SERIES
Food Future Session
2021.07.08. | 

[Vol.4]旬が短い。だからこそ高まる価値とその魅力【べジパング × Yuinchu】

「Food Future session」という壮大なタイトルのもとスタートした初めての座談会。記事もいよいよ最終回です。希少品種「八ヶ岳生とうもろこし」の販路を切り開いている株式会社べジパングの折井祐介さん、柳沢卓矢さんと、Mo:takeの小野正視、坂本英文との座談会は、4つのテーマそれぞれから始めたはずが、どのテーマから始めても最終的には同じような話になってくるようです。

座談会の終盤に話題に上ったのは、農産物とは切ってもきれない「旬」について。旬の短い農産物の価値をどう高めていくことができるのでしょうかーー。

今回の座談会には、事前に複数のトークテーマをおみくじ形式で用意。登場4人それぞれに1枚ずつ引いてもらい、引いたテーマについて、4人で話していただきました。

今回4人が選んだテーマはこちら。

ー食と向き合う時間の最大化/折井さん
ー時短についてのトピック/坂本さん
ースキルと食で広がる可能性/柳沢さん
ー自らつくれること、つくれることの重要性/小野さん

旬が短いからこそ、フェスのように盛り上げられる

 

小野:前回から続く時短についてのトピックですが、僕は今、個人が個人らしくいるために、合理的にする仕組みを作っています。

例えば、コーヒースタンドを立ち上げたいと思った時、しっかりとしたクオリティを担保しつつ、できるだけ合理的で時短で立ち上げるオペレーションがあれば、そこに時間をとられずに、その場所をどういう場所にしたいのか、地域の人にとってどうありたいのか、という本質的なところと向き合う時間がとれると思うからです。

同じように、Mo:take LABOでこれから坂本とやりたいと思っているのは、料理人じゃない人でも、ベースとなる商品の製造・生産体制を作っておくことで、それをそのまま出したり、少し手を加えて店舗オリジナルにアレンジできるという仕組みです。その分生まれた時間を、お客さんとのコミュニケーションの時間に当てたり、どう食べてほしいかというところに向き合う時間にして欲しいという思いがあります。

そこには坂本さんの瞬発力が必要なんですけどね。

 

坂本:めっちゃプレッシャーじゃん(笑)

アイデアを自動生成する機械はないですけど、切羽詰まるからこそ出るものもあるし。難しいオーダーを受けるからこそ、閃くものもあるし。「八ヶ岳生とうもろこし」を使って商品開発した「もろこしシェイク」も、そもそも旬の期間が2ヶ月しかないから商品開発期間はわずか1ヶ月でしたしね。

 

折井さん:確かに、旬が短いというのは確かにデメリットでもあるけど、その期間しかないからこそ価値を産むと言われるとその通りだと思うんですよね。

とうもろこしはアメリカでもたくさん作れます。でも、アメリカから船便で持ってきたら鮮度は絶対に落ちます。なのでアメリカとの戦いにはならないし、「このタイミングが旬だから八ヶ岳に来てね」ということもできる。呼子のイカもそうですけど、最高潮を味わうためにここに来てください、と言えるようになれば、それが観光資源になると僕は思うんですよね。

 

小野さん:デメリットにもメリットにもなるということですよね。

 

坂本さん:それがイベント的になりますよね。

 

折井さん:毎日やってるフェスはないじゃないですか。その時だけの価値や魅力があるからこそのフェスなんですよね。

 

 

味やお金だけではない、野菜づくりで味わう充足感

折井さん:ここまで話を聴きながらびっくりしたのが、小野さんが食を外に向けたものとして捉えていることなんですよね。普通、レストランや料理人はいかにおいしい料理を作るか、農家はいかにおいしい野菜を作るか、というところに集中しますよね。

でも、食も人が豊かに生きていくための一つのコンテンツと捉えると、出会いの場とか、大切な時間を作るとか、価値が無限に広がっていくんですね。農業も、野菜を作るだけで捉えてしまったら出荷して終わりで、お金を得ることの価値しか感じられないけれど、でも僕らは直売を始めたことによって、人に喜んでもらえるという新たな価値を得られるようになりました。

