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Food Experience Story
2026.07.21. | 

[Vol.2]自然の中で育む、「夢」と「好奇心」

1999年の創立以来、27年間にわたって子どもたちと向き合い続けてきた「少年キャンプ」。その場をつくり続けているのが、日本人初のMTB(マウンテンバイク)ワールドカップレーサーとして世界を転戦し、現在は少年キャンプや少年キャンプFarmの運営、さらにはヒューゲルカルチャーの実践にも取り組む檀拓磨(だん・たくま)さんです。

Vol.1では、マウンテンバイクで世界のトップレベルで戦ってきた檀さんの人生の歩みを伺いました。

八ヶ岳の自然に囲まれた少年キャンプには、毎年多くの子どもたちが集まります。そこでは自然の中で遊び、仲間と過ごし、自分で考えながらさまざまな体験を重ねていきます。

27年間続くこの活動には、檀さんが大切にしてきたある考え方がありました。

Vol.2では、27年間続く少年キャンプの現場を通して、檀さんが子どもたちに伝え続けていること、そして自然の中で育まれる「生きる力」についてお話を伺います。

少年キャンプで伝えたいこと

−−さきほど(Vol.1)「チャンピオンより、やんちゃ坊主を育てたい」というお話がありましたが、その想いは、この少年キャンプにも繋がっているのでしょうか。

檀さん:そうですね。気付けば27年になりますね(笑)。

でも、最初から何かを教育しようと思って始めたわけじゃないんですよ。ただ、子どもたちに自然の中で思いきり遊んでほしかったんです。僕自身、子どもの頃から山へ行ったり、川へ行ったり、自然の中で仲間とたくさん遊びながら色々なことを覚えてきたんですよね。だから、自分が楽しかったことを子どもたちにも体験してほしかったんです。

自然の中で夢中になって遊んだり、友達と笑ったり、時には失敗したりしながら過ごす時間って、すごく大事だと思っているんです。当時は本当に、それくらいの気持ちだったんですよ。

 

−−最初から何かを教えようとしていたわけではなかったんですね。

檀さん:はい。 今は習い事も多いし、ゲームもありますし、子どもたちも忙しいですよね。 でも、自然の中へ行くと子どもたちは、木に登ったり、川へ入ったり、虫を探したり、本当に勝手に遊び始めるんです。

大人が「こうしなさい」と言わなくても、自分で面白いことを見つけていくんですよね。 僕は、その姿を見るのが好きなんです。

 

−−檀さんは、そうやって子どもたちが夢中になって遊んでいる姿に、どんな魅力を感じているのでしょうか。

檀さん:僕はそこが一番面白いと思っているんです。僕の言う「やんちゃ坊主」って、言われたことだけをやる子どもじゃなくて、自分で考えて、自分で動いて、自分で面白いことを見つけられる子どもたちです。

自然の中には、そのキッカケがたくさんあるんです。自然って雨も降るし、風も吹くし、なかなか自分の思い通りにはいかないんですよね。でも、そんな時に子どもたちは自分たちなりに考えながら乗り越えようとするんですよ。僕は、そういう体験が人を育てるんだと思っています。

僕たち大人が教えられることって、実はそんなに多くないと思っていて、むしろ自然の方がずっと良い先生なんですよね。だから僕は何かを教えたいというよりも、そういう体験ができる機会をつくりたいと思っているんです。

 

−−少年キャンプでは、実際にどんな体験を大切にされているのでしょうか。

檀さん:これはズバリ好奇心を育む体験ですね!僕の中では、何か特別なことをやっているという意識はなくて、火を起こしたり、ご飯を作ったり、畑で野菜を育てるという昔なら当たり前だったようなことを体験してもらうことで、好奇心が育まれると思っています。

でも今の時代は、そういう体験をする機会自体が少なくなっているんですよね。便利な世の中になって、うまくいかなくても何とかなることが増えたのかなと思います。でも、人って思い通りにならなかった時にこそ学ぶことが多いと思うんですよ。

例えば火を起こすのも最初はうまくいかないし、ご飯を作るのだって失敗することがあります。でも、そうやって試行錯誤しながら覚えていくんです。

だから僕は、なるべく失敗できる環境を残しておきたいんです。失敗こそが新たなる想像力の源泉だと考えています。

 

