ニンニクの香りは「ツン」から「香ばしい」に
石川:ペペロンチーノ、いや、「アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ」の作り方を教えてもらっています。前回はパスタを茹でるお湯に入れる塩の役割とどんな濃さがいいのかを知りました。
坂本:材料の紹介と下準備は前回すませていますので、今回はソース作りからスタートです。はじめにニンニクをフライパンに入れてください。ここではまだ、火をつけなくていいですよ。そして、オリーブ油とタカノツメを入れます。それらを入れてから、火をつけます。
石川:火加減はどれくらいですか?
坂本:火加減はフライパンの底に火がちょっと触れるくらいの弱火です。
石川:そんなに弱火なんですか? 今まで、もう少し強い火でやっていました。
坂本:弱火にすることでニンニクを焦がさずに香りを移せます。焦げると苦味が出てしまいますから、弱火でゆっくりやってください。ここで、前回の下準備が効いてきます。ニンニクの大きさを揃えることで、火の通り方が均一になります。一部だけ焦げることがないんです。
石川:弱火だと初心者でもやりやすいですね。……だんだん、油に気泡がプツプツ出てきました。
坂本:香りが出てきましたね。ちょっと嗅いでみてください。
石川:ニンニクのいい香りがしてきました。
坂本:最初は生のニンニクの「ツン」とした香りがしますが、だんだん香ばしい香りに変化します。焦げる手前の香りです。そして、もっと細かい泡が出てきますよ。
石川:本当だ。香りってこんなふうに変化するんですね! そして、ニンニクが透きとおってきました。
坂本:いい感じですね。フライパンを軽く揺らし、内側についているニンニクなどをこそげとりながら、均一に火が通るように、ゴムベラでしっかりかき混ぜます。
「乳化」がポイント。オイルと水分が渾然一体になっていく
坂本:では、ツナを入れましょう。火加減は鍋底に当たるくらいの中火にします。ツナがなじんだらおたま一杯分、パスタを茹でる用のお湯を入れると、オイルと混ざり合って「乳化」していきます。
石川:お、前回教えてもらった「飲んでおいしい濃さ」のお湯ですね。
坂本:本来はパスタの茹で汁を使いますが、茹でる前のお湯でも問題ありません。ここからオイルと水分を混ぜて「乳化」していきます。
石川:ちょっと待ってください。「乳化」ってなんですか?
坂本:油分と水分が混ざって乳白色になり、とろみがつくことです。乳化させることによってパスタがソースにからみやすくなり、さまざまな味が調和して、うまみを感じやすくなります。油だけだとギトギトしてしまいますからね。ちょっとここで味見してみてください。
石川:はい。あ、これだけで、もうおいしい。油分がうまみになっている気がします。後からジワっと辛味も感じられますね。このまま、味付けはしないんですか?
坂本:塩を加えてもいいですが、油分と水分の乳化のバランスを見ながら茹で汁で塩味を調整していきます。塩の味を重ねていくイメージです。このために、濃すぎない茹で汁にしたんです。水っぽくなったら煮詰めて、とろみがつくまで加熱します。
石川:味が濃くなりすぎちゃったら、どうすればいいですか?
坂本:濃くなりすぎないように少しずつ茹で汁で塩味を加えていくのですが、ちょっと濃いなと思ったら、普通の水を加えていきます。でも、ある程度煮詰める必要があるので、また味が濃くなってしまうことも。なので、好みの味になるまで、少しずつ塩味を加えていくのが一番のポイントです。その後、アスパラを加えてツナのうまみを移していきます。
石川:ソースはどれくらい煮詰める感じですか?
坂本:今日使っているこの26cmのフライパンで、ゴムベラでソースをかき混ぜると鍋底がちょっと見えるくらいですかね。
石川:なるほど。これでソースができたわけですね。
指示時間の「ー1分」で茹でる
坂本:では、パスタを茹でましょうか。
石川:パスタを入れるときに気をつけることはありますか?