 

小野:新たな価値を得て、その価値をどんどん広げていくってものすごく大切なことですよね。

 

折井さん:初めて野菜を作って、芽が出て大きくなっていく姿を間近で見た時に、人間としてのものすごい充実感を感じたんですよ。作るということは、野菜を作っている人の生き方、価値にも影響して、携わった人が感じる充実感や、人間的に満たされる部分も間違いなくある。でも、それが価値化されていないのを感じますね。

 

小野:それ、すごく大事ですよね。世の中は分業することで合理的になったけれど、喜びを感じられなくなった部分もありますよね。自分で、合理化するところと、一方でここには手をかける、というところを決めていかないといけないですね。そして、時間をかけた方がいい部分の価値をどうやったら伝えていけるかという点に、お互い取り組んでいきたいですね。

 

 

初めての座談会、いかがでしたか?

小野さん:初めての座談会にご参加いただきありがとうございました。最後に、今回の座談会に参加された感想などありましたら、自由に発言してください。

 

柳沢さん:テーマを持って語り合うってことをあまりしたことがなかったので、お互い自由に話し合っているうちに自分たちの考えがより明確になり、まとまってきた感じがあります。

自分の発言に同意をもらったり、さらに「こういう考えもあるよね」と言ってもらえたことで、自分の考えがさらに進化していくのも感じられました。

 

折井さん:テーマに基づいて考えてみると、自分たちはこういう考えだったんだな、こういうことを大事に思ってるんだな、ということが見えてきますね。自分たちの考えを再認識する貴重な機会になりました。

 

小野:ミーティングでも飲み会でも、わかりやすいアウトプット、インプットに終始しがちですが、今日はテーマに沿って自分を掘り下げることができたので、起業前の気持ちに戻ってしゃべることができました。

 

坂本:4人で顔をそろえて話してみて、根底に思っているところは同じだからこそ、テーマとしての文字面が全部違っても、結果的には行き着くところが同じになるんだなあというのを感じて、すごく面白かったですね。

柳沢さん、折井さん、ありがとうございました!

 

 

今後も、食の未来について語りあう座談会を定期的に開催していきます。どんなゲストが登場するのか、楽しみにしていてくださいね。聞いてみたいテーマなどありましたら、ぜひお寄せください。

 

– Information –
http://hamarafarm.com/

 

Food Future session ゲストプロフィール

折井祐介(おりい・ ゆうすけ)
株式会社ベジパング兼HAMARA FARM代表
高校卒業後、カナダの短大に留学。帰国後、東京で個別指導塾の講師と遺跡発掘のアルバイト生活後、地元に戻り結婚式場、大手旅行代理店に就職。2011年に旅行代理店を退職し就農。「HAMARA FARM」を設立。2015年に生鮮野菜卸会社の株式会社ベジパング設立。夢はトレジャーハンターになること。

柳沢卓矢(やなぎさわ・たくや)
株式会社ベジパング取締役・HAMARA FARM代表
Mark&Burns Consulting合同会社代表
東京の専門学校で会計士の知識を学び、大手自動車メーカーの営業として就職。後に故郷長野へ戻り同自動車メーカー、大手音響機器メーカーでキャリアを重ね、折井氏とHAMARA FARM・株式会社ベジパングを設立。2018年には東京でパッケージやVMD、税理士と共に財務やFPを含め提案するMark&Burns Consulting合同会社を始めた。侍が好き。愛読書は新渡戸稲造の「武士道」。

ライター / 平地 紘子

大学卒業後、記者として全国紙に入社。初任地の熊本、福岡で九州・沖縄を駆け巡り、そこに住む人たちから話を聞き、文章にする仕事に魅了される。出産、海外生活を経て、フリーライター、そしてヨガティーチャーに転身。インタビューや体、心にまつわる取材が好き。新潟市出身

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Mo:take MAGAZINEは、食を切り口に “今” を発信しているメディアです。
文脈や背景を知ることで、その時、その場所は、より豊かになるはず。

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みんなとともに考えながら、さまざまな場所へ。
あらゆる食の体験と可能性をきりひらいていきます。

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