SERIES
美味しい科学 CAST × Mo:take
2026.02.05. | 

[最終回_Vol.1]科学でつくる、最高の一皿 −パスタ実践編

科学の世界を面白く、わかりやすく各地域で伝えている東大CASTとMo:takeがお届けする、食を科学の視点で紐解く連載企画「美味しい科学」。第1回目は「醤油」、第2回目は『切る』、第3回目は『加熱』、第4回目は『乳化』、そして第5回目は『味覚』というテーマで、科学的な視点をご紹介してきました。

ついに最終回を迎えるこのシリーズも第6回目。今回は「美味しい科学・実践編」をお届けします!これまで学んだことを駆使して実践すれば、本当に理想の味や状態の料理ができるのか?

今回はCASTさんからこれまで教えてもらったことをもとに、Mo:takeの坂本が今回の最終回にふさわしいメニューを考案!そのメニューを作りながら実証していきます!

科学からみた調理工程で、理想のパスタづくり。試してCASTさーん!

−−CASTさん、いよいよ今回で最終回となりました…。これまで科学視点で学んできた醤油、切る、加熱、乳化、味覚編でのお話しは、私たちが普段当たり前のように感じている「美味しい」にはちゃんと理由があって、“料理を理想の状態にしていくためのポイントにもなるんだ”ということを知ることができました!

今回は、今まで学んできたことを駆使して、実際にお料理しながら実証するという、最終回にふさわしい内容になりますね!

CASTさん:そうですね!あっという間に最終回となりました。今回は、これまで学んできたことが網羅できそうなメニュー、美味しい科学的「玉ねぎとかつお節の和風ペペロンチーノ」を作りながら実証していきます!

このペペロンチーノの調理工程の中には『切る』『加熱』『乳化』が大事なポイントとなってきます。まずはこの工程にあわせて、これまでの科学的な視点をおさらいしていきましょう!

−−よろしくお願いします!

 

切り方で近づける理想の“味”と“食感”

CASTさん:まず、『切る』では、食材にある繊維を切って壊すことで、繊維の中にある、食材の香りやうま味の成分が引き出されるということを学びました。

 

−−こうして学ぶまでは、『切る』ということは単純だと思っていましたが、知ってみるとやっぱり奥深くて、大事なポイントになっているんだっていう印象を受けたのを覚えています。繊維の切り方にも工夫がありましたよね。

CASTさん:そうですね!繊維に沿って、つまり繊維を残して切った場合は、食感を感じるような仕上がりになります。この切り方は炒め物やサラダなど、食感を楽しみたいときにおすすめです。

一方で、繊維に対して包丁が垂直になるように、つまり繊維を断つように切った場合は、香りやうま味も出やすくなります。そして、食材が柔らかく、口当たりがなめらかになります。断ち切った繊維から味が染み込みやすくなるため、スープや煮込み料理のときにおすすめですね。

 

温度と時間を制するものが、『加熱』を制する!

CASTさん:次に加熱のおさらいをしましょう!『加熱』では、食材をベストな状態や、食べても安全な状態にするためには、温度と時間を意識しなければいけないことを学びました。同じ食材であっても、温度と時間のバランスを意識することで、料理にあった理想の状態にすることができるということでしたね。

 

乳化してると美味しさもUPする!?

CASTさん:そして『乳化』では、本来混ざらない「水」と「油」を、乳化剤となる成分を踏まえてバランスを整えることで、混ぜ合わせられることを学びましたね。

 

−−はい!乳化によって味や舌ざわりが変化し、味が調和して美味しく感じられるようになるというのも興味深かったです!

CASTさん:そこが面白いところですよね!あとは、料理に合わせて油と水の量を調整することが、見た目や味、なめらかさに大きく影響するというのもポイントでしたね!

というわけで、今日は今お話ししたようなところを踏まえて実際にお料理をしていきますよ!それと、今回作るお料理は「玉ねぎとかつお節の和風ペペロンチーノ」ですので、このベースのペペロンチーノができたら、和風にするためにかかせないお醤油が登場します!

 

生醤油、1年の時を経て、抽出

CASTさん:醤油は、第1回「醤油」で学んだ醤油の作り方をもとに、1年間大切に熟成させてきた「生醤油」を使用します!

−−やはりあのお醤油ですよね!!お醤油キットをつかって、大豆と小麦に麹菌を繁殖させた「麹」と、塩と水をペットボトルに入れ、発酵と熟成をスタートしてから、微生物が活動できるよう、仕込んだ当初は毎日混ぜて、それから天塩にかけてMo:take STUDIOで愛でてきたお醤油…いざ開封!そして濾過ということに嬉しさが込み上げてきます!

 

−−1年間かけてようやくできたお醤油ですが、こうして見てみるとそんなにたくさんの量は搾り出せないものなんですね。だからこそ、この一滴一滴の重みがあるなぁと感じますし、搾りたての生のお醤油は、鼻に抜けるような濃厚な風味の強さがあり、とろみも感じますね!お料理に使うのが楽しみです!

 

CASTさん:そうですね!ワクワクしますね!というわけで、お醤油を搾って材料の準備が整いましたので、お醤油が新鮮なうちに早速始めていきましょうか!今回使用する材料はこちらです!

