOKYO でディレクターを勤める井上雅之(いのうえ・まさゆき)と、「Mo:take」ヘッドシェフの坂本英文(さかもと・ひでふみ)による対談の最終回は、コロナ禍での場づくりで意識したことや、誰でも簡単にお店を出せる時代だからこそ考える大切なことについて。今の思いを熱く語っていただきました。

コロナ禍で、ミクロ/マクロ視点から試みたこと

ーーOPEN NAKAMEGURO がオープンした時には既にコロナ禍に差し掛かっていましたが、コロナ禍の場づくりで意識していることはありますか。

 

井上:まずミクロな視点でいうと、1人で来店したお客様でも楽しんでもらえるように意識して商品開発をしました。1人で来店しても、写真を撮ってSNSにあげたくなるようなメニューを出せばそこからオンライン上でのコミュニケーションが生まれますよね。直接会うことが敬遠される中で、そうしたきっかけづくりを店舗としてかなり意識しました。

一方、少し引いたマクロ視点では、スポーツドリンク「LIFE WATER」の展開があります。マスクが必須になり、熱中症や隠れ脱水のリスクが高まって、水分補給の大切さが言われるようになりましたよね。その課題をカフェの立場から解決する試みです。

とはいえ、まん延防止等重点措置が適用されたり緊急事態宣言が出ている中では「ぜひお店に来てください」と大きな声で言いづらかったので、水面下でも情報が拡散される仕掛けは考えました。SNSで、僕らが意図しないところで拡散してもらうための仕掛けですね。

 

ーーただ目新しかったり「映える」ということではない明確な意図が、一つ一つの商品の背景にあるんですね。

 

井上:LIFE WATERについては、時間軸でも考えました。コーヒーはどちらかというと時間をかけてゆっくり飲むドリンクですよね。でも、カフェのメニューがコーヒーだけなら、パッと来てパッと出たい人はどうするの?と。そこで、グイッと一気に飲めるスポーツドリンクを置くことで、この場所の新たな楽しみ方を提供できると考えました。

 

 

何のためのお店なのか
意味づけを考える

ーーHYPHEN TOKYOのディレクターとして、どんな時に喜びややりがいを感じますか?

 

井上:お店が立ち上がり、お客様が来てくださるのはもちろん嬉しいことなんですが、同時に「場所の目的を果たしている」と感じられた時、一層のやりがいや嬉しさを感じますね。

例えば「地域の人が集まれる場所を作りたい」という意見をいただいて店舗を作る時には、「なぜそういった場所を作りたいのか」という部分の深堀りから始まるんですけど、そのプロセスを経て明確になった意図と、実際の場づくりが紐づいているところを見るのはすごく嬉しいです。

 

坂本:場づくりの先に目的が叶った姿を見ることにこそ、喜びがありますよね。

 

井上:美味しいものや、映える空間自体はたくさんあるんです。しかし、更に良いとされるものが現れればそれらは記憶から消し去られてしまいます。僕らが作っているのは定常の場。どれだけ長く続けられるかも大事なポイントですよね。だからこそ美味しいとか映えるとかの要素に加えて「なぜやるのか」の意味づけがこれまで以上に必要だと考えています。

 

坂本:飲食の価値観がだんだん変わってきていると思います。単にモノやサービスを売るのではなく、何かの目的をもったお店が増えつつありますね。

他業種から飲食事業に参入する流れも増えてきているので、​​目的設定や意味づけから伴走できることは僕らの武器かな、と思いますね。

 

 

もっと簡単にできることにも、
あえて想いを乗せ、相手に届ける

ーー最後にあらためてお聞かせ下さい。場づくりにおいての食って、何でしょうか。

 

井上:何かに例えられないかなってすごく考えたんですが、割と手紙に近いのかなと思ったんです。

手紙って、一生懸命書いて送るじゃないですか。受け取り手は、無意識に文字から過去や未来を、紙の手触りから温度を感じる。またそこにインクの香りが乗ってきたりもして。そこには、相手のことをきちんと考えて選び、書き、伝えるという、しっかりした文脈がある思うんです。

ここで重要なのは、手紙はあくまで手段ということ。伝えたい何かがあるから手紙という手段を使いますよね。
場づくりにおける食も同様で、意図を伝えたり共感を育むための手段だと考えています。

 

坂本:場づくりにおいての食を手紙に例えるって、いいですねえ。これから、そのたとえ、僕も使います(笑)

マサさんの場づくりへの思いを聞きながら、商品開発も同じことだと感じました。商品開発でも「何のためにこの商品を出すのか」という裏のコンセプトを絶対に入れ込む必要があります。商品を開発するだけでなく、依頼してくれた人の想いを入れて形にしている点では同じことかもしれないですね。

 

井上:もちろん、受け手の中には何も感じない人も、そこから何かを感じようとしてくれる人もいますが、結果として誰かの何かのきっかけになっていれば、それはそれで意味があることなのかなと思っています。

 

ーー井上さんのプロデュースにより、HYPHEN TOKYOは、これからどんな「場」を生んでいくのか、そこに坂本シェフの料理がどんなきっかけを与えていくのか、楽しみです。その時には、随所に仕込まれるであろう“手紙”を探してみたいと思います。

 

– Information –

HYPHEN TOKYO
Instagram:https://www.instagram.com/hyphen_tokyo/
WEB:https://hyphen-tokyo.jp

OPEN NAKAMEGURO
目黒区上目黒2-9-17 Nakameguro Crossover1F
11:00〜18:00
Instagram:https://www.instagram.com/open_nakameguro/
WEB:https://open-nakameguro.com/

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身