SERIES
美味しい科学 CAST × Mo:take
2026.02.05. | 

[最終回_Vol.2]科学でつくる、最高の一皿 −パスタ実践編

科学の世界を面白く、わかりやすく各地域で伝えている東大CASTとMo:takeがお届けする、食を科学の視点で紐解く連載企画「美味しい科学」。ついに最終回を迎えるこのシリーズも第6回目。

前編では、「玉ねぎとかつお節の和風ペペロンチーノ」をつくるために欠かせない、香り・食感・うま味を引き出すための科学的な調理工程を実践してきました。

後編となる今回は、そのすべてをひとつにまとめあげる工程、「乳化」にフォーカスします。水と油という、本来混ざり合わないものをどう調和させるのか。そして、その先にある“美味しさ”とは——。

科学の視点で、いよいよ一皿を完成させていきます。

手順3:パスタにとろみをもたらす、水と油の『乳化』

−−先ほどまでグツグツと水分が煮立っていたソースに、トロミが出てきたようです!これが『乳化』したということなのでしょうか?

CASTさん:そうです!先ほどにんにくの加熱を止めるためにフライパンに加えたゆで汁が、オリーブオイルとよく混ざり合い乳化しましたね。では、理想的な乳化は、どのような状態か分かりますか?

 

−−うーん…乳化は、水と油が混ざり合うことなので、どちらかが残らずにきれいに混ざり合った状態でしょうか?

CASTさん:その通りです!きれいに混ざり合うためには、フライパンに入れる水と油の量が大切です!水が多いとスープパスタのようになってしまい、油が多いとオリーブオイルがパスタの表面に浮いてしまい、ベタベタした感じになります。

 

−−なるほど。理想のペペロンチーノにするためには、水と油が調和してパスタに絡み合う必要があるんですね!でも、水と油を調和させるのはかなり難しそう…今作っていただいているペペロンチーノは比較的簡単に乳化ができているように思いますが…。

CASTさん:そう見えましたか?(笑)それは、今日のペペロンチーノに玉ねぎを入れているからかもしれません!

 

−−えっ、玉ねぎによって乳化がしやすくなる?どういうことでしょうか?

CASTさん:そもそも水と油は、本来混ざり合うはずのない成分ですよね。この2つを混ぜ合わせるためには、乳化剤、つまり水と油をくっつけてくれる役割の成分が必要。

 

−−なるほど!玉ねぎには乳化剤となる成分が含まれているということでしょうか?

CASTさん:玉ねぎには食物繊維が含まれています。その食物繊維が、乳化剤(正確には、乳化した状態を保つための安定剤)の役割になっているのだと思います!もし、にんにくとオリーブオイルだけのペペロンチーノを作るとしたら、もっと乳化が難しかったかもしれないですね。

 

−−なるほど。では、ペペロンチーノのような乳化が必要な料理には、乳化剤が含まれる食材を加えることができたら、比較的簡単に乳化しやすくなりそうですね!

CASTさん:それでは、パスタを茹でていきましょう!パスタはあとでソースと一緒に加熱するので、ここでは少し早めに火を止めておくのがポイントですね。

 

−−仕上がりから逆算して、茹でる時間を調整するということですね!

 

醤油とかつお節を加えて「玉ねぎとかつお節の和風ペペロンチーノ」の完成!!いざ実食!

CASTさん:それでは、そろそろパスタが茹で上がったので、フライパンにパスタを入れて、仕上げていきます。

 

−−ということは、ついに1年発酵・熟成させた醤油の出番ですね!この濃厚な香りの醤油を混ぜたら、どんなペペロンチーノになるのだろうとワクワクします!!

CASTさん:フライパンでソースをパスタにしっかり絡ませたら、かつお節をひとつまみ取ってフライパンに入れ、醤油を大さじ1/2杯くらい入れて、全体をさらに混ぜていきましょう!

 

−−おぉ!トロッとしてきましたね!

CASTさん:そうですね!パスタに含まれるデンプンも水と油を混ぜ合わせるための乳化(安定)剤となるんですが、こうしてフライパンを傾けてみると、ちゃんと乳化できたことが分かりますね。これで「玉ねぎとかつお節の和風ペペロンチーノ」の完成です!

 

−−わぁ、美味しそう!ついに実食ですね!!ここまでの『切る』『加熱』『乳化』の工程で意識してきたことが、どのように料理の味に影響しているのか、結果が楽しみです!

 

CASTさん:そうですね!すこし緊張してしまいます(笑)では、いただきます!

 

−−どのようなお味ですか??

