SERIES
Food Future Session
2022.06.07. | 

[Vol.2]健康とは身体的、精神的だけでなく、社会的にも健康であること【stadiums × Mo:take】

「Food Future Session」という壮大なタイトルで展開する、×Mo:takeの座談会。今回は、トレーニングができる場所を探しているトレーナーと、手間なく貸したいジムオーナーをつなぐプラットフォーム「THE PERSON」を運営しているstadiums株式会社の 大石裕明(おおいし・ひろあき)さん、藤井翔太(ふじい・しょうた)さんと、Mo:takeの小野正視の座談会です。お互いの課題を共有し合いながら、健康の定義や健康にいい食事について、話が展開していきました。

料理人とトレーナー
シェアリングで直面するそれぞれの課題

小野:実は料理人もトレーナーと同じような課題を抱えています。独立して店を持ち、成功する人はそんなに多くはないですし、美味しい料理を作って待っているだけではお客さんはなかなか来ません。一時、シェア店舗が流行りましたが、料理人がトレーナーさんと違うのは、単価が低いことです。

 

藤井さん:確かにそういう面がありそうですね。トレーナーは、例えば4名のパーソナルトレーナーがいた時に、ユーザーからするとその人の強みやスキルが自分にとって合うかどうかの判断がつきにくいことも課題です。また、自分にとっていいトレーナーが、他の人にとっていいトレーナーであるとも限らないんですよね。人が人に提供するサービスなので、合う、合わないがあるんです。

食であれば、人間性が合わなかったとしても美味しければそれで納得してもらえる可能性があると思うのですが、トレーナーはなかなかそうはいかない現実があります。

 

小野:食は、売れている人と売れていない人の差が大きいのですが、トレーナーさんはどうですか?

 

大石さん:食ほど大きくないかもしれないですが、やはり、ものすごく売れている方もいらっしゃいます。トレーナーの場合は、10人程度の固定のお客さんがいれば、食べていける程度に稼いでいらっしゃるケースが一般的です。

特に、長くトレーニングを続けてくれる顧客をつかむことができたら、とても大きいですね。なぜならその顧客は、トレーナーの元を離れたら、自分のことや体の経歴を理解してくれている人を一から探さなければなりません。だから、なるべく固定のトレーナーにお願いしたいと思うはずなんです。

そういう意味では、病院や美容室と同じでリピート性が高いものではありますね。ものすごく伸びるのは難しいけれど、最低限のところは保てている人が多いかもしれないです。

 

“健康にいい食事”は
ベストオブベストを決めにくい

藤井さん:トレーナーとしてものすごく業績を伸ばそうと思ったら、自分で指導するだけでは限界があるかもしれないな、とは思います。

 

小野:それは経営者になるということですか?

 

藤井さん:それもありますし、職人的な価値から健康を広める事業を展開していける可能性があると思っています。プロデュースをしたり、プロダクトをつくったり、いろいろなことに挑戦できるようになるといいなと思っていて。

 

小野:そこは食の世界も同じかもしれないですね。

僕らがMo:take MAGAZINEを続けている理由は、食材の生産者や料理人のパーソナルな情報を発信できる場所が少ないからなんです。

僕は食や料理に対して興味がありますし、こんな生産者や料理人のことを知って欲しいといった着眼点を持っていると自負しています。でも、すべての人がそうではないので、多くの人が見聞きしてくれないことがほとんどです。だからこそ、食に対する想いや独自の考えを持っている人たちが情報発信できる場所を作り続けていけば、いずれ注目される日がくるんじゃないか、そう思ってずっと続けているんです。

 

藤井さん:面白いですね。食の話は僕たちも結構関わりがあって、人を健康にしようと思うとトレーニングだけでは無理で、食事もとても大事だと考えています。総合栄養食品を開発するスタートアップの方と協働したこともあります。そのうえで難しいと思うのは、健康になるための食べ物には明確な正解がなく、正義と正義のぶつかりあいになってしまうことがあるんです。要は、糖質制限がいいという人もいれば、ヴィーガンを推す方もいるということ。ベストオブベストを決めにくいんですよね。

トレーナーさんがいいと思った理論の人と組み、栄養について教えてもらえるようなことができたらいいなと思っているんですが、まだ正解を見つけられていないですね。

 

4人でトレーナーの1時間をシェア
新たな枠組みから見えてきたもの

大石さん:最近僕たちの取り組みで人気があるのが、グループでのパーソナルトレーニングです。要は、4人でトレーナーの1時間をシェアするんです。そうすると、参加費は4分の1になり、3,000円ぐらいになるんです。さらに、一人で続けるのは難しいけれど、友達がいるから続けられるんです。

週一のトレーニングが終わった後、みんなでご飯を食べにいくグループが多いようです。「しっかり運動したから」という、ある種の免罪符を手にするためのトレーニングをして、その後の食事を罪悪感なく楽しむことができるんですよね。そのうち、トレーニングを継続しないと気持ち悪くなってきて、結果的に運動が習慣になるところが人気ですね。

男性、女性、それぞれのニーズに合ったトレーニングをしてくれるのも人気の秘密ですが、それも個室のレンタルジムだから成り立っています。個室をシェアリングするという強みと、トレーナーがいるという強みを掛け合わせて生まれたサービスですが、最近、とても需要がありますね。

 

小野:パーソナルトレーニングだと、だんだん億劫になってしまうことがありますよね。一対一で過ごすので、気も遣いますし。だからこそ、グループトレーニングはすごくいいなと思いました。

 

藤井さん:もちろん、パーソナルトレーニングはすごくいいものですが、健康にいいだけでは継続が難しくて。

僕たちはたびたび、「健康って、結局なんだろう?」と話します。WHO(世界保健機関/World Health Organization)は、「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあること」と定義しています。グループでのトレーニングを見ていると、肉体、精神、そして社会の三つの軸の重要性を感じますね。

 

大石さん:僕たちは、お客様に対して、僕たちのサービスを利用してどういう存在になってほしいか、どういうことを実現してほしいかを、ウェルネスパーソンという言葉に定義付けをして社内用語として運用してます。一つは、週一でもいいので運動習慣を持っている人。もう一つは、それを友達に発信して、運動の場に連れてきてくれる人です。ウェルネスパーソンは、「私、運動でいろんなことが変わったから、あなたもおいでよ。楽しいよ」と友達を誘い、連れてきてくれるんですよね。トレーナーではないけれど、いろんな人を健康にしているわけです。これってすごいことだなあと思います。

 

小野:トレーナーとユーザーといった強固な垣根がなくなって、一緒に盛り上がっている仲間同志という感じがいいですね。

 

次回は6/9(木)に公開予定です。
stadiums が環境省と一緒に取り組んでいるプロジェクトや、トレーラーハウスを使ったジムの話題から、×Mo:takeでできることについて、可能性と夢が膨らんでいきます。(つづく)

 

– Information –
■stadiums株式会社
https://www.stadiums.co.jp/
■THE PERSON
https://www.the-person.com/
■7-9PARK
https://www.79park.jp/

 

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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