2023.09.12. | 

[Vol.1]始まりは商店会のフリーマーケットから。WAO!!が提案するあたらしい「屋台」のかたち

家具製作のプロと建築家がタッグを組んで、屋外イベントで使えるあたらしい「屋台」をつくりました。商品をディスプレイしたり、テーブルにしたりと使い方は自由自在。WAOSK!!と名付けられた木製スタンドの開発、製造を手がける協働ユニット、WAO!!の木津近さんと草山哲郎さんにお話を伺いました。

地元つながりで出会った家具のプロと設計のプロ

WAOSK!!の見た目はとてもシンプル。白く塗られた長めの天板を、木製の脚と梁とロープで支える構造はこれ以上ないほどミニマムです。手がけたのは木津近さんと草山哲郎さんによる協働ユニットWAO!!です。

家具製作技能士の木津さんは北欧ヴィンテージ家具取扱店で家具の修復を手がけ、草山さんは建築士事務所を主宰しています。

−−お二人がユニットを組むことになったいきさつを教えてください。

草山さん:木津くんもぼくも生まれは秦野市なんですが、出会ったのは大人になってからです。共通の地元の友人の紹介で知り合いました。普通に一緒に飲みに行ったり、その友人も含めて3人でバンドを組んでみたり。

 

木津さん:バンドはすぐに解散しちゃいましたけれど(笑)

 

草山さん:音楽性の違いで…(笑)。まあそうやって遊びながらも、ときどき友達のイベント出展を手伝ったり、僕の会社の家具を木津くんにお願いしたり、といった関係になっていきました。

WAOSK!!を作ったのは、僕の事務所のある商店会で使いたかったのが発端です。商店会で定期的にフリーマーケットをやるんですけれど、みんな家からテーブルを持ってきて出して商品を並べているんですよね。70センチ前後の高さなんですが、立って接客するから本当はカウンターぐらいの高さがあるといいんじゃないかと思って。木津くんに「ちょっと作ってみたいんだけど一緒に手伝ってくれない?」と頼んだのが一番最初です。

 

お互いのいいところを掛け合わせてものづくりをする

−−草山さんの最初のアイディアは、どんなふうに形になっていったんでしょうか。

草山さん:おおまかな形やサイズなどのアイディアは最初にぼくが考えて、それをどう作っていくかというところは木津くんが出してくれました。

ものを具体的に作るには図面を描きますが、どうしても図面だけでは分からない部分が出てきます。そこは作りながら一緒にアイディアを出していきました。木材の加工についても最適なやり方は木津くんがいちばんよく分かっているので、そこは木津くんにアイディアを出してもらいました。一方で、木津くんは普段、ある程度デザインが決まった家具を扱っているので、それとはちょっと違う視点のモノのあり方についてはぼくから提案しました。厳密に役割分担をしたということではないですけど、お互いのいいところを掛け合わせながら作っていけたのが良かったですね。

 

木津さん:修理の仕事って、あらかじめ形は決まっていて、それをどう仕上げるかという世界なんですが、今回はゼロからやれたのが面白かったですね。草山くんが出してくれたたたき台が最初にひとつあって、それもまだ形になってないようなところから二人で話し合いながらやれるというのが新鮮で。青春!みたいな感じで楽しかったですよ。

 

作って終わりじゃない。あたらしいものを受け入れてもらうということ

−−WAOSK!!の初お披露目はどこでしたか。

草山さん:今年の春にやった商店会のフリーマーケットですね。そのとき、いきなりたくさん作ったんですよ。

 

木津さん:そうそう。そこがやっぱり建築の人だと思ったんですけど、一台作って満足、ということではなくて、たくさん作って並べたいと。

 

草山さん:風景を変えたい、という気持ちがあったんですよね。なんて言ったらいいんだろうな…それぞれが適当にお店を出している感じも自由でいいんですけど、もっと特別感を出したいなと思っていて。木津くんに無理を言って、何台作れるかな、と声をかけました。

 

木津さん:結局ぜんぶで8つ作りました。WAOSK!!はすべて手作業なんです。普通のお店で木材やパーツを買ってきて、こつこつと。8台も作るとなると作業の場所がなくて、草山くんの事務所の中で丸ノコを回したりとかして、ガレージ感がありましたね(笑)。

 

草山さん:商店会にはいきなり持っていったので、みんなちょっとポカンとしていました(笑)。これ使っていいの?みたいな感じになっちゃって。こういうのって、続けて使ってもらって、だんだん受け入れてもらうものなんだなということがよく分かりました。作って終わりじゃないということですね。

 

いくつも並べることで、全体の風景が変わってくる

草山さん:その次に持って行ったのが、茅ヶ崎在住の建築家、山口理紗子さんが主催するイベント「茅ヶ崎とコーヒー」です。山口さんとはもともと茅ヶ崎つながりで親しくさせていただいていたんですが、建築家としての仕事のかたわら地域のことも、というパワフルさがすごいじゃないですか。勉強させてもらいたいと思ってイベント運営に入っていったんです。そのなかで「こういうの作ってるんですけどどうですか」とWAOSK!!を見せてみたら、このイベントにめちゃくちゃフィットするんじゃないかと言ってもらって。

 

−−実際に使ってみていかがでしたか。

草山さん:フレームがあることで、デコレーションがしやすくなっているのがWAOSK!!の特徴です。ものを置くだけでなく、吊るしたりもできるので立体的になっている。そういうのを何台か並べることで、やっぱり全体の風景が変わってくるんですよね。それが実際に見れたのが良かったですね。

あとは、イベント会場の間を組み立てちょっと使ってみせてバラして、みたいなことをしてみました。

 

−−へええ!それはどういう・・・

草山さん:WAOSK!!は女性ひとりでも運んで組み立てができることを目指して設計しています。移動も組み立ても簡単だよ、ということが表現したくて、二人でWAOSK!!を運んではコーヒー屋さんでコーヒーを飲んで、飲み終わったらバラしてまた次のところへ運んで、というのをひたすら繰り返してみました。あれも面白かったですね。

 

次回は9/14(木)に公開予定です。
(つづく)

 

– Information –
WAOSK!!

 

ライター / 八田 吏

静岡県出身。中学校国語教員、塾講師、日本語学校教師など、教える仕事を転々とする。NPO法人にて冊子の執筆編集に携わったことからフリーランスライターとしても活動を始める。不定期で短歌の会を開いたり、句会に参加したり、言語表現について語る場を開いたりと、言葉に関する遊びと学びが好き。

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