わからないなりにやるから生まれる“らしさ”。
「フラットスタンドの3周年イベントの時、わたしたちが企画をしているイベントで、
“わたしたちが知らない人”
“わたしたちのことを知らない人”
が集まって、勝手に楽しんでいるっていう風景を見て、これだ!って思ったんです!」
この時に見た風景が今の『たまれ万博』にもつながっているという和田さん。
イベント会場では、気さくでフラットなコミュニケーションをとる和田さんですが、『たまれ万博』を終えたあとのインタビューでは真面目なトーンで語ってくれました。
ーーすごい大盛り上がりでしたね!
こんな個性豊かな出店者さんが集まっているのに、一体感がすごいなって感じました。
万博としては今回が2回目とのことですが、この「たまれ」らしいともいえる独特な空気づくりは
一体どのようにしてできたのでしょうか?
和田さん:この地域で一番最初にスタートしたイベントや日常の積み重ねが、
1つひとつベースに積み上がってきているんだと思います。
恐らく他にはない感じに仕上がっていたり、ホントに一番最初から今まで、
私を含めて、素人たちがわからないなりにつくってっきたからこそ、
参加して感じてもらったような独特な空気につながっているというのはあるんだろうなと思っています。
わたしたちの感覚をお伝えすると、来てくれる人が主役で「たまれ」っぽいものを作れたらって思いながら、みんなと一緒にコトおこしをしているという感じなんです。
そして運営する側で参加した人の想い、それぞれ頭の中で描く見たい景色を共有する場が
この『たまれ万博』っていうものになっているんじゃないかって思うんですよね。(微笑)
ーー出店者さんはどのようにして集まっているんでしょうか?
和田さん:出店者さんは基本的に公募はしていなくて、全部つながりのある人に声をかけているんですよ。
これは日常的なつながりがある人を呼ぶことで、そこに来る人たちがある1つの目的で来たんだけど、「〇〇さんもさっき来てたよー!」とか「あー、いつもお話伺ってますー!」みたいな、偶然に出会う確率を上げられるというか。今日も「一年ぶりにきて、名前も知らない人とまたしゃべってる」っていう人もいたんですけど、そんな特有の風景もまた見たい風景の一つです。
地域のお祭りとかってそうじゃないですか??
ーーたしかにお祭りはそのイメージありますね!『たまれ万博』は、日常的なつながりがある人を出店者として呼んでいるということが空気づくりにも関わっていそうですね。
和田さん:だからこそ、わたしたちらしい空気感ができているのかなって思いますね。でも、ここまで来るのに8年かかりました(笑)あとはもう、わたしたちはイベント屋さんではないし、素人なので、わからないなりに、とにかくちゃんとやりきる!もう、いろんな方の想いも乗っかっているので!(微笑)
人と何かをする時のルールのルール。
ーー8年分の想いとその経験が今回の『たまれ万博』につながっているんですね。本当にお祭りのようなワチャワチャ感もありながら洗練されたスマートな雰囲気もあって、なにか独特の空気が心地よくて素敵でした。和田さんがこの『たまれ万博』や他のイベントなど、場づくりで心がけていることはなんですか?
和田さん:そうですね、まずは「やらないことを決める」ってことですかね。「こういうのやろう!」ってことでゴールイメージを共有していくことはもちろんなんですけど、どうなったら失敗なのかっていうのを決めておくのもすごく大事…。
そのために、「これはやらない!」「こうなったらやめる!」みたいなことをあらかじめ決めておくのはすごく大事なんですよね。
そういう「やる/やらない」を判断したり、合意形成していく中でのルールも決めていくんです。以前シンクハピネスが運営していた武蔵野台商店では、スタッフ間で日常的にもマニュアルとは別の上位概念として、ルールのルールっていうのを掲げていましたね。
まぁこの考え方も別の場から学ばせてもらったんですけどね。(笑)
ーーなるほど!ちなみに、その武蔵野台商店でイベントをした時の“ルールのルール”を教えてもらえますか?
和田さん:その時のルールのルールは
「心地よく過ごすためにある」
「いろいろな人や状況によって変化する。」
「人の価値観を否定しない」
っていう3つですね。これってすごく抽象的なことなんですけど、今でもすごく活かされてますね。そのルールのルールはマニュアルのような固定的なものではなくて、一貫性はあるけど、動的に変化させたもので運用していくのがポイントです。
それをせずに、いろんな人と一緒にイベントをつくったりしていくと、結局どこかで楽しさや気持ちよさが減ったりすることが多いんですよね。
だから、ちゃんと駄目なものは理由も含めて駄目だっていうことを認識して、1つ1つ丁寧にそういう感覚共有をガードレールのようにおいておく。そうすることで、そこに囲われた部分に余白ができて、それぞれのやりたいことを重ねられるんですよね。
そこの余白を使うことで遊び感覚で柔軟な発想が生まれたり、行動が生まれやすくなると思っています。
ーールールって聞くと逆に縛られるイメージがあるけど、余白ができるっていうのは面白い感覚だと思います。だから個性がありつつも一体感が生まれる場づくりができるんですね!でも、たまれ万博のようにスケールが大きくなると大変なことも多いんじゃないですか?