子どもたちは、自分で変わっていく

−−実際に27年間続けてきて、子どもたちの変化を感じることも多いのではないでしょうか。

檀さん:たくさんありますよ(笑)。例えば、最初は虫が苦手だった子が、自分から虫を捕まえるようになったり、火を怖がっていた子が焚き火の世話をするようになったり。最初は「できない」「やりたくない」と言っていた子が、気付いたら一番夢中になっていたりするんです。そういう姿を見ると、子どもたちって本当にすごいなと思いますね。

僕たち大人はつい先回りしてしまうんです。危ないからやめなさいとか、失敗しそうだから手伝ってあげようとか。でも、少し待っていると子どもたちなりに考えはじめて、友達と相談したり、自分でやり方を変えてみたりしながら、何とかしようとするんですよ。そうやっているうちに、最初はできないと思っていたことができるようになっていくんですよね。

僕は27年間子どもたちを見てきましたけど、その姿に何度も驚かされてきました。

 

−−子どもたちを見ていると、大人が学び得られることも多そうですね。

檀さん:本当に多いですよ。大人の方が頭で考えすぎているのかもしれません(笑)。子どもたちは目の前に面白そうなことがあれば飛び込んでいくし、失敗してもまたやってみる。自然の中にいると、その姿がよく見えるんです。

だから僕は、子どもたちを変えようと思ったことはないんですよ。むしろ子どもたちって、もともとそういう力を持っているんですよね。僕は、その力を発揮できる場所をつくりたいと思っているんです。

 

生きる力は、正解のない場所で育つ

−−檀さんがおっしゃる「力」というのは、いわゆる勉強やスポーツの能力とは少し違うものですよね。

檀さん:そうですね。僕はよく「生きる力」って言うんですけど、それは何か特別な能力のことではないんですよ。

例えば、初めての場所へ行った時に自分で考えて行動できたり、困ったことが起きた時に誰かと協力しながら乗り越えられたりする力です。自然の中って正解がないんですよね。天気も変わるし、思った通りにならないこともたくさんある。だからこそ、自分で考えたり、人に相談したりしながら進んでいくしかないんです。

僕は、これからの時代ほどそういう力が必要になると思っているんです。

 

−−これからの時代ほど必要になる、というのはどういうことなのでしょうか。

檀さん:現代は昔に比べて便利なものが本当に増えましたよね。分からないことがあればすぐに調べられるし、欲しいものも簡単に手に入る。それ自体は悪いことじゃないと思うんです。でも、その一方で、自分で考えたり、誰かと力を合わせたりしなくても何とかなる場面も増えてきたような気がしているんです。

だからこそ、いざ思い通りにならないことが起きた時に、自分で考えたり、誰かと協力したりしながら乗り越えていく力が必要になると思うんです。

 

−−なるほど!便利になったからこそ、必要になる力があるんじゃないかということですね。

檀さん:自然の中って、本当に思い通りにならないんですよ。雨が降れば予定も変わりますし、火がつかなければご飯も作れない。でも、そういう時に「じゃあどうしようか」って考えるんです。友達と相談したり、やり方を変えてみたり、時には助けてもらったりしながら進んでいくんです。

僕は、そういう経験が人として生きていく上での土台になると思っているんですよね。

 

−−自然の中での体験そのものが、「生きる力」を育てているんですね。

檀さん:そうだと思います。もちろん全員がキャンプをする必要はないと思うんですよ(笑)。でも、自然の中じゃなくても、自分で考えたり、失敗したり、誰かと協力したりする機会は必要だと思うんです。だから僕は少年キャンプを通して、そういう機会を子どもたちに届けたいんですよね。

 

−−27年間続けてきた今、檀さんが子どもたちに一番残したいものは何でしょうか。

檀さん:夢を持ち続けること、そして、繰り返しになりますが、やっぱり“好奇心を持ち続けること”です!自然の中で遊んだことや、仲間と過ごした時間って、大人になってからも意外と残るんですよね。「あの時こんなことがあったな」とか、「あの時頑張ったな」とか、そういう経験がその人の好奇心の土台になっていくんだと思うんです。その経験は、夢を持ち続けること、夢を叶えるための原動力にもなると思っています。

