2020.07.28. | 

[Vol.2]「突き抜けたケーキを作りたい」お菓子プロデューサーの実験と挑戦

「突き抜けたケーキを作りたい。」
美味しいだけではなく、自分たちのストーリーがあるケーキ、食べた人に「なにこれ!面白い!!」という発見を与えるお菓子が並ぶケーキ屋さん、Ngram(エヌグラム)は、国分寺駅から徒歩 3 分ほどのところにあります。今回は、Ngramを開店するまでの、オーナー生野さんのストーリーをお話いただきました。

お菓子の製造から販売まで。各工程に関わる人たちをつなぐ、通訳的な存在

Ngramのオーナー生野さんのキャリアのスタートはパティシエから。ほどなくして、店舗運営などのマネージメントに携わるようになりました。現場とマネージメント、双方を経験している生野さんは、ご自身を「パティシエと企業をつなぐ橋渡し」だと語ります。

 

生野さん:Ngramを立ち上げた頃、お菓子の材料を仕入れる貿易会社で仕事したことがあります。材料屋さんにとっての客は、お菓子屋さんです。でも、材料屋さんはお菓子屋さんではないので、たとえば、現場のパティシエにとって使いやすいパッケージがどのようなものなのか、現場にいなければわかりません。そういった現場の希望や思いを、材料屋さんに伝えてより売りやすいものにする、ということをしていました。コンサルティングやマーケティングのようなものですね。

 

「こんな道具があったらいいのに」「パッケージがもう少し小さければ使いやすいのに」。当時の生野さんは、そんな現場の声を材料屋さんに届ける通訳者のような役割を担っていたのですね。パティシエの立場からしても、自分たちのニーズをしっかり理解してくれる材料屋さんは、心強い味方だったのではないでしょうか。

「お菓子屋さん」の中だけでまとまってしまうのではなく、外部との繋がりをたくさん作りたい。そうすることで、お菓子の可能性をもっともっと広げたい。そんな生野さんの思いが伝わってきます。

 

 

パティシエを志したのは「海外に行きたかったから」。フランス語の通訳を経て、お菓子作り界の「通訳」へ。

「通訳」としてお菓子の可能性を広げる生野さんが、スイーツの世界に入った理由も気になります。

 

生野さん:私は昔から海外に行きたかったんです。手に職があれば海外でも生きていけると思い、大学を中退して製菓学校に入りました。製菓学校の同級生が就職する中、私は実家に戻り、バイトで貯金して、フランスに行きました。

 

フランスに3年ほど滞在し、本場のお菓子作りとフランス語を学んだ生野さん。この経験が、スイーツ界の「通訳」となるきっかけを生みました。

 

生野さん:帰国後はパティシエとして「Laduree」に就職しました。最初は社員が三人だけ、というスタートでした。現場にフランス語がわかる人が少なかったので、私が通訳もしていました。

 

「Laduree」はマカロン好きならば誰もが知る、フランスの老舗です。

 

生野さん:パリ本社とのやり取り、工場の立ち上げ、気がついたら、お菓子作り以外の仕事が増えて行きました。そんな時、「パティシエとして生きるか、管理側として生きるか。」と考えるようになりました。
私は大学を中退してからパティシエを目指したので、キャリアのスタートは遅かったんです。その後の進路も、ひたすら厨房にいるような、職人らしい修行を積んできたとは言えません。皆とは違う道を歩んできた私だからこそ、できることを探す中でたどり着いたのが、現場と経営の「通訳」という役割です。

 

パティシエとして生き残るのは難しいと悩んでいた生野さん。悩みを逆手に取り「自分だけができること」を見つけました。経営と現場、材料屋さんとパティシエ。人や企業を繋いでいくスイーツ界の「通訳」は、生野さんのすべての経験を繋げるお仕事と言えます。

 

 

「お菓子研究家」のアイディアを形にする実験室、それがNgram

スイーツ界の「通訳者」として活動する中、生野さんはもどかしさを抱えるようになりました。

 

生野さん:当時の私は、「通訳」はできても、新しい物を生み出す事はできなかったんです。もちろんアイディアを出すことはできますが、試作のための道具も場所もない。アイディアが止まってしまうんです。商品開発には試作品が重要。実物があってこそ、議論を進めたり、商品化に繋げたりできます。自分のアイディアを試す場所、形にする場所を求めて、自分の会社を持つことにしました。

 

Ngramはアイディアを実験するためのラボだ、と生野さん。お店を持つことで、試作品を作るだけなく、食べた人の反応も見れるようになったそうです。

 

生野さん:「美味しい」を追求する菓子職人にとって、未知の食材を使うのは怖いことでもあります。でも、怖がっていては新しいスイーツは生まれないんです。

 

そう語る生野さん。思いきって業界の既成概念を外していく、この大胆さが新しいスイーツを生み出す原動力となっているのでしょう。

 

次回は 8 / 4 (火) に公開予定です。
Ngramを舞台に、新しい商品の開発に挑む生野さん。一体どんな実験をしているのでしょうか。次回は、生野さんによるお菓子づくりの「実験」ついてご紹介します。(つづく)

 

– Information –

Ngram本店
東京都国分寺市南町3丁目22−31島崎ビル 1F
042-316-8788
営業時間 11:00 〜 19:30  定休日 なし(不定休)

Ngram 国分寺マルイ店
営業時間 10:00〜20:30 (国分寺マルイの営業時間に準ずる)

HP : https://ngram.storeinfo.jp/
Instagram: https://www.instagram.com/ngram_0g/
Facebook : https://www.facebook.com/0gram/

ライター / 川口 香織

1987年生まれ、東京都の下町出身。6 年間の英国留学により、イギリスかぶれの江戸っ子となる。8年間勤めた外資系 IT 企業では、一万件を超えるメール対応、ヘルプ記事の翻訳、マニュアル作成などにて「書く」を鍛えた。現在ファッションアドバイザーとして活動中。 趣味は古代ローマ史、パズルゲーム。心の声だだ漏れ系の育児ブログを書いている。

Mo:take MAGAZINE > [Vol.2]「突き抜けたケーキを作りたい」お菓子プロデューサーの実験と挑戦

Mo:take MAGAZINEは、食を切り口に “今” を発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

Mo:take MAGAZINEは、
食を切り口に “今” を
発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、
その時、その場所は、
より豊かになるはず。

みんなとともに考えながら、さまざまな場所へ。
あらゆる食の体験と可能性をきりひらいていきます。

みんなとともに考えながら、
さまざまな場所へ。
あらゆる食の体験と可能性を
きりひらいていきます。

さあ、いっしょに たべよう

OTHER SERVICE

様々な形で「食」が生む新たな価値を提供します。

ブランドサイトへ