SERIES
Food Future Session
2023.01.12. | 

[Vol.2]人と関わる仕事だから、時間をかけて関わっていく【HITOTOWA 荒昌史 × Yuinchu 小野】

「Food Future Session」という壮大なタイトルで展開する ×Mo:take の座談会。今回は、「人と和のために仕事をし、都市の社会環境問題を解決する」をミッションに、地域やマンションでのコミュニティづくりに取り組む HITOTOWA INC.(ヒトトワ)代表取締役の荒昌史さんとMo:takeの座談会です。Vol.2では、HITOTOWAのメイン事業であるネイバーフッドデザインの具体的な事例を挙げながらプロジェクトとの向き合い方まで掘り下げてお聞きします。

街のことを知るために、
年単位で時間をかけるフィールドワーク

小野:HITOTOWAが手がけるネイバーフッドデザインのプロジェクトはどのように始まっていくのかも興味深いです。

 

荒さん:デベロッパーや行政から依頼されることが多いです。浜甲子園の場合は、「団地の大規模な建替えが行われるのでコミュニティを活性化したい、でも、どうしていいのかわからないから、なんのためにつながるのかという目的設定や、地域の課題の洗い出しから始まり、それを実現するためのアクション、事業、組織などをデザインしてほしい」という依頼がありました。

最初は、半年から1年かけて街を調べるというフィールドワークから始まります。毎日現地に行けるわけではありませんが、季節ごとのイベントやお祭りは見ておきたいので準備期間をもらっています。

 

小野:準備に1年も時間をかけるってすごいですよね。フィールドワークをすることで改めて見えてくることはありますか?

 

荒さん:これは浜甲子園の話ではないのですが、デベロッパーや行政から「人の顔が見えない」「つながりがないようだ」と言われている地域でも、実際にはいろいろな団体が活動していたりします。ただ、その分野だけでの活動になっていることが多いですね。

街の人自身が街のことを知らないことも多いので、この事業を立ち上げた最初の頃はそういう活動の一つ一つを紹介してもらったりもしていました。なるべく住民の方々と同じ目線に立ちたいと考えているんです。

 

小野:それだけ時間をかけてじっくりリサーチすると、いざコミュニティデザインを実施するタイミングには状況が変わっていることはないですか? そう考えると、リサーチしながら同時に行動しないといけないのかなと思うのですが、結構大変そうです。

 

荒さん:リサーチによって街が見えてきて「やるぞ!」となった時に、実現可能性や誰とやるのかという仕組みを整えなければならないので、取捨選択がものすごく重要になります。大それたことばかりを続けられないですし、そんなに高いコストもかけられないですしね。

浜甲子園の場合は、すでに場がありましたが、場すらない時もあるので、そういう時はワークショップやイベントを重ねていく手法になりますね。

 

小野:住民の方も一緒に参加してもらってやることが多いですか?

 

荒さん:そうですね。管理組合を通してそれができるようにしたりします。すでに場があるのであれば、その場をどう生かすかを考えますね。

 

企業としては、自走するための伴走者
でも、個人としては愛着が湧いて……

小野:コミュニティは作って終わりではなく、その後もずっと続けていくことが重要なのかなと思います。継続のために、実際にどんなことをされていますか?

 

荒さん:場を運営し続けることイコール、人・金・モノ・コトという経営面を、どうバランスをとっていくかが前提にあるので、コミュニティを形成するための小さな組織体をいっぱい生み出したりしています。

例えば浜甲子園団地の場合、「まちのね浜甲子園」という一般社団法人が事務局となって3ヶ所のコミュニティスペースを運営しています。まちのね浜甲子園で雇用されてる方々がコミュニティスペースの現場を運営していて、僕らは彼らが自分たちでコミュニティを作るための伴走者です。

僕らは2023年6月には浜甲子園の事業をいったん終える予定ですが、その後もまちのね浜甲子園という組織で経営できるような状態にしてから抜けます。フロール元住吉や小岩駅周辺地区のエリアマネジメントは現状では永続的に関わり続けるモデルです。

事業として終えた後も、本心としてはずっとその地域に関わりたいですけどね(笑) 浜甲子園はリサーチ、企画を経て、2018年に場ができてからも丸6年関わり続けていますから、愛着もひとしおです。

 

小野:それは切ないですよね。仕事を超えた思い入れが絶対に生まれますね。

 

荒さん:僕はうちが手がけたプロジェクトのひとつであるひばりが丘に引っ越しちゃいました(笑) 元々住宅デベロッパーに入社した時に、自分が住みたいと思う家や街を作りたいという思いがありましたから。

 

人間関係を扱っているからこそ
社員の思いも大事にする

小野:経営的な質問になりますが、荒さんの仕事はひとつの案件のボリュームが大きいですよね。そう考えると、6年間浜甲子園に携わっている間にも、ビジネスとしては次の種を蒔いておく必要があるわけです。そこはすごく難しいだろうなと、お話を聞きながら感じました。

 

荒さん:経営としてポートフォリオを考え、冷静に判断していけば、全部の街をやり続けるのは不可能です。経営的に考えると、最適なバランスは僕らが一定の関わりを経て、手離れしていくプロジェクトを増やすことなんですが、僕らが扱っているのは目に見えるプロダクトではなく人間関係です。仕事上の人間関係だけではネイバーフッド・コミュニティはできないので、社員の思いも含めて人間関係を大事にしたいですね。担当する社員に関わり続けたいという思いがあれば、一緒に作戦を練るようにしています。

 

小野:やっぱり人として関わらないとネイバーフッドは無理ですよね。話を聞きながら、Yuinchuもかなり近いビジネスモデルだなと思いつつ、同時に、時間軸や分厚さが全然違うなと思いました。

うちの場合、基本的にはカフェなどの飲食店の運営を自走できるよう伴走していくビジネスモデルをどんどん作っています。荒さんの場合は街全体を手がけていらっしゃるので、時間軸が大きく違うと感じました。飲食店の場合、関わるのは1日の中の食に関わる時間がメインですが、荒さんは人生すべてというか、とても長い時間を対象にしていますよね。そう考えるとすごく勉強になるし、面白いです。

 

次回は1/17(火)に公開予定です。地域でのつながりや、つながりを生む場のデザインなどについて、Yuinchu代表の小野と共に日常で感じていることも交えながら語ります。(つづく)

 

– Information –
HITOTOWA

書籍「ネイバーフッドデザイン

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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