「音とともに熟成された味噌があるらしい。」
そんな話を聞いたら、みなさんはどう感じるでしょうか。僕は最初、「どういうことだろう?」と思いました。
今回お届けするのは、愛知県で約150年にわたり味噌づくりを続けてきた佐藤醸造の、カルチュラルブランド「KAKUMARUSA」が、Yui Onodera氏らとともに手がける『CIRCULAR RESONANCE』。“音と発酵”をテーマに、味噌づくりの現場とアートを結びつける、アート&サイエンス・プロジェクトです。
味噌蔵の中で音を流しながら熟成を行い、来場者は実際に蔵を訪れ、音や香り、味噌の味を体験することができます。
一見すると、かなりユニークな取り組みです。でも資料を読み進めていくと、面白いのは「音」そのものではないことが見えてきました。

味噌を“食べる”から、“体験する”へ
普段、味噌を選ぶときに、その味噌がどんな空間で熟成され、どんな時間を重ねてきたのかを想像することはあまりありませんよね。でも『CIRCULAR RESONANCE』が挑戦しているのは、そんな見えづらい部分に触れる体験をつくること。
木桶が並ぶ空間。
蔵に漂う香り。
発酵が進む時間。
蔵の中に響く音と、味噌の微生物へ伝えられる振動。
味噌そのものだけでなく、その背景にある文化や技術、土地の記憶、つくり手の営みまでを含めて味わう体験を目指しています。
約2年間の熟成を経て完成した限定味噌には、レコード盤を思わせるパッケージが採用され、QRコードから熟成期間中に蔵で再生されていた音源へアクセスできる仕掛けも用意されています。
味噌を買う。
味噌を食べる。
そこからもう一歩進んで、「味噌と出会う体験をつくる」。
そんな取り組みとも言えるかもしれません。
Circular Resonance〜循環する共鳴〜(体験動画)

伝統を守るだけではなく、届け方を考える
資料の中で印象的だったのが、「伝統を守るだけではなく、異分野との協働によって価値を翻訳し直す」という考え方でした。
味噌づくりの技術を変えるのではなく、これまで味噌にあまり関心のなかった人にも、その奥深さが届く方法を考える。
異なる分野との協働も、そのひとつなのだと思います。
実際、このプロジェクトは国内外で活動するクリエイティブディレクター/サウンドアーティスト・Yui Onodera氏との協働から始まっています。
食と音楽。発酵とアート。
見えないもの、消えゆくものをどうデザインするのか?
一見すると遠く見えるもの同士が交わることで、これまでとは違う角度から味噌の魅力に触れられる。そんな可能性を感じました。

『CIRCULAR RESONANCE』を〝今〟届けたい理由
今回気になったのは、「音で熟成させる味噌」という珍しい取り組みだったからではありません。
むしろ最初は、「なんで味噌に音なんだろう?」という素朴な疑問から始まりました。
でもこの取り組みを知っていくうちに見えてきたのは、音そのものではなく、その先にある想いでした。
どうすれば、味噌づくりの面白さや奥深さをもっと多くの人に届けられるのか。
どうすれば、普段何気なく食べている味噌と新しいかたちで出会い直すことができるのか。
味噌を味わうことはあっても、その背景にある文化や時間、微生物の働き、作り手の営みに触れる機会は、意外と多くありません。
このプロジェクトは、その問いに向き合った結果、生まれたもののように感じます。
『CIRCULAR RESONANCE』は、音や振動、空間、香り、試食といった複数の感覚を通して、見えにくかった発酵のプロセスを体験へとひらいています。
それは、味噌という食品の魅力を伝えるだけではなく、身近な食材とどのように向き合い、文化を次の世代へ届けていくのかを考える試みでもあるように感じました。
この記事が、いつもの食卓や身近な食材を少し違った目で見つめるキッカケになったら嬉しいです。
ーinformationー
CIRCULAR RESONANCE
Site / Production:佐藤醸造株式会社(KAKUMARUSA)
Creative Director / Producer / Sound Producer / Composer:Yui Onodera(CRITICAL PATH)
Movie:Top Knot(cmyk)
Design:PLATEO