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意外と知らないローカルフード
2025.09.25. | 

【滋賀】滋賀で発見! サステナローカルフード! | 意外と知らないローカルフード

食の歴史や文化、そして土地の魅力がぎゅっと詰まった“地域の味”を再発見して楽しく紹介する「意外と知らないローカルフード」。このコーナーでは“誰もが知っているあのメニュー”ではなく、知る人ぞ知るローカルフードや、昔から変わらないその土地ならではのこだわりの逸品、時代を超えて今もなお愛される一皿、その「食」の背景にある物語をひも解きながら、その地域ならではの味とは何なのかをカジュアルにお届けします!

第13回となる今回は『滋賀』。9月28日より、第79回国民スポーツ大会および全国障害者スポーツ大会が開催されます! 「わたSHIGA輝く国スポ・障スポ」と呼ばれるこの大会では、セーリングやトライアスロンなど、琵琶湖を生かした競技と演出が行われることで注目されています。多くのアスリートとスポーツファンが集まる滋賀に行くなら何を食べるべきか、調べてみましょう!

宿場町のアイデアが詰まった「芋つぶし」

さて、2025年、日本の食卓の象徴ともいえる主食・米が、「米不足」という思わぬかたちで脚光を浴びています。全国的な水不足による収量減、流通コストの上昇、そして一部の買い占めや転売行為が重なり、米価がじわじわ高騰。

政府による備蓄米の解放が行われましたが、スーパーなどでは「お一人様1袋まで」という貼り紙がされることも。やむなく、うどん、パスタ、パンなど、ごはんに変わる主食を増やす家庭も増えているとか。

こうした状況に、ぴったりなのが今回紹介する滋賀のローカルフードです!滋賀県湖南市・石部地区に伝わる郷土料理「芋つぶし」は、東海道の宿場町・石部宿でおよそ500年も前から旅人や地元の人々に親しまれてきた、素朴で温かな料理です。

宿場町として栄えたこの地域でも、当時の庶民にとって米は貴重品でした。収穫した米は、まずは年貢や換金用に優先的に回され、日々の食事用に十分な量を確保するのが難しかったといいます。そこで当時の人々は、手に入りやすかった里芋やサツマイモに少量の米を混ぜて炊き、つぶして俵型に丸めて、さらに香ばしく焼くという料理を編み出しました。

 

シンプルだからこそ残したい「100年フード」

香ばしく焼いた芋つぶしは、噛むと外は香ばしく、中は芋と米が一体になったもちもちの食感。日本人なら誰もが好きなみたらしのような甘辛濃厚タレを塗ったものは、表面のこんがりとした焼き色が食欲をそそります。

里芋を使うとしっとりとねっとり感があり、サツマイモなら自然な甘みが出ます。その味は決して派手ではありませんが、口にした瞬間に、なんともほっとするような優しさや懐かしさがあります。

ほろ苦い味噌があとを引く田楽味噌味は、お好みで山椒をかけると風味が変わり、よく合います。シンプルに塩味で楽しむのも素材の風味そのものが味わえておすすめです。いずれの食べ方も、芋と米の素朴な風味を大切にし、基本の調味料以外は余計なものは使いません。噛みしめるたびに甘みと香ばしさがじんわりと広がります。

江戸時代、旅人にとって長旅の疲れを癒すご馳走でもあった芋つぶしが現代まで受け継がれてきた理由は、家庭の温かさを感じさせるその味わいにあったのかもしれません。ちなみに、芋つぶしは今も石部宿の茶屋で提供されており、観光客だけじゃなく地元の人にも人気です。その歴史的・文化的価値が評価され、文化庁が選定する「100年フード」にも認定されています。

 

令和の米騒動を乗り越えるヒントに!

今年の米不足は、ひょっとすると一過性のものではないかもしれません。猛暑や雨不足、あるいは豪雨など気候変動の影響は毎年深刻化しているように思えます。そんな状況で、米作りが大打撃を受けるリスクは無視できません。

芋は米に比べて栽培時の水使用量が少なく、環境負荷が低い植物です。芋つぶしのような料理は、主食の多様化や将来の食料安定に向けた重要なヒントにもなりそうです。慢性的な米不足に悩んだ先人たちの暮らしの知恵が詰まった芋つぶし。滋賀に食べに行くだけでなく、令和の米騒動をきっかけに、この料理を食卓に取り入れてみるのもアリかもしれません。

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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