2019.10.31. | 

[第3回]東京で自然と共存する飲食店から見える景色:届く野菜がとにかく大きい

駅のすぐ近くに綺麗な小川や緑が広がり、都内有数の畑面積を誇る、東京都国分寺市。この街の飲食店「SWITCH KOKUBUNJI」の店長・榎本彩(えのもと・あや)さんが、「都内」で自然と共存する、豊かな食文化に触れあう日々を綴ります。

やっと国分寺の農家さんより秋野菜が出始める時期、いつにも増して野菜の納品を心待ちにしているのが最近のSWITCHです。特に根菜類は、夏の気候ではどうしても育ちにくいためにしばらくお目にかかれておらず、この季節を心待ちにしていました。

SWITCHの看板メニュー「サラダボウル」も、根菜類が入ることで食べ応えが増してきます。(枝豆、トマト、トウモロコシといった鮮度が命の夏野菜を頬張れる贅沢さも格別なのですが。)前回のコラムでも触れた、夏のベースサラダ・モロヘイヤもその役目を終え、ケール、赤水菜、キャベツにバトンタッチ。季節の変わり目は、収穫が始まったり、終わったり、毎日のようにサラダボウルの中身の野菜は忙しなく変化するので、仕込みもなかなか大変なものです。

ところで、こくベジを納品する上でどうしても気がついてしまうことがあるんです。それは野菜の大きさ。おばけのように長いごぼう。運ぶのにも一苦労する、ダンベルのような大根。葉が付いたままの長い人参は、なんとなく見慣れてしまうサイズ感なのですが、それでもスーパーで通常サイズを見る度に「あ、こくベジのと全然違う!」とハッとします(笑)。他にも、お客さんもおもわず凝視してしまうほどの、通常の4倍ほどのサイズのズッキーニ。日に日に長さを増す水菜。葉のぎっしりつまったローズマリー。顔より大きなブロッコリー。挙げ出したらきりがないのですが、規格外の大きな野菜が届くことがとても多いんです。ですから、レシピにある「ごぼう2本」や「ローズマリー5本」が、こくベジだと適用されません(笑)。

野菜は自然の中で育ちますから、どうしても大きさに差が出てしまいます。スーパーや直売所で不揃いの野菜が並ぶことがない一方で、その分売りに出せない野菜も多くできてしまいます。しかし、地元の飲食店ならば規格外のサイズの野菜でも受け入れることができます。お店に届く野菜が大きい理由には、そんな事情があるのです。

 

 

こくベジがとっても美味しいというお話は何度かさせていただいてるのですが、「大きくても美味しい」という話もぜひさせてください。というのも、SWITCHでお客さんとお話ししていると「大きいと中がスカスカだったりしないの?」とよく聞かれるんです。たしかに、一般的にはそういうこともあるのかもしれません。

しかし、こくベジのお野菜に関しては、そのような残念な思いをしたことがありません。例えば大根。大きくて太い大根も、上から下までどこを切っても中身がぎっしりと詰まっていて、その重さも納得です。歯ごたえは「シャキッ」と瑞々しく、梨のような軽い食感で筋っぽくもありません。この大根、生のままでももちろん美味しいのですが、苦味の一切ない甘くとろけるような煮物にするのもおすすめです。

熱弁してしまいましたが、それだけこくベジにとって「大きさ」はさほど問題ではないということなのです。野菜が美味しいということは、野菜に含まれている水が美味しい、つまり水が新鮮ということ。もちろん国分寺を流れる名水百選の水が美味しい野菜を育てるのですが、いつも採れたてを届けてもらっていること自体が美味しさの鍵なんですよね。

ですから、こくベジの美味しさを存分に知っている私たちは、毎回届く野菜のサイズが不揃いでもなんてことないですし、飲食店では一般家庭に比べて食材が必要になりますから、ちょっとお得な気分にもなります。もちろん、毎回サイズが大きいわけではないですし、その点に対応しきれない飲食店もあるかもしれません。しかし、小ロットながらも新鮮で美味しいお野菜を届けてくださる農家さんに対して、地元の飲食店として野菜を取り巻く環境への理解を示す。地元の野菜を盛り上げる要になるのではと思っています。

 

 

– Information –

店舗名:SWITCH KOKUBUNJI

住所:東京都国分寺市南町3-22-31 島崎ビル201

マッサージ屋さんの入っている建物2階

連絡先:050-1709-0492

営業時間:火-日 11:00-19:00

定休日:月 (月祝は営業、翌水曜が休み)

https://cafe-switch.jp/

 

ライター / 榎本 彩

1992年生まれ。女子美術大学芸術表象専攻卒業後、コミュニティデザインに興味を持ち人と触れ合える飲食業界へ。2018年4月25日にオープンしたSWTICH KOKUBUNJIの店長となる。人や街をつなぐ食の可能性に魅了されながら日々奮闘中。

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