坂本:グラグラと湧いているたっぷりのお湯(すでに塩は入れている)に入れること、均等に火を通すためにパスタをバラけさせて、できるだけ早くお湯に沈めていくことですね。
石川:長いパスタを鍋におさめるのに時間かかっちゃいます。初心者はちょっと苦労するかも。
坂本:パスタが折れないように、バラけさせながら優しくやってみてください。そして、最初はパスタ同士がくっつかないように混ぜます。ある程度お湯の中でパスタがバラけるまで様子を見てください。
石川:茹で時間は、パッケージの指示時間で大丈夫ですか?
坂本:指示された時間の「ー1分」を目安に茹でます。
石川:そうなんですか!それはなぜですか。
坂本:ソースをからめるときも加熱されるのと、ソースのうまみもパスタに吸わせたいからなんです。ソースとからめて完成したときにちょうどいい茹で加減になりますよ。
石川:なるほど! いつもパッケージの指示通りの時間で茹でてました。
坂本:あるいは、自分で「茹で上がり」の目安も見極められます。こうやって箸でパスタを1本あげてみると、パスタのしなり具合が分かりますよね。パスタは外から水分が入っていきます。まだ芯が硬いと箸に引っかからない。ある程度のハリがある状態で箸ですくえる状態が茹で上がりですね。
石川:パスタの状態で茹で上がりを見極めるのは、なかなかの上級者! でも、パスタの状態をちゃんと見ておくのは大事ですね。
「焼きそば」になっていない? パスタは「からめる」もの。
石川:パスタも茹で上がって、ソースに絡めるだけですね! もう、完成したも同然!
坂本:ここでのコツもありますよ。最後まで気を抜かないように!
石川:そうなんですか? もう、混ぜるだけじゃ?
坂本:ここで大切なのは、パスタを「焼かない」こと。パスタはソースを「からめる」のですが、焼いてしまって「焼きそば」になっている人、結構いるんです。
石川:は! 私が作ったとき、パスタをフライパンに移すと、ジュ!って音がしてました。それって……。
坂本:焼いちゃってますね(笑)。パスタを焼かないためにも、また、ソースをしっかり絡めるためにも、ソースは油分と水分のバランスが取れた「乳化」状態が大切なんですよ。
フライパンの火加減は中火にしてパスタを素早く入れます。強火で高速で混ぜるとより乳化していくのですが、作り慣れていない人だとそこで「焼き」状態になりやすいので中火でいいですよ。
石川さん:なるほど。パスタを「焼かない」。これは目からウロコです。
坂本さん:最後にオリーブオイル大さじ1程度(分量外)を回しかけて仕上げます。バターでもいいですよ。パルメザンチーズやレモンを加えてもまた違った風味になりますね。
石川さん:そんなアレンジもできるんですね。今、ソースはどんな状態になってます?
坂本さん:仕上げたときにまだ汁が残っている、こんな感じの状態ですね。
最後にトングで盛り付けします。トングでパスタを持って皿の上でくるっと回すと高く盛れて、見た目も良し、です。
石川:これこれ〜。お店っぽい〜。
坂本:具材をパスタの上に乗せて、お好みでコショウを振れば、出来上がりです!
石川:早速、味見します!
うわ、おいしい! まろやかでうまみもすごく感じます。塩味が尖っていなくてちょうどいいです。お店の味のよう。これが、自分でできるんですね。
坂本:はい、ぜひ、自分で試してみてくださいね。
アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ 「どこよりも細かい」レシピ
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どこよりも細かいレシピポイント
「ペペロンチーノ」の正式名称は、「アーリオ(にんにく)・オーリオ(オリーブ油)・エ・ペペロンチーノ(タカノツメ)」
<下準備>
1)パスタの分量を計る
どこよりも細かいレシピポイント
・初心者はちょっと太くて断面が楕円状になっているリングイネがおすすめ。スパゲッティよりも伸びにくく、ソースのなじみもいい。
2)ニンニクをみじん切りにして、オイルにつけておく
どこよりも細かいレシピポイント
・ニンニクのみじん切りは玉ねぎのように、端を残して縦に筋を入れ、その切れ目と垂直に包丁を入れて刻むと大きさが揃う。大きさを揃えることで火の通り方が均一になり、焦げにくい。
・ニンニクを潰して使うと香りが良い。刻むとニンニクらしさを味わえるのでさらにパンチが効いた味になる。
・ニンニクは酸化しやすいので、刻んで放置せずオイルにつけておく。
3)タカノツメのタネを取り、0.3cm幅の輪切りにする
4)アスパラの根本の皮をピーラーでむき、1cm幅の斜め切りにする
どこよりも細かいレシピポイント
・アスパラ以外でも、ブロッコリーやズッキーニなど、旬の野菜を入れるとGood!
