2021.03.02. | 

[Vol.1]野菜で「楽しい」が広がる場を増やしたい 農家 島崎保夫さん

農業をしながら、不動産賃貸管理業も営む島崎保夫さん。数年前までは、アパレルショップやキャラクター雑貨のお店でビジネス経験を積んでいたというユニークな経歴の持ち主です。そんな島崎さんが昨年、Mo:takeや仲間たちとマルシェを開催しました。あっという間にオリジナル商品が売り切れたというこのマルシェについて、また島崎さんのこれまでと今についてお聞きしました。

お弁当、パン、和菓子。
野菜づくしのマルシェが大盛況

島崎さんの「アグリタリオのプチマルシェ」が開催されたのは、2020年11月29日。とてもよく晴れたこの日、会場となった地元で人気のケーキ屋「パティスリーイチリン国立店」の前に、たくさんの人が集まりました。いつもは静かなこの住宅街が、一瞬で華やかな空間になりました。

 

マルシェに並んだのは、キャベツやブロッコリーなど島崎さんが営む島崎農園のブランド「アグリタリオ」の野菜、そして国分寺の農家さんの野菜たち。さらに、Mo:takeがプロデュースした「島崎農園BENTO」。「アグリタリオ」の野菜をふんだんに使ったお弁当です。「アグリタリオ」のニンジンやほうれん草などの色合いを活かした「L’ESPRIT」のパン、生産地にこだわった和菓子が人気の「梅香亭」は「アグリタリオ」の柿を使った和菓子を販売、また府中からはファンの多いコーヒーショップ「FLAT STAND」が特別にやってきました。

 

島崎さん:初めてマルシェを開いたのは7月です。Mo:takeの坂本さんとお弁当と野菜の販売を行ったのですが、70個くらい用意していたお弁当が1時間半で売り切れました。販売前からあれよあれよと行列ができて、予定よりも30分早く売り始めたんですよ。野菜もたくさん売れて、とても好調でした。それがあっての2回目だったので、地元の方からの期待も大きいと思いました。

前回やった野菜とお弁当に加え、今回は坂本さんと「梅香亭」の長沼さんにオリジナルの柿の和菓子を開発していただいたり、「FLAT STAND」を呼んでいただきました。1回目を超える好評ぶりで、お弁当はもちろん、僕の幼馴染のベーカリーのパンも100個用意していたのがすぐに売り切れ。柿の和菓子もあっという間になくなっていました。地元の人がたくさん集まってくれて、楽しんでくれたようでうれしかったですね。

 

 

アパレル店などの店長を経て、
家業の農業と不動産業を両立。
お店と関わりたくてしかたない

このマルシェをしかけた島崎さんは、農家の息子として国分寺市で生まれました。小学生の頃から農業を手伝っていたそうですが、学校を卒業後はアパレル系のお店などで働き店長としても活躍。20年ほどビジネスの世界に身を置き、不動産業に10年以上携わっている経験は、農業を営む今もしっかりと活きているそうです。

 

島崎さん:うちは300年くらい続く農家なんです。昔は、桑や「おかぼ」と呼ばれる稲を育てていたみたいですね。野菜を作り始めたのは明治時代の終わりくらい。今はキャベツやブロッコリー、大根などいろいろな野菜を作っています。それともう一つ、地元や都心を中心に不動産業もやっています。

サラリーマンの後、家業のもう一つの不動産業をやっていましたが、父親が病気で倒れたのをきっかけに2年くらい前から少しずつ農業に関わり始めました。ただ、農家になってもやっぱりお店が好きなんですよね。だから、ビルのオーナーなんだけれどもテナントさんのことが気になってしかたない。

オーナーとしてビルを貸す以上の関わりをもちたくなるし、一緒に何かやる想像がふくらむし、アイデアを実践したくなるんです。テナントさんにはそれぞれのストーリーがあります。オーナーとテナントの関係を超えて、街のお店のストーリーがつながりあっていくといいなと思っています。

 

 

「うちもお店を出したい」
マルシェは事業者の心も動かした

お店が大好きという島崎さん、今回のマルシェでも野菜やお弁当、コーヒー、パン、オリジナルの和菓子とジャンルを超えてお店をつなぎ、お客さんたちにそこでしか体験できない場を提供しました。さて、そもそもこの場をつくったきっかけは何だったのでしょうか?

 

島崎さん:「アグリタリオ」の野菜を使った料理をお客さんに出すことに魅力を感じていたんです。でもどうすればできるかわからないし、僕は料理もできない。フードトラックに興味を持っていたところで、たまたまSNSで坂本さんのフードトラックの投稿を見たんですね。すぐに「やりたい!もしかしたら来てくれるかも!?」とオファーしたんです。そうしたらすぐに来てくれて。2週間後には、1回目のマルシェが開催できました。とにかくお弁当の行列がとぎれなかったから、坂本さんはフードトラックでずっと料理を作り続けてくれていましたね。

 

販売したのが野菜とお弁当だけにもかかわらず、たくさんの人でにぎわった1回目のマルシェ。そして大盛況に終わった2回目。島崎さんはこのイベントの成功で気づいたことがあったそうです。

 

島崎さん:お客さんがたくさん来てくれたことはもちろんうれしかったのですが、事業者さんからも興味を持ってもらえたのは新しい発見でした。国立市の商店街の人が「そんなにすごかったの?」と驚いてくれたり、「うちもお店を出したい」って言ってくれたりしたんですよ。いろいろなお店とつながること、今回は府中から「FLAT STAND」が来てくれるなど新しい出会いがあることで何が起きるかわからない展開も楽しめる。今回のマルシェでは何か1つでも新しいお店が増えればいいなと思っていたのに、坂本さんは3つもお店を提案してくれて。あの場でしか体験できない、地域のおもしろさが発信できてワクワクしました。

 

次回は3/9(火)に公開予定です。
野菜を通して人が楽しめる場をつくりたいという島崎さんの想いと、坂本とのコラボレーションについてお聞きします。

– Information –
島崎農園アグリタリオ
Facebook: https://www.facebook.com/agritario/

ライター / たかなし まき

愛媛県出身。業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。人の話を聴いて、文章にする仕事のおもしろみ、責任を感じながら活動中。散歩から旅、仕事、料理までいろいろな世界で新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。

Mo:take MAGAZINE > [Vol.1]野菜で「楽しい」が広がる場を増やしたい 農家 島崎保夫さん