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Food Future Session
2022.06.02. | 

[Vol.1]街づくりの視点から生まれた、パーソナルトレーナーの課題解決【stadiums × Mo:take】

「Food Future Session」という壮大なタイトルで展開する、×Mo:takeの座談会。今回は、トレーニングが提供できる場所を探しているトレーナーと、空き時間を手間なく貸したいジムオーナーをつなぐプラットフォーム「THE PERSON」を運営しているstadiums株式会社の 大石裕明(おおいし・ひろあき)さん、藤井翔太(ふじい・しょうた)さんとの座談会です。

Vol.1ではトレーナーとジムにスポットを当てた事業の始まりから紐解いていただきました。

THE PERSONは、「場所がない」という
トレーナーの課題を解決するために生まれた

 

小野:まずは、お2人がstadiumsで展開していることをお聞かせください。

 

大石さん:「ひとりの人を健康でより良くする」ことを掲げ、健康に特化したサービスを行っています。
軸にしているのは、パーソナルトレーナーやかかりつけトレーナーが世の中で当たり前の存在になり、運動することが日常となるためにはどうしたらいいか、という点です。「ジムスペースをシェアリングしてトレーナーに貸す」「ユーザーとマッチングしてトレーニングを提供する」「トレーニングアイテムを作ってさまざまな場所をジムにし、トレーナーが介在することで多くの人に活用される可能性を探す」という3つの事業を展開しています。

メインのシェアリング事業は、「トレーニングを提供する場所がない」というトレーナーの課題を解決するサービスとしてスタートしました。1時間から借りられるレンタルジムを紹介しているのですが、現在は登録ジム数1,100店舗、登録トレーナー数4,000名のサービスに成長しました。

 

小野:1,100もの登録ジムがシェアリングを受け入れていることに驚きました。そもそもどんな経緯でジムのシェアリング事業を始めたのでしょうか?

 

大石さん:実は、大きなテーマはまちづくりなんです。まちづくりについてずっと考えてきた中で、市民一人ひとりが自分がいいと思っているものを提供することで社会が良くなるのがベストではないかと。

たまたま僕たちは、東京体育館や国立競技場というスポーツの聖地がたくさんある千駄ヶ谷にいたので、まちづくりのコンセプトを「100年スポーツの街」と掲げたんです。

 

“健康と不健康の間”にトレーナーを

 

藤井さん:そこに集まったいろいろな相談の中で注目したのが、トレーナーの抱える課題でした。サッカー元日本代表のトレーナーをしていたような実力のある方でも、「トレーナーでは食べていけない」という悩みを抱えていたんです。

トレーナーはフリーランスで指導しようと思うと場所が必要になります。でも、ジムを作るとなると数百万円の投資が必要で、独立へのハードルが高いのが現実です。かといって、お客さまに民間のジムに加入してもらうと、4〜5割のマージンをジムにとられます。一方で東京体育館のような公共のジムでは指導行為は禁止されています。

こういった理由から、「トレーニングを提供する場所がない」というトレーナーの課題を解決するためにシェアリングジムを作ったのが、事業スタートのきっかけでした。

 

大石さん:最初はまちの機能としてシェアリングジムを始めたのですが、やればやるほどトレーナーの価値を考えるようになりました。というのも、私たちは健康な時は普通に生活をしていて、具合が悪くなったら医者に行き、治ったらまたもとの生活に戻るという風に、健康と不健康の間を行き来しています。そして、健康と不健康の間では、テレビやネットの情報に安易に流されてダイエットをしたりしているんですよね。

自分自身で判断して生きている人が少ないんだ、と思った時に、トレーナーさんが健康と不健康の間のパートナーになれたら、彼らの地位も上がり、私たちの生活も良くなるんじゃないか、と思ったんです。そして今、少しずつ「ここにトレーナーがいればいいのに」というタイミングで声がかかるようになってきました。

 

困りごと同士をくっつけたら
新しいサービスが生まれた

 

小野:目指すところが明確でわかりやすいです。空間をシェアするという意味ではYuinchuのレンタルスペース事業と共通していますが、Yuinchuの場合は、空間の用途は自由にしてもらうことを大事にしています。stadiumsさんは逆に用途を絞っているところに面白さを感じます。

レンタルスペースの場合、会議に適しているのか撮影に向いているのか、ユーザーの利用目的を喚起するのが難しいんです。でもstadiumsさんの場合は大きな切り口がまちづくりにあり、健康をテーマにしたら、そこにトレーナーの課題があることに気がついたと。それを聞いて、Yuinchuの事業ももっとユーザーの課題を深掘りできるなと思いました。

それにしても「まちづくり」から「シェアリングジム」への絞り込みがすごいですね。驚きました。

 

藤井さん:具体的な事業へと絞っていく部分は、大石がかなり助けてくれました。「シェアリングのプラットフォームにすべき」と言ったのも大石なんです。絞った結果、自分たちが果たすべき役割がたくさん出てきて、結果的に街や地域を視野に入れやすくなったと思います。

 

大石さん:あらゆる立場のトレーナーさんの悩みに耳を傾けている延長線上で気づいたんですが、やっとのことで独立した後のステージでは、初期費用、固定費、集客と、さらに深い悩みを持たれてる方も多くいらっしゃいます。そこから、独立した方たちにレンタルジムとして使ってもらえたら嬉しいし、一方で、独立開業のリスクを負わなくてもジムを使えるなら最高!と思っているトレーナーがいることもわかったので、困りごとをすべてをくっつけてしまえばいいや、と思ったんです。

 

次回は6/7(火)に公開予定です。互いの事業で感じている課題を共有し合いながら、健康の定義や健康にいい食事について話が展開していきます。(つづく)

 

– Information –
■stadiums株式会社
https://www.stadiums.co.jp/
■THE PERSON
https://www.the-person.com/
■7-9PARK
https://www.79park.jp/

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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