2021.06.22. | 

[Vol.3]想像を超えていくために。枠におさまらないアイディアをどう増やして、形にする? 「梅香亭」長沼輪多×「Mo:take」ヘッドシェフ坂本英文

「梅香亭」3代目の長沼輪多(ながぬま・りんた)さんと「Mo:take」ヘッドシェフの坂本英文(さかもと・ひでふみ)、コラボレーションによる商品開発で出会った2人が、お互いに対する印象や、それぞれが大切にしてきたこと、更に、今後一緒にやろうとしていることを語り合いました。

創り続けたいからこそ
新しい技術を入れていく

坂本:輪多くんって、伝統的な和菓子の世界に新しいものを取り入れていく人だと思っていて。たとえばさっき見せてもらった木型がそうだよね。

 

長沼さん:そうですね。あの木型は、3Dプリンターを使ってつくりました。
和菓子の木型には木型師という専門の職人さんがいて、通常はその方たちにオーダーしてつくっていただくのですが、今、その木型師さんが減ってきているんです。その流れは、おそらくもう止められません。

でも、3Dプリンタという新しい技術を使えば、少しでもカバーできます。これまでにないデザインのものも自由につくれますしね。
木型の元になる部分は、造形作家さんにつくっていただいています。動物の造形作家さんとコラボしたカバの形の落雁をつくったりと、新しい動きにもつながっています。

 

坂本さん:和菓子業界のテック化ですよね。必要性もあるし、そこから新しい可能性も出てくる。

 

長沼さん:和菓子づくりは手作業が多い分、身体を酷使します。それは小さい頃から見てきて、課題だと思っている部分です。3Dプリンタに限らず、新しい技術を取り入れながら負担を減らしていきたいです。

もちろん、機械では限界を感じるところもあるんです。人の手作業による細やかな線や形を機械で再現するのはまだまだ難しくて。木型一つとってみても、人間が彫った線は生き生きとしているんですよね。だから、両方ですね。昔からあるものを大切にしつつ、新しいものを入れていく。

 

 

 

イメージを超える引き出しの作り方

坂本:輪多くんは、商品開発の時にどこから始めますか?僕は、最初に完成形をイメージしてから、実現のために必要なプロセスを考えていくことが多いんだけれども。

 

長沼さん:僕も完成形を先にイメージしてから始めるタイプですね。でも、素材を触って作っていくうちに、思いついたことを取り入れることもよくあります。

 

坂本:わかるなあ。それは僕もあります。結果的に、想像以上のものが完成したりするのが面白いんだよね。

 

長沼さん:想像以上のものを創るためには和菓子の知識を蓄積していくことが大事だなといつも思っています。
それでいうと、坂本さんって本当に引き出しが多いですよね。いつもいろいろなアイディアを形にしていらっしゃるけれど、その奥にはたくさんの知識や体験があるんだろうな、と。

 

坂本:僕はあえて勉強しようとか、知識を増やそうと思っているわけではないんです。というよりは、ただ単に料理が好きなんですよね。

 

長沼さん:ああ、それは一番いい形ですね。

 

坂本:料理をベースに人に楽しんでもらうことに一番の興味があるから、何をやってもそこにつながっていくんです。いろいろなところへ行ったり、見たり食べたりした体験が自然と蓄積されているんだと思います。そのためのアンテナは常に張りめぐらしているとは思うけれども。

 

長沼さん:とても自然で嘘がないですよね。そういう姿勢って、食べてもらうお客さまにも伝わっているんだろうな。坂本さんが感じた感動が、料理を通して、食べてもらう人とも自然と共有されていってるんだと思います。

 

 

 

自分の足で歩いて
四季に対する感覚を磨く

坂本:輪多くんはどうですか。技術やアイディアの引き出しを増やすために、どんなポイントにアンテナを張っているんだろう。

 

長沼さん:伝統はもちろん大事にしつつですが、今お客さまに求められている和菓子をつくるためのことは、常々考えています。甘さや食感の好みは時代によって大きく異なります。そういう時代の流れには敏感でいたいと思います。たとえば羊かんは、サイズが変わるだけで、そこに凝縮された味の質も変わってきます。サイズに合った味を考えてつくり、また素材をどう配合すればお客様に喜んでいただけるか。工夫のしがいがあります。

 

坂本:意識的にインプットしていることはありますか。

 

長沼さん:和菓子は視覚的なものを重視しているので、視覚的なインプットは意識しています。これは、和菓子特有かもしれませんね。

「東雲(しののめ)」という、東の空が次第に明るんでくる様子をかたどった和菓子があります。その空の様子をつかまえたくて、早朝に外に出てみたこともあります。
和菓子は日本の自然と密接に関わっていますから、インプットの素材は身近にたくさんあります。カメラを持って散歩に出かけて、草木や空を撮影したりも、よくしています。

 

 

 

和菓子だけど和菓子じゃない!?
新しい世界観をふたりで開拓中

昨年11月から、長沼さんは「Mo:take」のフードクリエイターとしても活動を始めました。さて、坂本と一緒に、これからどんなアイディアを世に送り出してくれるのでしょうか。

 

長沼さん:坂本さんはいつも僕にワクワクするアイディアや機会を提供してくださるので、いつも楽しみなんです。僕には思いつかないことばかりで、今度はどんな企画が実現できるのかなと。

 

坂本:実は今、一緒に開発を進めているものがあります。それをどのタイミングでどう出すか、考えていて楽しいですね。
僕ができることと輪多くんができること、その両軸で、お互い刺激し合えることができると思っています。
たとえば、作り方は和菓子なんだけれども完成形は和菓子じゃないような、新しい和菓子のジャンルを創り出したいですね。そういった世界観が輪多くんとだったらできると思っていて。ぜひ実現したいなと思っています。

 

長沼さん:それは面白そうですね!ぜひ一緒に創りましょう。

 

– Information –

梅香亭
https://www.instagram.com/baikatei1958/

ライター / たかなし まき

愛媛県出身。業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。人の話を聴いて、文章にする仕事のおもしろみ、責任を感じながら活動中。散歩から旅、仕事、料理までいろいろな世界で新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。