CASTさん:それぞれの調味料と材料の味が絡み合っていて、美味しいですね!とくに、玉ねぎの食感が理想どおり… いいや、それ以上かもしれないです!ほどよいシャキシャキ感が残っています。醤油の風味もちゃんと効いていて、美味しい科学的には今まで学んできたことをすべて実証できたと思います!

 

−−ではでは、私も食べてみたいと思います!

CASTさん:お味はどうですか?

 

−−ほんと、美味しいです!確かに玉ねぎの食感も感じるし、醤油の香り、鰹節の出汁っぽさ…旨みも感じます!やっぱり玉ねぎのシャキシャキ感は、繊維に沿った切り方を選んだことが影響しているんですか?

CASTさん:それもありますが、加熱をとめるタイミングも良かったと思いますね。もう少しじっくりと煮込んでいたら、シャキシャキとした食感は残らず、すべてトロトロになっていたと思います。

 

−−やはり、玉ねぎひとつでも、切り方、加熱のやり方や時間によって違う食感や味になるということですね!作りたい料理に合わせて、加熱の時間を調整するというのも、美味しい科学の加熱編の中で学んだのでイメージができます!

CASTさん:そうですね、『加熱』のときに学んだように“加熱によってその食材を理想の状態に調理する”ことができるということを実践できましたね!

 

−−なんか嬉しいです!ちなみに、ペペロンチーノを作る工程のなかで、とくに難しそうな乳化が、この料理にはとても重要なイメージがあったのですが、いかがでしたか?

CASTさん:そうですね、味が調和して美味しいと感じさせてくれるのも乳化の特徴なので、乳化は欠かせないと思います。

このペペロンチーノは、先ほどお話ししたようにパスタのゆで汁に溶け出したデンプンなども乳化剤になったり、油と水がちゃんと混ぜ合わさって、いい舌触りでトロッと美味しいソースになりました!

玉ねぎの甘みや加えた醤油、塩などの塩味、かつお節のうま味、いろんな味が調和していて「美味しい科学」的にもすごく理想の料理になったんじゃないかと思います!

 

−−学んだことを駆使して作った美味しい科学的「玉ねぎとかつお節の和風ペペロンチーノ」、私もお家で作ってみたくなりました!

 

1年間にわたる『美味しい科学』への探求を終えて

−−今まで学んだ調理工程を踏まえて、理想の料理を作ることができましたね!今回で終了となる『美味しい科学』の企画ですが、1年間やってみていかがですか?

CAST・島倉さん:1年間、毎回異なるテーマで料理を科学的に見ていくことで、やっぱり料理、というか美味しさって科学との関係が深いんだなぁと改めて思いました。毎回のテーマごとに、改めて調べて見て「やっぱり」と思うところと、「なるほど」と新しい発見もありました。つくりたい料理に対して、科学的に逆算することで、どのような調理工程を踏めばいいかのリズムを考えられることが、すごく面白く感じることができましたね。

 

−−私たちも新しい発見が多くて楽しかったです!宮崎さんは、この企画以前からご自身でもプライベートで料理をされていたとのお話でしたが、あえて科学的に見るという今回の企画はいかがでしたか?

CAST・宮崎さん:そうですね、今日の調理でも「醤油は香りを大事にしたいから」、「玉ねぎは最終的にあの食感とあの甘さを両立させたいから」と、1つ1つのつくりたい要素に対して、科学的に進めることで、理想の味になっていくというのが面白かったですね。

私も島倉さんと同様に、1つ1つ何気なくやっていたレシピの手順を深く考えると、ちゃんと科学とつながっていて意味があることを改めて確認できて、面白かったです!

 

−−ありがとうございます!お二人のおかげで本当に楽しく、学びありの記事を読者の皆さんにお届けすることができました!本当にありがとうございました!

第1回から最終回となる今回まで、「醤油」『切る』『加熱』『乳化』『味覚』と、日常的におこなう料理の手順について、東大CASTのおふたりに伺うことで、科学×料理のかけ合わせを探求してきました。

準備から調理工程、味わいまで、”科学の目”を通すことで「理想の料理」が何なのかという新たな視点を持ち、まだまだほんの一部だと思いますが、料理の細部をひとつずつ深めて捉えることができたかと思います。

シリーズを通して触れたのは、「鶏肉」「煮込み料理」「ピーマン」「マヨネーズ」「レンジ」など…。普段の料理で使う、食材や道具です。

ぜひ明日の料理から、今回のシリーズで触れた科学的な視点を料理のスパイスとして加えてみてください!

編集部の”美味しい科学”への探求は今後も続いていきますので、お楽しみに!!

– Information –
東京大学サイエンスコミュニケーションサークル『CAST』

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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