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食を起点としたコト起こしの舞台裏
2023.02.02. | 

[Vol.1]方法はいろいろあっていい。一番身近な「食」の大切さを伝えたい。 食卓写真家/オンラインスクールHarmo 丹下恵実さん

今、食に関する職業を目指す若者を中心に話題を呼んでいるオンラインスクールがあるのをご存知ですか。オンラインスクール「Harmo」は、栄養士を目指す学生さんや、現役の栄養士、管理栄養士さんが全国から参加し、栄養学に限らず、食物生産、食の持続可能性、マクロビオティックなど、食のさまざまな側面について日々学んでいます。

Harmoを立ち上げた丹下恵実さんもまた、管理栄養士の資格を持ち、自らのキャリアを切り開いていった一人です。「食卓写真家」として食関連の撮影を行うプロカメラマンでもある丹下さん。カメラマンとしての道を歩みながら仲間と共にスクールを立ち上げたその背景には、栄養士という職業への思いや、自身のさまざまな試行錯誤がありました。

「学校で勉強する以外のことを学びたい」全国から200人が参加するオンラインスクール

柔らかな笑顔とともにインタビュー場所のSWITCH STAND ODAIBAに現れた丹下恵実さん。「オンラインスクールの経営者」と聞いて想像していた力強いイメージとは違う、優しい雰囲気の女性です。さっそくオンラインスクールHarmoについて伺いました。

−−Harmoには、現在200名が参加し、学んでいるとのこと。どんな人たちが学んでいるのでしょうか。

丹下さん:学生さんが約140名、社会人が60名ぐらいですね。オンラインで始まったこともあり、北海道から沖縄まで、本当に全国です。年齢層は19歳から25歳ぐらいがメインですね。

一番多いのは栄養士を養成する専門学校の学生さんです。学校で勉強する以外のことを学びたいと入って来る方が多いです。学校では栄養学を勉強しているけど、じつはデザインにも興味がありますとか、将来はカフェをやりたいっていう方々もいます。

 

−−スクールを開こうと思った理由は?

丹下さん:専門学校や大学で栄養学を学ぶ人たちの多くは「食」そのものに興味をもっています。でも学校で学ぶのは、栄養学の知識が中心です。「栄養満点のおいしいご飯をつくれるようになりたい」という思いで入学したのに、学校でやるのは栄養価の計算や病気に関するものばかり。ギャップに悩むんですよね。そのギャップを埋めたいと思いました。

最初はコミュニティにしようと思ってたんですが、メインの対象は学生さんなのでスクール形式にしたほうが、親御さんの安心も得られるかなと思って。ですから、一方的に教えるような形ではなく、体験を通して仲間と学ぶことを重視しています。

 

−−スクールというと、やっぱり入学試験があるんですか?

丹下さん:試験はありませんが、スクールに入る時には、私が全員面談しています。入学許可とまではいかないですけど、どうして管理栄養学科を選んだのか、何に興味があるのかをある程度把握していたいので、面談で話を聞かせてもらっています。

 

人にとって一番身近な「食」。学んだ知識で、家族や身近な人を健康にしたい

−−丹下さんも、管理栄養士の資格を大学で取得したと伺いました。やっぱり食べることが好きだったんですか?

丹下さん:実は、「食べるの大好き!」とか、食にすごく興味がある、ということでもなかったんですよ(笑)。せっかく大学に行くなら、一生使える知識を学びたいという気持ちが先にありました。そう考えた時、人にとって一番身近なのは「食」ではないかと。学んだ知識で家族や身近な人を健康にできると嬉しいな、と思って栄養学科を選びました。

 

−−管理栄養士というと、病院や保育園、幼稚園、民間企業などさまざまな職場をイメージします。どんな風に働こうと思っていましたか。

丹下さん:実は、卒業後の進路はあまり意識していませんでした。管理栄養士は食を通して健康を追求する職業ですから、学校では栄養価の計算や病気の知識を中心に学びます。学んでいるうちに「健康」について広く考え始めて、病気になる前の予防が大事ではないかと思うようになりました。食品添加物やヴィーガン料理についても興味が湧いて、在学中に独学で学びました。

国家資格である管理栄養士の資格は取りましたが、体に優しいご飯を作れたらいいなという思いがあって、卒業後はカフェに就職しました。

 

−−管理栄養士という肩書きからはいったん離れたんですね。カフェでのお仕事はいかがでしたか。

丹下さん:カフェの仕事は、毎日朝5時に家を出て12時間以上働くという想像以上の激務で。体力的にも精神的にも苦しくなって数ヶ月で辞めたんです。

私だけでなく、調理の仕事をする人は、長時間立ちっぱなしの水仕事で、腰を傷めたり体に異常をきたす人も多くいます。食に興味はあるけど、仕事にする上では健康も大事だなと、その時に感じました。また、その後いくつかアルバイトをする中で、毎日同じ時間に同じ場所に出勤する働き方も、自分には合わないのだと気づきました。

 

カメラを通して食の大切さを伝えていこうと決めた

「自分に合う働き方はなんだろう」ーー。試行錯誤しながら自分らしい働き方を探っていた丹下さんは、あるとき思い切った行動に出ます。

丹下さん:どうしたら生きていけるか、本当に真剣に考えました。その中で浮かんできたのがカメラマンとして生きることです。大学時代からカメラが好きで、趣味でスタイリングや撮影をしていたので、それを仕事にしたいと思ったんです。もうその道しかないと思って、親にも言わずに開業届を出して、フリーランスのカメラマンになりました。カメラを通して食の大切さを伝えていこうと決めたのはその時です。

 

−−決意がすごいですね。どうやって仕事をつくっていったのですか。

丹下さん:最初は「何でもやります」と必死でした。通っていたカフェでスイーツの写真を撮ったり、そこのお客さんから家族写真を依頼されたり。スキルを身につけなきゃという焦りと、色々な世界を見たいという気持ちが両方あったので、ウェディングやイベントの撮影など、食に限らずいろいろな撮影の仕事をしました。徐々に食の方に行ければいいかなと思っていたのですが、地道なつながりから、食の撮影も少しずつ増えていきました。

 

−−「食卓写真」の活動にたどり着いたのですね。

丹下さん:「食卓写真」は料理の写真だけではありません。生産者さんのことを伝えるために、農家さんの畑仕事の様子や人物スナップも撮ります。そこは、ウェディング撮影の経験が役に立ちましたね。

また、「食卓写真家」と名乗り、管理栄養士の資格も持っていることから、メニュー開発から撮影までしてほしいという依頼も、少しずつ受けるようになりました。

 

−−まさに、丹下さんにしかできないお仕事ですね。

食卓写真家としての活動が軌道にのってきた丹下さんに、再び転機が訪れ、Harmoの運営をスタートします。どのような経緯でHarmoを立ち上げるに至ったのか、次回詳しくお伝えします!

 

次回は2/7(火)に公開予定です。

 

– Information –
食卓写真家

Harmo
「食」の体験型オンラインスクール
公式サイト/Instagram/Twitter

ライター / 谷井 百合子

会社員からライターへ転向。腰の軽さで興味に乗っかる行動力で、ビジネストレンドやブックレビュー、食や旅にも題材を広げている。 目についた野菜を連れて帰り、レシピをググって調理するのが楽しいこの頃。

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Mo:take MAGAZINEは、食を切り口に “今” を発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

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みんなとともに考えながら、さまざまな場所へ。
あらゆる食の体験と可能性をきりひらいていきます。

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