だから僕は、少年キャンプを卒業した後も、何かあった時に「あの経験があったから大丈夫」と思えるものを持ち帰ってほしいんですよね。

強い好奇心があれば、たとえ失敗した時でも想像力豊かに乗り越えることができる。つまり、自身のイノベーションも繰り返すことができるようになって、夢に向かって挑みつづけることができると思うんです。

 

−−その経験が、その後の人生を支えるものになっていくんですね。

檀さん:結局、子どもたちもいつか大人になりますからね。ここで学んだことを土台に、自然や社会と関わりながら生きていける人になってくれたら嬉しいですよね。僕は、それが本当の意味での教育なんじゃないかなと思うんですよね。

 

ヒューゲルカルチャーで、地球へ恩返し

−−その「次の世代へ手渡したい」という想いは、今取り組まれているヒューゲルカルチャーにも繋がっているのでしょうか。

檀さん:僕の中では全部繋がっているんですよ。子どもたちと自然の関係もそうですし、人と人、人と地域、人と自然との関わりもそうだと思います。結局は、自然の中で僕自身が教えてもらってきたことを、次の世代へ手渡していきたいんですよね。

 

−−自然から受け取ったものを、今度は返していきたいということなんですね。

檀さん:そうですね。僕は自然の中でたくさんのことを学ばせてもらってきたんですよ。子どもの頃もそうですし、自転車の選手として世界を回っていた頃もそうです。

だから今は、その自然に少しでも恩返しができたらいいなと思っているんです。

 

−−自然に恩返しをする、ということですか?

檀さん:そうなんです。人間って、どうしても自然からたくさんのものをもらって生きていますよね。食べ物もそうですし、水もそうですし、僕たちが生きていくために必要なものって、ほとんど自然からもらっているんですよね。

でも、今は自然環境もどんどん変わってきていますし、昔と同じようにはいかなくなってきている部分もあると思うんです。だから僕は、自分にできる範囲で自然を少しでも良い状態にして、次の世代へ手渡していきたいと思っているんですよね。

 

−−ちなみに、ヒューゲルカルチャーという言葉を初めて聞く方も多いと思うのですが、どんなものなのでしょうか。

檀さん:ヒューゲルカルチャーって聞くと難しく感じるかもしれないんですけど、もともとは“森の仕組みを畑の中で再現しよう”という考え方なんです。

森って誰かが肥料を撒いているわけじゃないのに、何十年も何百年も豊かな状態が続いていますよね。落ち葉が積もったり、木が朽ちたり、生き物が循環したりしながら自然に土が育っていく。ヒューゲルカルチャーは、そういう自然の循環を人の暮らしの中にも取り入れていこうという考え方なんです。

 

−−なぜ、その考え方に惹かれたのでしょうか。

檀さん:僕がいいなと思ったのは、自然を相手にしながらも、人間が無理にコントロールしようとしていないところなんですよね。森って本来、誰かが管理しなくても循環していくじゃないですか。落ち葉が積もって、木が朽ちて、その中でまた新しい命が育っていく。ヒューゲルカルチャーには、そういう自然の力を活かそうという考え方があるんです。

僕はこれまで自然の中でたくさんのことを教わってきましたし、自転車で世界を回る中でも、人間は自然の一部なんだということを何度も感じてきました。

だから「自然を支配する」のではなくて、「自然と一緒に生きていく」という考え方にすごく共感したんですよね。

 

火がなかなかつかない焚き火。思い通りにならない天気。
仲間と相談しながら乗り越える時間。

檀さんが27年間子どもたちに届けてきたのは、そんな自然の中でしか出会えない体験でした。正解を覚える力ではなく、自分で考え、人と協力しながら生きていく力を体験を通して学び、「夢」と「好奇心」を持ち続けてほしい。少年キャンプの活動を通して、檀さんはその大切さを伝え続けています。

そして今、その想いは子どもたちだけでなく、自然や地域、そして次の世代へと向かい始めています。

Vol.3では、ヒューゲルカルチャーや場づくりの取り組みを通して、檀さんが描く未来についてお話を伺います。

Vol.3はこちら

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檀拓磨オフィシャルサイト

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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