幼少期から憧れていた“料理人”への道
今回訪れたのは、これまでMo:take MAGAZINEにも登場していただいているドムさんが2025年9月にオープンしたお店「Dominic」。Vol.1では、ドムさんの幼少期のお話からお店をオープンするまでの足跡をたどっていきます。
ーードムさんのご実家は、長崎県で地元の方々に親しまれてきた洋食屋さんだったと伺っています。ご自身も今、お店を構えられていますが、幼少期からご両親が働く姿を身近で見て育ってきたのでしょうか?
ドムさん:そうですね。実家が洋食屋ということで、飲食に近しい環境で育ってきました。幼少期から、父と母の働く姿を身近に見ていたということもあり、周りの子たちが「ウルトラマンになりたい!」と言ってた頃には、僕は「料理人ってかっこいいな!」という憧れがずっとありました。そういった想いは親にも当時から言ってましたね!
ーーお父様、お母様の姿を見て憧れてたんですね。
ドムさん:はい、料理人への夢は、そのまま大人になるまで逸れることなく続きました。これまで一途に追い求めてきた夢に向かって、ただただ一途に続けてきただけだと思っています。そして、両親からは、お店を継続していく難しさや、大切さも伝えられていた印象がありますね。
ーー実際にお店を続けてきたご両親だからこそ伝えられることですね。子供の頃に一緒にキッチンにはいって、料理人であるお父様に料理を教えてもらった思い出もあるんでしょうか?
ドムさん:いや、父は家ではキッチンに立たないタイプの料理人だったので、直接教えてもらうことはあまりなかったんです。でも、ある時小学校の家庭科の授業でミートソーススパゲッティを作ることになったんです。 父が洋食の料理人だったので、ミートソーススパゲッティってどうやって作ったらおいしいか聞いたんですよね。
その時、父には、野菜や肉のそれぞれの食感を残すために、人参や玉ねぎを粗めに刻んで作った方がいいというアドバイスを貰いました!そして、父からのアドバイスを忠実に守って作ってみたら、先生にかなり褒められたんです! その時、父の凄さを改めて感じたことを今でもよく覚えてます!
実は、実家(長崎)の洋食屋は、僕が通っていた学校はもちろん、周辺地域では先生も含めて、みんなに知られていたんです。僕はその“洋食屋の息子”として認識されていたので、ミートソーススパゲティで、なんとか面目を保てたような思い出です。(笑)
ーーなるほど!ひと手間かけて美味しい料理をつくる環境が、身の回りにあたりまえにある子供時代を過ごしてきたんですね。

管理栄養士の大学に進み、学園祭で挑んだ“違和感”
ーー料理人への道は、学校を卒業してすぐ進み始めたのですか?
ドムさん:いえ、高校卒業後はすぐ料理人という道は選択せず、まずは将来料理人になるために必要だと思っていた、管理栄養士免許が取得できる大学に行くという選択をしたんです。
ーー本格的に知識を学べる大学だったんですね。
ドムさん:その大学の学園祭で、今の自分の価値観に繋がるような経験があったんですよ!
僕が行った大学はもともと管理栄養士の学部から始まったような大学で、周辺地域の人にも管理栄養士のイメージが定着している大学だったんです。だけど、管理栄養士の学部は、管理栄養士の国家資格取得を目指す学部だったため、学園祭への参加はあまり活発ではありませんでした。
でも、僕の中では少し違和感があって、、、 そもそもこの大学には周辺地域の方々から管理栄養士の学校っていうイメージがついている…でも学園祭に来ても、 管理栄養士の学部の出店がないのはおかしくないか?なぜみんなそこに違和感を感じていないのか?と疑問を持ち、ゼミのメンバーと話していたんですよ。
ーー確かにそのイメージを持っていたら、管理栄養士らしい屋台があるって期待して行っちゃうかもしれませんね!
ドムさん:ですよね!なのでゼミのメンバーのみんなに声を掛けて管理栄養士学部で唯一の出店をすることにしたんです!初の試みではあるけど、どうせやるなら、お店をやるようなつもりで、“ちゃんと売上も意識して取り組もう”と、みんなで気合いをいれて取り組みました!
ーーなるほど!いいですね!!そこで何を出したんですか??
ドムさん:ちょうどその当時、塩麹が少しづつ注目されだしていた頃だったので、ピザ生地に塩麹を練り込んで、大学近隣の福岡県糸島の野菜を使って、糸島野菜と塩麹のピザをみんなで開発して、それを出しました。
そうしたら予想以上の反響があり行列が絶えず、売り上げもしっかり出すことができたんです!おまけに、なんと学園祭で出店した店の中から、優秀な店舗に贈られる学長賞をもらったんです!!
ーーふとした疑問からのスタートで、みんなで想いの認識を合わせて一丸となって行動したということが、結果いい形になったのはすごいですね。
ドムさん:確かにそうですね(笑)今思い返すと、その頃からずっと同じ想いを持ち続けてるんだなと改めて思いますね。今でも必然性がないことや、矛盾があることに対して気になってしまうんです。
ーーそうした違和感を持っているからこそ、ドムさんらしい価値観が生まれているのかもしれませんね。