和田さん:そうですね、例えば外部のデザイナーが入れば、もっと最短距離で場がつくれるし、きれいな“イベントのカタチ”がつくれると思うんです。だけど、今回の『たまれ万博』をやっているメンバーも自分も含めて、イベント屋じゃないって意味でド素人集団です。(笑)
大変といえば大変なこともありますが、出店者さんは主体的だし、みんな、それぞれやりたいイメージや、コトをおこすことで、見たい風景のようなものはある。じゃあどうする?って考えて、わからないなりに進めていくと、それぞれが参加する余白ができてくるんですよ。
『たまれ万博』も含めて、わたしたちがやるイベントの企画自体には「どういう人を来させようか?」という思惑みたいなものは全くないんです。それぞれのライブ感でパッチワーク的にアイデアが繋ぎ合わさって、イベントがどんどん出来上がっていくんです。
準備を含めて苦しい期間もあるんですけど、関わってくれる人たちと一緒に考えながら乗り越えて、当日を迎えたとき「そうそう!見たい風景これだよね!」ってなるんです。それぞれの視点で当日、同じ風景になにかを重ねられた時に「大変なことばっかりで嫌なことも多いけど、やってよかったな」って思えるんですよね。そんな風に、頑張ったから分だけ、もらえる小さなご褒美のような気持ちをもらってイベントが終わるんですよね。
誰かが知るきっかけを。
介護や医療がつながるきっかけを。
ーー改めてお聞きしたいのですが、イベントに関わる人たちは和田さんを含めて、医療介護に関わる方だったり、みんなイベント屋さんではないわけですよね?それでも、みんなでやる理由はなんですか?
和田さん:恐らく、人が集まる場をつくる意味を、みんながそれぞれ持っているからだと思いますね。それがわたしたち(シンクハピネス)でいえば、介護や医療がつながるきっかけづくりなんです。
シンクハピネスも、別にイベントをつくる会社ではありません。じゃあ、そもそも何のためにこういう場を作ってるかといえば、この地域に住んでる人の暮らしに溶け込むことで、訪問看護の利用者さんがそのまま来てくれたり、なにかあったときに「この人たちを頼ってみようかな」って、まだわたしたちのことを知らなかった人に、知るきっかけをつくりたいという想いもあります。
そんな風に時間をかけて、それぞれの暮らしのタイミングで、わたしたちを含め、医療や福祉のことを知ってほしいという考えで、ここまでやってきました。
だからこそ、コトおこしをする時に、日常から離れたハレの日をつくるよりは、「ケ」と「ハレ」のバランスを意識しながら、普段の暮らしの一部であるような場づくりを大切にしているんですよね。
そうすることで、来る人たちにとって日常の延長線上に感じられるような。むしろあまり意識をぜずに、自然とそこにいられるような場になっていくと思っています。こういう部分も、以前取材してもらった時に糟谷が語った村構想のカタチの一つだと思うんです。
ーーイベントが苦手で参加しずらいという人もいるし、好きな人だけが集まって、身内だけのイベントになることもありますよね。でも日常に溶け込んでいたら、どんな人にもフラッと行きやすい。この考えによるコトおこしは、地域づくりのロールモデルにもなりそうですが、他の地域でも同じような座組でやりたい人がいたら、和田さんに相談すればいいですか?(笑)
和田さん:そうですね、全然やりますよ。(笑)わたしたちも来年くらいまでに「この風景がいいよね」っていう人の総人口を増やして、今の自分の考え方を受け止めて、共感できるコアメンバーを育てていけたらと思っています。そうすれば、自分の体が空いて他の場所にも足を運べるようになるし、その地域なりの“やる意味”っていうのを一緒に考えたりもできると思うんですよね。それを元に、金額感や規模感、わたしたちがやっている座組でもやりたいっていうことであれば、どの地域でもできるんですよね。
そんな風に『たまれ万博』っぽいものが、いろんな場所ではじまって現象化するようなことになったら、自転車で行けるエリアでいつか同時に開催しても面白いかなって思ってますね。
イベントだけどその日は日常の延長にある。だからイベントが好きな人はもちろん、苦手な人も違和感なく参加できるという考え方。色んな地域で、こういった考え方のもと場づくりができたら、地域の人たちが自然と交わって、あちこちで「たまれ」のような村が出来ていくような気がします。
最終回となるVol.3では、和田さんがこの地域で活動することになったきっかけ、そして活動を通して気づいた場づくりの役割についてうかがったお話をお届けしていきます。
Vol.3はこちら
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