5)ツナ缶のオイルを切って出しておく
どこよりも細かいレシピポイント
・ツナはうまみがあり、どんな食材とも相性がいい。常備しやすさもGood!
<作り方>
1)お湯を沸かして塩を入れる
どこよりも細かいレシピポイント
・作り慣れていない人はソースを作り終わってからパスタを茹でる方がおすすめ。慣れてきたらパスタを茹でている間にソースを作る。
・パスタの塩はイタリアやフランスなどのヨーロッパの塩がおすすめ。日本の塩より「にがり」成分が少ないため。
・茹で汁の塩の濃さは、飲んでみて「おいしい」と感じる濃度がBest。
・茹で汁を飲んでみておいしいと感じられる塩分濃度にしておくと、ソースにも良い加減の塩味をつけられる。塩分濃度が濃すぎると、あとで味の調整ができない。その他、塩にグルテンが反応することでパスタにコシを出す目的も。
2)オイル、ニンニク、ツナ、アスパラでペペロンチーノソースを作る
どこよりも細かいレシピポイント
・フライパンにニンニク、オリーブ油、タカノツメを先に入れてから火をつけます。フライパンを熱してからでなくて大丈夫。
・フライパンの底に火がちょっと触れるくらいの弱火にすることで、ニンニクを焦がさずに香りを移す。焦げると苦味が出てしまうのでNG。
・だんだん香ばしい香りになり、細かい泡が出てきて、ニンニクが透きとおってくることを五感を通して感じとる。
・道具はゴムベラがおすすめ。フライパンの内側についているニンニクなどをこそげとりながらしっかりかき混ぜる。
・茹で汁を入れると水分とオイルが混ざり合って乳化する。乳化とは、油分と水分が混ざってとろみがつくこと。パスタがソースにからみやすくなり、さまざまな味を調和して、うまみを感じやすくなる。
・茹で汁を入れることで、塩の味を重ねていくイメージで調整する。
・塩味が濃くなりすぎないように少しずつ茹で汁を加える。ゴムベラでソースをかき混ぜると鍋底がちょっと見えるくらいまで煮詰めて、とろみをつける。
・塩味が濃いと感じたら普通の水を加える、水っぽければさらに煮詰めることで、ちょうど良い塩味ととろみに調整する。
3)パスタを茹でる
どこよりも細かいレシピポイント
・グラグラと湧いているお湯(すでに塩は入れている)に入れる。
・均等に火を通すためにパスタをバラけさせて、できるだけ早くお湯に沈める。最初はパスタ同士がくっつかないように混ぜる。
・茹で時間は、パッケージの指示時間の「ー1分」。ソースとからめて完成したときにちょうどいい茹で加減に。
4)パスタとソースを合わせる
どこよりも細かいレシピポイント
・パスタを「焼かない」。ソースを「からめる」。
・最後にオリーブ油やバターを回しかけて風味を増す。パルメザンチーズやレモンを加えても違った風味に。
5)皿に盛り付ける
どこよりも細かいレシピポイント
・パスタを先に皿に盛り、フライパンに残った具とソースを上に載せるように盛り付ける。
・お皿の中央に、高さを出すように盛り付ける。
・トングでパスタを持って皿の上でくるっと回すと高く盛れて、見た目も良し。
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「どこよりも細かいレシピ」。今後も、「店で食べるとおいしいのに、家で作るとなんか違う・・・」となりがちなメニューを取り上げていきます。次回は、白身魚のポアレ(ソテー)。お店で食べるとフワっとおいしい魚料理。家でも再現できちゃいます。乞うご期待!