胸を張って料理を提供する、自分らしい“料理人”
ーー学生時代になってから、学園祭の時のように、誰かのために料理を作ることも次第に増えていったのでしょうか?
ドムさん:まだ、その当時は誰かのために作るってことはそんなになかったですね。そもそも僕の場合は、料理をすることの楽しさをもちろん感じていましたが、どちらかというと子供の頃の想いから一貫して、 「料理をつくる楽しさ」よりも「料理人になりたい」がやっぱり先だったんですよ。
ーーそうなんですね!子供の頃からの想いは根本的には変わらないというのも、すごいです!ちなみにその当時、料理人になったら料理とこんな風に向き合っていこうなど考えていたことはありましたか?
ドムさん:そうですね。当時は色々な要素があったんですが、その中でも一番強い想いとして持っていたことはありますね。それは、自分がお客さんにこの状態で食べてもらいたいと思って作った料理が、しっかりとそのタイミングでお客さんに提供できて、ベストな状態で食べてもらうということです。そういった想いは今でも変わっていませんね。
以前、コンセプチュアルなレストランで働いていた時期に、そのお店で出していた「サスティナブル」や「エコ」をコンセプトにしているような料理に対して、料理をしながら自分の中で、そのコンセプトを十分に咀嚼しきれないまま料理を出していることに、違和感を感じていました。
自分の中で感じた矛盾をそのまま許容しようとすると、自分の性格的に、その状態では胸を張って料理を出すことができず、それがストレスになっていました。僕の性格的に、自分の中で違和感があるものに対しては、心の底から真剣に取り組みきれないっていう性格なんですよね。

ーーーーそうなんですね!やはりその自分の中に違和感がある状態では難しいこともあるんでしょうね??
ドムさん:そうですね。やはり自分が取り組みたい価値観について言うなら、自分がこれだと思って提供するものに関しては、自分自身で責任を取らなければいけないと思うんですよね。それが今、自分のお店で提供できるようになって、その自分の価値観を大切に自分主導で料理を提供するようになれたと思ってます。
だからこそ、今このお店を作ってどんな風にこの形に行き着いたのか、自分の言葉でしっかりと説明ができるんです。その部分のストレスがないのが、僕にとっては心地良いのかもしれませんね。
ーーそうなんですね。大変なところもあるとは思いますがドムさんにとって、よい方向に進んでいるんですね!
ドムさん:技術的なものとか、能力的な部分で足りないなと感じることは日々ありますが、今、自分のお店をもって料理を提供できていることに対しては、納得して取り組めていますね!

たどり着いた、自分の店をもつ選択
ーー今のドムさんから見て、幼少期から想い続けた理想の「料理人」像に対する変化はありますか??
ドムさん:そうですね、これまで色々な経験を経てかなり変わりましたね!幼少期は、イタリアンやフレンチのようなジャンルに則ったレストランのシェフ、そんな姿を想像し、憧れていました。けれど、実家の洋食屋で見てきたことや、その時代背景、そして自分自身がさまざまな形で「料理人」という仕事に関わってきた経験を重ねる中で、今では考え方ががらっと変わりましたね。
ーーどのように変わったのでしょうか?
ドムさん:一つは、店舗を持たない「料理人」という選択肢があることを知ったことですね。 店を構えるとなると、どれだけ準備をしても、どうしても最初に大きなお金が必要になりますし、ビジネスとしては博打に近い側面もあると思っています。なので、いきなり大きく構えるのではなく、まずは転ばない規模から始めて、徐々に広げていく。 そんな形でやっていきたいと思うようになりました。
ただ、周りの人達や環境に触れていく中で、そのやり方だけが「料理人」としての生き方ではないんじゃないかと思ったんです。フードスタイリングや撮影用の料理作り、そしてケータリングなど、「料理人」として活躍し、やれることはレストランのような飲食店だけではないということもわかってきました。
ーー確かに、今はさまざまな形で活動できる選択肢がありますよね。その中で、最終的に「お店を持つ」という現在のかたちに至るまでに、何かきっかけがあったのでしょうか?