・にんにく
・玉ねぎ
・唐辛子
・オリーブオイル
・醤油
・鰹節
・パスタ麺(乾麺)

それでは、早速『切る』ところから始めていきましょう!

 

手順1:にんにくの香り、玉ねぎの食感を意識して『切る』

CASTさん:それでは、「玉ねぎとかつお節の和風ペペロンチーノ」を作っていきます!
ペペロンチーノの正式名称は「アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ」というそうです。どんな意味か知っていますか?

 

−−はい!実は過去にMo:take MAGAZINEの記事「どこよりも細かいレシピ」でも紹介していたので知ってます!アーリオはにんにく、オーリオはオリーブオイル、そして、ペペロンチーノは唐辛子。つまり、にんにくとオリーブオイル、唐辛子のパスタのことをペペロンチーノというんですよね!

CASTさん:正解です(笑)。そして今回は「和風」ペペロンチーノということで、先ほどの醤油と、玉ねぎ、かつお節も加えていきます!玉ねぎは”グルタミン酸”、かつお節は“イノシン酸”という「うま味成分」をもっています。こうして味覚編で勉強したうま味成分もちゃんと意識していきますよ!

 

−−なるほど!どんな風になるのか、完成が楽しみです!

CASTさん:それでは、にんにくと玉ねぎを切るところから始めます!まずは、ペペロンチーノでは“にんにくの香り”を立たせるのが理想なのですが、そのためにはどうしましょうか?

 

−−香りを出すには繊維を断つようにするのでは?

CASTさん:その通りです!繊維を断つように切るんですが、今回はより香りやうま味が出るようにみじん切りにします!では早速みじん切りにしていきましょう!ここでのポイントは、このあと加熱のために、にんにくの大きさをできるだけ揃えて切ることです。

それでは、次は玉ねぎを切っていきますよ!今回は、玉ねぎとかつお節がメインの具材で、玉ねぎの食感も残したいので、まず繊維を断つように玉ねぎを半分に切り、そのあと、繊維に沿って同じ幅のサイズ感で切っていきます。

 

−−普段の料理でも、“歯ごたえを感じるように”と意識することで、切り方を工夫しよう!というマインドになりますね!

 

手順2:にんにくの香りを引き出すための『加熱』

−−次のステップは加熱ですね!加熱は温度を意識しながら理想の状態に持っていく!そんなイメージですが、どうでしょうか?

CASTさん:ペペロンチーノといえばにんにくですが、このにんにくの香りを立たせつつ、焦げないようにしていきたいと思います。そのためには、ひとつポイントがあるんです。なんだと思いますか?

 

−−なんでしょう?じっくり低温で火を入れていく??

CASTさん:いいですね…間違いではないのですが、厳密にいうと、オリーブオイルを常温の状態から、にんにくと一緒に加熱していくことで、徐々に温度が上がり、にんにくの香りやうま味がオリーブオイルに移りやすくなります。オリーブオイルを熱した状態でにんにくを入れて加熱すると、にんにくが焦げやすくなってしまうんですよね。

 

にんにくが焦げないように加熱するために

−−なるほど!熱い油に、にんにくを入れると、フライのように揚げる感じになってしまう…そんなイメージですね!

CASTさん:そうですね、そして今回は、にんにくの香りが立つペペロンチーノを目指しているので、オリーブオイルに、にんにくの香りを移したいんです。それも踏まえて、じっくりと低温で火をかけるのが良いと思います。

あとは、唐辛子の辛さも少し加えるために、フライパンに入れて、にんにくが浸るくらいにオリーブオイルを入れたら、じっくり加熱していきますね!

 

−−うわ、すごい。部屋中にいい香りが漂ってきました!

 

CASTさん:いい香りですね!でも、このまま熱を加え続けるとオリーブオイルの温度がこのままどんどん上がってしまい、にんにくが焦げてしまいます。そうならないように、にんにくがきつね色になる少し手前で、温度を下げるためにゆで汁を少し加えます!

 

−−おぉ!フライパンにゆで汁を入れたことで、さっきまで賑やかだったフライパンが静かになりましたね(笑)。

CASTさん:そうですね、そしてにんにくの香りがオリーブオイルに移っていったタイミングで、今度は玉ねぎを入れてヘラで全体をかき混ぜながら馴染ませて、うま味を出すために、少しグツグツと火を入れていきます。

 

切り方によって変わる香りや食感。
温度と時間を意識することで引き出される、にんにくや玉ねぎのうま味。

ここまでの工程だけでも、普段何気なく行っている「調理」が、
いかに科学的な判断の積み重ねで成り立っているかが見えてきました。

しかし、「玉ねぎとかつお節の和風ペペロンチーノ」を完成させるために、
もうひとつ欠かせない重要な工程があります。

 

それが、水と油をつなぎ、味をひとつにまとめる「乳化」

 

後編となるVol.2では、いよいよパスタづくりの核心ともいえる乳化の仕組みを実践しながら、科学の視点で“最高の一皿”を完成させていきます。

→Vol.2はこちら

– Information –
東京大学サイエンスコミュニケーションサークル『CAST』

ライター / Mo:take MAGAZINE 編集部

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