2024.05.28. | 

能登の漁業の今を伝える、応援の声を届ける。『サカナバッカ』都内全8店舗で「能登応援フェア」を開催。

“能登の漁業の今”をご存知ですか?
石川県は、「能登のために、石川のために応援消費おねがいプロジェクト」を推進し、能登の漁業を支える取り組みも行っています。では、私たちができることはなんでしょう?

「生鮮流通に新しい循環を」というビジョンを掲げるフーディソンが運営する魚屋「sakana bacca(サカナバッカ)」は、能登半島地震の影響で、未だ漁に出られず困っている能登地方の漁業者や水産事業者を応援するために、5月7日〜12日まで「能登応援フェア」を都内全8店舗で開催しました。

編集部は、豊富な地域の海産物と新鮮な能登の魚が店頭に並ぶ「サカナバッカ中目黒」へ。取材でわかったのは、能登の漁業の今とそれをなんとか応援したい、支援したいという想い。この記事では、石川県の魚が美味しい!この魚がオススメ!という食レポしたい気持ちを抑えて、能登応援フェアの背景を“今できる応援のあり方、支援”のヒントとともにお伝えします。

漁に出られず、一時的に漁業を離れる漁師さんも。
声を届けること、流通のきっかけづくりで元気づけたい。

今回インタビューに協力していただいたのは、能登応援フェアを推進するフーディソン sakana bacca事業部の山本久美恵さん。3月に石川県へ足をはこび、能登の漁業の現状を知った山本さんは、まずは魚を流通させること、そして応援の声を届けることが復興の応援、現地の力になると考えてこのフェアを企画したそうです。

 

−−今回の能登応援フェアのきっかけについて改めて教えてください。

山本さん:私たちは2018年より石川県から直接魚を仕入れ始めました。その後も継続的に販売してきており、石川県はつながりの深い産地です。震災が発生したあと、現地の状況がわからない中で、何か支援できることはないかと社内で話し合っていました。私たちは流通事業者なので、漁業者さんが漁に出られず魚がない状態では、なかなかお力になることができません。そんななか3月末に能登の一部で漁が再開したと聞いて、石川県に訪問し石川県庁や石川県漁協の方のお話を伺いました。そこで、震災後数ヶ月が経過しても未だインフラの復旧が進んでいないことや、氷が作れない、給油ができないために船を出せず漁師さんが漁に出られていないという現状を知ることになったんです。

 

−−実際に漁ができない港の漁師さんは、どのように過ごされているんでしょうか?

山本さん: 避難して別のところで違う職に就かれていたり、港の復旧作業に従事されていたり、とにかく生活のために違う仕事をされて、一時的に漁業からは離れていらっしゃると聞いています。気持ちがガクッときている方も多いそうで、海に出られず漁業から離れすぎてしまうと、港が復旧したとしても皆さんの気持ちが追いつかず、漁に出られるかどうか。能登の水産業自体がこのまま衰退してしまうのではないかと、漁協や県庁の方は危機感を持たれていました。

私たちがフェアを開催し、能登の魚が流通するきっかけをつくること、そこで集めた応援の声を現地の漁業者さんに届けることで、少しでも元気づけたいとお話しさせていただいて、一緒に連携しながら能登応援フェアをはじめることになりました。

 

−−魚を流通させること、応援の声を届けること。それが能登の漁師さんへの応援のカタチということですね。

山本さん: 当たり前が当たり前でなくなってしまった状況で、特別な魚を扱ったり、特別扱いをするのではなく、能登の魚を“普通”に流通させることが産地の一番の力になると思っています。

実際、フェアを通してお客様から「応援しています!」「能登のお魚が食べたいです」といった声も寄せられています。こうした、能登の魚が求められているという声が力になればと思い、漁業者さんが少しでも早く漁に出られるように、今できる応援のかたち、支援の方法を模索しながら続けていきたいです。

 

能登の恵みが満載!もっと知ってほしい石川の魚

今回のフェアでは20種類を超える魚種が店頭に並んだそうで、能登の恵みが満載です。能登応援コーナーに並ぶ鮮魚たちを見て、サカナバッカ中目黒の店長・石井さんに石川県の魚の仕入れについてお話をうかがうと、実は石川県の魚にそれほどイメージがあったわけではなかったと言います。

サカナバッカ中目黒 店長 石井さん
色んな地域の魚を店舗で取り扱うなかで、これまで石川県の魚は通常はだいたい全体の1割以下でした。このフェアで石川県のお魚を集めてみると、魚種も多くて、いい魚が沢山あります。これは 新しい気づきでしたね。今回のフェアで手にとってくださるお客様も多くて、これを機に石川県の魚が広く知られて、色々なところで取り扱いが増えていけばいいなと思っています。

 

石川県から直接仕入れているというお魚は、丸魚の他にお造りや寿司、切身などでも販売されていました。能登の美味しいお魚に東京で出会える機会も増えていきそうですね。

 

能登と東京をつなぐ「能登応援丼」

東京駅など一部の店舗限定で販売された「能登応援丼」は、石川県産の甘エビと、能登町の道の駅「イカの駅つくモール」で使用されていた「能登町小木の味付き船凍スルメイカ丼」を盛り込んだ、特別仕様の”どんぶり”として販売されました。 この能登応援丼は、「イカの駅つくモール」内のレストランが震災・津波被害により営業再開できず在庫となってしまっていた「イカ丼」を、サカナバッカが全量買い取り、支援に繋げたものだそうです。

「こうした背景と一緒にお客様へ届けることで、能登の現場を知ってもらい、食べてもらって、支援につなげたい」と山本さん。

 

「知って、買って、食べて応援」
長期的な“今できること”で風化させない

最後に私たちができる応援・支援とはなんでしょう?そんな質問をさせていただくとこんな答えが。

「現地の方が懸念していたのは、震災が忘れられて風化してしまうことでした。今すぐに何かできなくてもいいんです。今を知ること、何ができるかを考えること。それが支援に繋がっていくんだと思います。」

知って、買って、食べること。「美味しい」「もっと食べたい」そんな声をあげることが力になる。一人ひとりの意識で “今できること”を。能登応援フェアは、石川の漁業のこと、魚のこと、応援・支援のあり方、そんな大切なことを気づかせてくれる想いの詰まったフェアでした。

 

– Information –
sakana bacca

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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