ドムさん:そうですね。フードスタイリングや撮影用の料理作り、そしてケータリングなどお店を持たない様々な形を実際に経験し、料理というものに触れてきましたが、やはり自分は飲食店がやりたいということに気づきました。
ただ、そう思いたって行動を起こそうとしていた時に、ちょうどコロナ禍が始まり、新規で飲食店をつくることがなかなか難しい状況になってしまいました。そこで、テイクアウトでお弁当を販売するという方向にシフトしたんです。
自分のこだわりを詰め込んだお弁当事業ができ、そのお弁当事業も好調で、大型の商業施設に出店するっていう話もいただきました。それに向けてチームを作り、そこをゴールに見据えてやっていたんです。けれど、大型の商業施設に出店した直後にチームメンバーが変わるトラブルなどもあり、そういう業態の難しさも感じたんです。
僕自身が自分の価値観にこだわってやりたいとなると、やはり自分で責任を持ってやり通さなければいけない、ということに改めて気づいたんですよね。そう気づいてからは、やはり自分自身が責任を持ってやれる場として、まずは1から飲食店を自分でつくることが必要かなと思ったんです。

世田谷線沿い、松蔭神社前との出会い
ーー自分の店をオープンすることを決めたわけですが、店を構える場所はどのように探したんですか?
ドムさん:お店を出したいエリアはなんとなく絞ってはいたんですが、実はデリバリーサービスの配達の仕事をしつつ、都内を見て回って探していました(笑) デリバリーサービスの配達の仕事だったら、自分の意思とは別に見たことないエリアに配達で回れる事に気づいたんです!
ーーすごい!そんな探し方が!!(笑)
ドムさん:それで、松陰神社通りの商店街にある今のお店に出会ったんです!
個人店が多く、このどこか温かさを感じる商店街の雰囲気に「絶対ここだ!」とピンときました!今日、みなさんも来られて知っていると思うんですが、松陰神社駅には世田谷線しか止まらないんです。だからこそ、このゆっくりと走る路面電車の世田谷線が、あくまで僕の勝手な印象なんですが(笑)、この街の空気感が、自分のやりたい店のテンポと合っている気がしたんです。あと、松陰神社はあまり大手企業が参入しない商店街らしいんです。だから個人店が多いようですね。
ーー確かにチェーン店はあまり見かけないですね!そうした背景もこの街らしさを作っているのかもしれませんね。そんな街の中でドムさんはどんなお店にしようと考えたんですか?
ドムさん:ここでは、ゆっくりとお料理を楽しんでもらいたいと考えていました。お店のコンセプトが薪料理なので、スパスパと料理が提供されるようなお店ではありません。ただ時間はかかるけど、火を見ながらゆったりと待てるようなデザインにした店内で、ゆっくりと流れる時間も楽しんでもらえるようにしています。
せかせかとした雰囲気は、薪料理とはアンバランスになってしまうと思っていたので、お客さんがゆったりと待てるという雰囲気をつくれるように常に心がけていますね。それと、もともと店は当分の間は、従業員も雇わず僕一人でやる想定だったので、料理を出すのがゆっくりでも、世田谷線に乗る人たちなら許してくれそうだなと。(笑)

古き良き、地域の人に愛されていた物件
ーーオープンしてちょうど3ヶ月経った(※取材時)と思いますが、お店の今の状況や来られたお客さんの反応はどんな感じですか?
ドムさん:今はふらっと外食に来てくれる近所の人たちが多いですね。 でも、週末に遠方から「なんだなんだ」と興味をもって来てくれる人が少しずつ増えてきた印象です。そして今は、このお店にとっては、薪焼きというコンセプトに対して、そして『Dominic』としてどんな料理を提供するのかを知って、わかってもらう段階だと思っています。
ありがたいことに「薪焼きって初めてでしたがこんなに美味しいんですね」「炭とまた違うんですね」という反応も頂けてますね!
ーー近所の方もお客さんとして来られるんですね!そこから交流も生まれていますか?
ドムさん:そうですね!ゆっくりとした雰囲気のお店なので、結構(お食事を楽しんでくれている)お客さんとお話する機会も多いですね。 実はこの建物は、以前は街では有名な中華料理屋だったらしいんです。「松陰神社といえばここ」という店だったようで、近所の方たちが興味を持ってご挨拶に来てくれますね。
松陰神社通り商店街には、昔から長く続いているお店と、僕ら世代のお店が共存していて、その中でも若手の層で頑張っていこうという繋がりもあって、先輩の方々もとても優しいんですよ。
近所の老舗の女将さんが、「今日は旦那がいないからご飯作りたくない」と言いながら、よく1人でコロっと食べに来てくれたりするんです。ちょっと食べて、お茶を飲んだら帰っていく。そんな、下町感のある繋がりもあっていいですね。
幼少期からご両親の姿をみて、料理人を志してきたドムさんが、自分らしい料理人を形作ってきた道のりを伺ってきました。Vol.2では、ドムさんがDominicというお店に込めた想いを伺っていきます。そして、今地元の長崎からドムさんのお店を一時的にサポートして、一緒に働いてくれているお母さんも登場です!
ドムさんがどんな食体験をしてきたのか、そんな幼少期のお話も伺っていきたいと思います。そこには、ドムさんが築き上げてきた感性が垣間見えるかもしれません。
– Information –
Dominic(ドミニク)
東京都 世田谷区 若林4-26-8
<営業時間>17:00〜24:00(L.O23:00)
※不定休
※テイクアウトランチあり(不定期)
