2018.06.26. | 

[Vol.1]2人の淹れ手が織りなす、日本茶×カフェの新スタイル「Satén japanese tea」

西荻窪の駅からほど近い住宅街の一角に、今年の4月、一軒のお店がオープンしました。縁側のようなベンチがどこか懐かしさを感じさせ、以前からそこにあったかのように地域に溶け込んでいる「Satén japanese tea」。お茶の淹れ手“茶リスタ”である小山和裕さんと、コーヒーの淹れ方を極めたバリスタの藤岡響さんが展開する新たなスタイルの日本茶スタンドです。


一度は味わってほしい。ありそうでなかった、本格的な抹茶ラテ

「よくかき混ぜてからお飲みください」。

小山さんの言葉でストローをクルクルっと回すと、キレイに2層に別れていた鮮やかな濃緑と白色とがサーっと溶け合う。ワクワクしながら飲んでみると、濃厚なのにすごくスッキリした抹茶ラテの味わいが口の中に広がっていきました。「抹茶の味の爽快感を楽しめるのがアイスですね。甘みを楽しみたいのであればホットがオススメです」。

注文してから淹れた本格的な抹茶とミルクとが見事に融合したこの抹茶ラテこそ、2人の原点となった1杯なのです。 さて、日本茶の淹れ手である小山さんと、コーヒーの淹れ手である藤岡響さんがなぜ一緒に抹茶ラテをつくり、お店を開くことになったのか。ゆっくり聞きたいと思っていたのですが、昼下がりの時間帯とあって客足は途絶えることはなく、抹茶を点て、煎茶を入れ、ほうじ茶をプレスする小山さんの手はなかなか空きません。でも、その一つ一つの所作に無駄がなく、美しく、見ていて飽きないんです。

とはいえ、このままでは話を聞けないまま時間切れになってしまう・・・と若干焦っていたところ、小山さんが「やりながらでよければ話しますよ」と声をかけてくれました。お言葉に甘え、話を聞かせていただくことにしました。

 

「これから」がたくさんある。日本茶に見いだした可能性

まずは、バリスタに憧れていた小山さんが日本茶に惹かれたきっかけから。

 

小山さん:煎茶道の先生がやっているお店に行った時、別のお店と同じような淹れ方だったのにまったく味が違って、なぜだろうと。でも、学んだり味比べをしようと思ってもコーヒーショップほどお店がないんです。お店独自の焙煎方法や淹れ方があるコーヒーに対して、日本茶は茶葉や淹れ方もどこも同じ。日本茶はあまりにも幅がないことに気づいて、すでにたくさんいるバリスタの一人になるよりも、日本茶を淹れることが一つのツールになるんじゃないかと思ったんです。

 

日暮里にあった日本茶専門店と、表参道の「茶茶の間」で計2年半ほど働いた後、吉祥寺で日本茶とコーヒーのカフェ「UNI STAND」の店主に。そこに日本茶を飲みに来てくれたのが、ブルーボトルコーヒーでバリスタのトレーナーを務めていた藤岡さんでした。

 

小山さん:どうやったらコーヒーショップでも日本茶を出してもらえますかね、と僕から話したら、響さんもカフェで出されている日本茶を使ったドリンクに対して違和感を抱いていたそうでいろいろ質問してきて。お互いに話をする中で、本当に美味しい抹茶ラテとか作ったら面白そうだね、そしたらカフェとかで出してもらえるんじゃない?という話になったんです。

 

探求してたどり着いた、絶妙なバランスと和の質感

では、バリスタとしての道を究めた藤岡さんは、なぜ日本茶に関心を?

 

藤岡さん:コーヒーの仕事を長く続けていくうちに、休みの日は日本茶を飲むようになりました。アメリカの会社で働いていたので、逆に和の魅力を強く意識するようになっていて。欧米の形式のスタンドじゃなくて、日本らしい和のスタンドを作りたいと考えていた時に、小山君と出会ったんです。

 

そこから、本当に美味しい抹茶ラテを探求する試みが始まりました。

 

藤岡さん:小山くんが抹茶を数十種類、ミルクは僕が数十種類用意しました。抹茶とミルクのちょっとした比率や温度を変えながら抹茶の味が生きるバランスや和の質感を作り上げていく作業は、開拓していく感じがあって面白かったですね。すごく魅力的な作業でした。

 

ちょうどその頃にUNI STANDの閉店と、藤岡さんがブルーボトルを退社するタイミングとが重なり、2人で会社を作り、日本茶ブランドとしてSatén japanese teaを展開することに。そして2018年5月、西荻窪にお店をオープンしました。

話の合間に、お客様に「抹茶プリン、どうですか?」とにこやかに話しかけ、席を立ったお客様には「またお待ちしております!」と明るく見送る2人。オープンして間もないのにこんなにもたくさんの人が訪れるのは、本格的な日本茶ドリンクの味はもちろんのこと、二人がかもし出す柔らかくてホッとする雰囲気があるからに違いありません。(つづく)

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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