2021.06.15. | 

[Vol.2]和菓子職人と料理人。その共通項は「おいしい」を超えた喜びを創ること。「梅香亭」長沼輪多×「Mo:take」ヘッドシェフ坂本英文

和菓子職人の長沼輪多(ながぬま・りんた)さんと「Mo:take」ヘッドシェフの坂本英文(さかもと・ひでふみ)が初めてコラボしたのは、2020年11月29日に開催されたプチマルシェでした。地元産の柿を使った和菓子を創作し、販売後はすぐに売り切れに。今回は二人の出会いから、この柿の和菓子の開発ストーリーを語っていただきました。

食べる楽しさに
触れる機会を増やしたい

まずは二人の出会いについて、伺いました。

 

長沼さん:昨年ですよね。Yuinchuさんが運営する中目黒の「OPEN NAKAMEGURO」でブレストミーティングがあって、その時に坂本さんと出会ったんです。

 

坂本:そこで一気に話が進んで、「一緒に何かやりましょう」ということになって。その後、「OPEN NAKAMEGURO」のために輪多くんがどら焼きをつくってくれたんです。好評でしたね。

 

長沼さん:もともとMo:takeさんのケータリングにも興味がありました。僕自身も和菓子のケータリングをしていて、日本の風土や歴史に合わせて生まれた和菓子を、いろいろな人に知ってもらうことに可能性を感じていたんです。お話を伺うと、坂本さんは商品開発も数多くされている。これは何かご一緒できたら面白そうだなと思いました。

 

坂本:僕たちの活動の根っこには「楽しい食体験を提供したい」という思いがあります。ただ単に食べるだけでなく、食べてみて驚きがあったり、そこにいる人たち同士で「これ面白いね」と会話が弾んだりするような体験も含めて提供したい。ケータリングも商品開発も、「楽しい食体験を提供したい」という想いの表現方法の一つなんです。

 

長沼さん:僕には、和菓子に触れる機会を増やしたいという思いがあります。そのために、和菓子に求められていることを表現しつつ、楽しく召し上がっていただけるものを提供したいと考えています。
たとえば、外資系企業のパーティだったら和モダンのイメージで、お寺でお茶会を開催するとなったら伝統的な和菓子をというふうに、お客様の思いに応えられるように、そのシーンや雰囲気に合わせて提供することを大切にしています。

 

 

地元の柿から作った
1日限定のコラボ和菓子

昨年11月に開催されたアグリタリオのプチマルシェでは、二人のコラボレーションで国分寺のアグリタリオの柿を使った和菓子が生まれました。このコラボはどういったきっかけで始まったのでしょうか。

 

坂本:国分寺を中心に活動しているアグリタリオのプチマルシェにはスタート時から関わっていますが、2回目になる昨年11月には、食の総合的なプロデュースを任せていただくことになりました。
初回に好評だったお弁当の販売は既に決まっていたので、今回はちょっと変わった切り口のものを提供したい、と考えた時に「輪多くんがいる!」とひらめいたんです。
ちょうど柿の時期で、農家さんが大切に育てていた柿があったので、その柿を使ってオリジナルの和菓子を作ってもらうことになりました。

 

長沼さん:柿は和菓子の中でもわりとポピュラーな果物なので、イメージしやすかったですね。果物を生地に使うか餡に使うか、素材の活かし方はいろいろありますが、今回の柿の和菓子では餡に使うことにしました。

僕が和菓子を作る時にまず考えるのは、「どうすればお客さまに喜んでもらえるだろう」ということです。あの時はまず、お客さまがビジュアル的にも一目で柿を使っているとわかることが、とても大事だと思いました。そこで柿をモチーフにした形に決めました。
もう一つ考えるのは、素材のポテンシャルをいかに活かせるかということですね。柿の和菓子の時は、生地にするのか餡にするのか、餡にする場合でも羊かんみたいにするのか、練り合わせるのか、などいろいろ考えました。

 

 

お客さまが食べるシーンを
想像しながらのレシピ作り

坂本:輪多くんが手間をかけて作ってくれた柿の和菓子はプチマルシェの1日限定で販売されたのですが、すぐに売り切れになりました。目の前であれよあれよと売れていくからびっくりしましたよ。

 

長沼さん:お客さまに喜んでもらえたということなのでしょうか。嬉しかったです。

 

坂本:実際にお客さんの様子を目の当たりにすると、嬉しいですよね。特に今回のプチマルシェでは、主催の島崎さんの「地元の人に楽しんでほしい」という想いが一番にありましたからね。

 

長沼さん:僕もそれを感じて、とにかく地域の方々に喜んでもらえる商品をつくりたいと思って進めました。「梅香亭」でも素材の産地にこだわっていることもあり、地元産の柿を使えたことも魅力でしたね。
実は和菓子屋って、お客様の反応に触れることがほとんどないんですよ。完成したものをお買い上げいただいて、その後はご自宅で召し上がったり贈り物として誰かのもとに届いたり。目の前で食べていただくことは基本的にないんです。

 

坂本:ああ、そうかもしれませんね。そこは、お客様の顔が見えるレストランやケータリングとの違いですね。

 

長沼さん:だから、そこは想像するしかないんです。買ってくださるお客様が、どんな場でどんなふうに召し上がるのか、想像しながらレシピを作ることになります。難しいですが、大きなやりがいを感じています。

 

次回は6/22(火)公開です。長沼さんと坂本がアイディアを形にするための「引き出し」の作り方、また、今開発を進めているという新しい和菓子についてもお話いただきます。

 

– Information –

梅香亭
https://www.instagram.com/baikatei1958/

ライター / たかなし まき

愛媛県出身。業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。人の話を聴いて、文章にする仕事のおもしろみ、責任を感じながら活動中。散歩から旅、仕事、料理までいろいろな世界で新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。

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文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

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