2019.09.16. | 

[Vol.1]誰もが「美味しい食材」にたどり着けるように。「yoloz」片山由隆×「Mo:take」ヘッドシェフ坂本英文

生産者が丹精込めて育てた「美味しい食材」を作る人、食べる人へとつなぐ人がいます。yolozの片山由隆(かたやま・よしたか)さん。産地直送の野菜にこだわった事業を展開するなかで、今年の夏には中目黒で量り売りの八百屋「HACARI」をスタートさせました。料理人として「美味しさ」を追求するMo:takeヘッドシェフの坂本英文(さかもと・ひでふみ)と「HACARI」訪ね、開店までの経緯や思いについてお聞きしました。

野菜の美味しさ、生産者の想いを知ってもらうために起業

「生産者の想いや、産地で味わえる“おいしい”を消費者に届ける」。そんな想いを実現するために、片山さんがyolozとして起業したのが昨年12月。産地直送の野菜スティックサラダのデリバリーサービス「The SALAD BAR」や産地直送の野菜サラダケータリング、さらに産地直送の野菜や果物が量り売りでほしい分だけ買える八百屋「HACARI」など、これまでになかった発想で話題を呼んでいます。

起業のきっかけは、もともと野菜の流通の仕事をしていた片山さんが、多くの生産者や小売りの仕入れ担当者と会うなかで抱いた疑問からでした。

 

片山さん:生産者の方が想いを込めて作った食材を、価格だけでやりとりするケースを多々見てきました。でも一方で、消費者の方と話すと、「美味しい野菜が食べたい」、「どんな人が作ったのか興味がある」という声が多かった。そこに大きなギャップを感じました。

特に東京ではこれだけ流通が発達しているのに、産地で採れた野菜そのままの美味しさを消費者の方が味わえる機会が少ないと思いませんか? 農業が盛んな地域では、普段、当たり前のように採れたての野菜を食べているから、自然な野菜の美味しさを実感することができます。生産者の方から直接野菜を受け取ることができれば、消費者の方も野菜の美味しさを知ることができるし、野菜や生産者のことに興味をもってくれると思うんです。そんな場所を探していたんですけど、ないので自分で作るしかないと思って会社を立ち上げました(笑)。

 

 

型にはまらない方法で食の形を表現

起業前からすでに生産者たちと信頼関係をつくっていた片山さん。まずは野菜スティックサラダのデリバリーサービス「The SALAD BAR」を始めたそうです。

 

片山さん:なぜ野菜スティックにしたかというと、手軽に、野菜そのままの美味しさを楽しんでもらえるからです。客観的に見ると、僕たちのサービスはチャレンジングなことだったので注目してもらえたし、「じゃあ、こういうことはできますか?」と声をかけていただいたりして、ケータリング事業にもつながりました。起業当初から店舗をもつ予定ではいましたが、先にデリバリーを始めたことによって、自分のやりたいことを広く知ってもらえてよかったと思っています。

 

坂本と出会ったのも、The SALAD BARがきっかけでした。

 

片山さん:The SALAD BARのPRビジュアルのフードコーディネートを坂本さんにお願いしたんです。

 

坂本:片山さんといろいろ話していくうちに考え方がおもしろいなあと思いました。Mo:takeの代表の小野も一緒に、3時間くらい話し込んだんですよね。

 

片山さん:やりたいことが似ていて、どうせ仕事をするなら社会的なインパクトを残したいねとか、将来のビジョンについていろいろ話したんです。

 

坂本:食に対する想いを表現する中で、自分一人では限界があります。だからこそ、いろいろな人と様々な形でコラボしたほうがいいと思っています。Mo:takeもケータリングだけにこだわっていないし、飲食店だけでもなく、「食に関わる表現方法ってこういうのもあるんだ」って知ってもらえるようなことができればと思うんですよ。そうすれば食の業界ももっといい方向に変わるんじゃないかなと思っています。

 

 

価格ではなく、食材に価値を感じてもらうために店舗は必要だった

片山さんにとって念願だった八百屋「HACARI」。明るい店内には、真っ赤なトマトや濃い緑のキュウリなど色とりどりの野菜がたくさん並びます。沖縄から北海道まで、全国各地の野菜や果物をg単位で買えるのが大きな特徴。つながっている生産者は200人以上というから驚きです。

 

片山さん:近々お惣菜も販売する予定です。仲間のシェフとは、「日替わりでいろんなシェフのお惣菜を置くと楽しそうだよね」と話したりしています。それだけでなく、いろいろなやり方があると思うので、温めているアイディアを一つひとつ実現していきたいですね。

 

実はこのHACARIを出店するにあたって、「リアルな店舗はリスクが大きい」という声もあったそうです。それでも迷うことなく決めた片山さん。それは、「今の食を取り巻く社会構造を変えたい」という強い想いがあったからです。

 

片山さんHACARIのコンセプトは「物語(ストーリー)までうまい」です。価格ではなく、野菜の美味しさそのものに価値を感じてもらうためには、生産者さんが作った野菜と消費者の方が直接つながる場が絶対に必要だと思っていました。まだまだ知られていない野菜がたくさんあるんですよ。そんな未知の野菜のことを伝えるには、リアルな店舗での店員さんの説明が必要不可欠だと思っています。それをきっかけに、食材が「美味しい」から買う、という日常が当たり前になるようにしたいです。

 

坂本:僕自身も、「美味しい」ことが一番大事だと思っていますが、多くの消費者は、野菜の本当の美味しさを知る機会がないんですよね。たとえばトマトだったら、手塩にかけて育てている農家さんのトマトはすごく味が濃いんですよ。そういうことをもっと知ってもらいたいですよね。

 

片山さん:東京は、農家とふれあう機会が少ない場所です。遠くから運ばれてきた食材がほとんどなので、鮮度も落ちてしまう。でも、HACARIで産直食材の魅力を東京で浸透させることができれば、東京以外の地域にも広げられると思っています。

 

産地直送の食材を通して、野菜の美味しさを消費者に知ってほしい、そして食材や生産者の想いに興味をもってほしいと語る片山さん。片山さんの挑戦は、どんな世界をつくるのでしょうか。9/19(木)公開の次回では、片山さんがHACARIを起点にした未来を、そして片山さんと坂本が思う「美味しい」について、もう少し詳しくお話を伺います。(つづく)

 

– Information –

株式会社yoloz

東京都港区虎ノ門4-3-1 城山トラストタワー 21階 WeWork 城山トラスト

https://www.yoloz.co.jp/

HACARI

東京都目黒区中目黒4-4-10

https://twitter.com/HACARI_NAKAME

※HACARIで販売したい農家さん、仕入れの希望があるシェフを募集しています。
下記URLの「Contact」からお問合せください。
https://www.yoloz.co.jp/

ライター / たかなし まき

愛媛県出身。業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。人の話を聴いて、文章にする仕事のおもしろみ、責任を感じながら活動中。散歩から旅、仕事、料理までいろいろな世界で新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。

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