2020.07.14. | 

[第7回]東京で自然と共存する飲食店から見える景色:”つながる”をやめなかった3ヶ月間

駅のすぐ近くに綺麗な小川や緑が広がり、都内有数の畑面積を誇る、東京都国分寺市。この街の飲食店「SWITCH KOKUBUNJI」の店長・榎本彩(えのもと・あや)さんが、「都内」で自然と共存する、豊かな食文化に触れあう日々を綴ります。

新型コロナウイルスによって生活はガラッと変わってしまったかと思います。瞬く間に新しい生活様式が導入され、SWITCHも感染対策に追われながらここまでなんとかお店を続けてきました。気がつけばもう7月です。未だに、明日何人お客さんが来てくれるのか予想するのも難しく、まだまだ落ち着くことはありません。緊急事態宣言が発令されてからこれまでの間、多くのネガティブなニュースの中に、コロナ禍を逆手にとる前向きな話題が日を増すごとに多く見られるようになってきたように思います。どんな環境にいても不安の募る毎日ですが、SWITCHでもこの数ヶ月間でテイクアウトの開始などポジティブな取り組みを取り入れ続けてきたので、今回はそれを振り返っていきます。


4月、お食事のテイクアウトを軌道に乗せようと奮闘する時期、常連さんは変わらずお店にいらしてくださいました。これまでより頻度を上げてご来店いただける方もいたりと、定期的に馴染みの方がいらっしゃる安心感はその後も心の支えとなったように思います。
 


開店当初からの常連である成瀬さんから「SWITCHでマスクを販売してもらえませんか?」と持ちかけられたのも、ちょうどその頃でした。マスク不足真っ只中。私自身も布マスクをつけてお店に立ち、毎日のようにドラッグストアやスーパーの奮闘ぶりなどもニュースなどで目にしていました。
成瀬さんの手作り布マスクは、瞬く間にSWITCHの一番の人気者に(笑)。作りもとても丁寧なもので、柄も素材も豊富、SNSで広めるとすぐに取り置きの電話が鳴り、初めてSWITCHに来店してくださった方も少なくありません。マスク販売は今も継続しており、季節に合わせて麻や接触冷感素材を取り入れたりと、まだまだ根強いファンもいらっしゃいます。いつの間にか、SWITCHの定番商品になっていました。


これがコロナ禍での私の最初のアクション。正解の無い環境下で塞ぎ込んでしまいそうだった私が、前向きにいろんな挑戦をしようと思えたきっかけでした。

 

 

国分寺中がそうでした。街の複数の飲食店による合同クラウドファンディングの立ち上げ、テイクアウト情報の掲載サイトや、チラシの制作。飲食店だけに限らず、街全体で取り組まれていました。その他にも、オンラインを駆使して、定期イベントの継続など、うちにいても街の人とのつながりを感じられるような動きが多く見られたように思います。この街は、コロナ禍でも活気があり、プラスのエネルギーで前に進んでいました。

そのエネルギーによって、今回SWITCHには新たな景色が生まれました。SWITCHで念願の、野菜販売ができるようになったんです。もちろん、国分寺野菜の「こくベジ」です。

いつも国分寺の農家さんと飲食店を繋いでくださるこくベジ便の配達のみなさんの企画。この数ヶ月間は、SWITCHの野菜の注文数も激減、国分寺中の飲食店からの注文も減ったことでしょう。それと同時に、小学校の休校による給食の中止。そして、春先のお天気の良さと暖かさによる豊作。いろんな要素が相俟って、行き場を失う野菜たち。救済策として生まれたのが、今まで無かった個人宅向けのこくベジ配達だったそうです。はじめは単発的に行われていましたが、その後週に1度の長期的な取り組みへと変化。内容も農家さんの野菜だけでなく、こくベジを使用したジャムやドレッシングなどが追加されました。その際にSWITCHは、「お客さんが注文したお野菜の受け取り店舗」として協力させてもらうことになったのです。

静かな店内に、少し活気が戻ったように思えました。もちろん、マスクの着用、受け取り人数は1人、短時間滞在など、いらっしゃるお客さんはみなさん細心の注意を払ってくださいました。それでも、採れたて野菜の入ったずっしりとした袋を覗いた時の笑顔は、テイクアウト利用が中心となっていたSWITCHでは久しぶりに見た光景でした。とはいえ「葉玉ねぎなんて初めて調理する」「想像以上に大きな大根でびっくりした!」「店長さんのおすすめレシピはあるの?」なんて、これまで交わしたことのない会話の方が多かったのですが(笑)。地元の鮮度の高い採れたて野菜は抜群の美味しさですから、毎週のように注文してくださる方も多く、先週頑張って調理した葉玉ねぎの美味しさ、発見した新しい枝豆の調理方法、みなさん嬉しそうに報告してくれます。その様子を見た、SWITCHに食事をしに来ていたお客さんが、また興味津々で。野菜注文の数は広がり、多い時では15件も注文が入ったこともありました。その日はカフェなのか、八百屋なのか、わからなくなるくらいには、店内が野菜まみれになりましたね。

でも、これを日常にしていきたいと思っています。今回協力させてもらって、野菜で街がつながっている様を強く実感しました。食は絶対に削ぎ落とされることのない生活の一部で、カフェで食事をすることが難しくても、美味しい野菜は手に入れに来てくれる。つながりを絶やすことなく、さらに街の美味しいものが広まる、素敵な取り組みです。これを皮切りに、地域の企業さんからお客さん向けの食材を入れるための冷蔵庫を提供していただいたり(これもまたいつかここでお話できたら)、梅雨の長雨で売れ残ってしまったB級品のお野菜の販売依頼など、新たに様々な提案が持ちかけられています。

今度はSWITCHから街へ活気を届けたい。コロナ禍の不安を跳ね返せるような挑戦を、これからも続けていきたいですね。

 

 

– Information –

店舗名:SWITCH KOKUBUNJI
住所:東京都国分寺市南町3-22-31 島崎ビル201
マッサージ屋さんの入っている建物2階
連絡先:050-1709-0492

営業日時
7月 11:00-17:00 定休日:月曜+第二第四水曜
8月以降 平日11:00-17:00 休日11:00-18:00 定休日:月曜

https://cafe-switch.jp/

ライター / 榎本 彩

1992年生まれ。女子美術大学芸術表象専攻卒業後、コミュニティデザインに興味を持ち人と触れ合える飲食業界へ。2018年4月25日にオープンしたSWTICH KOKUBUNJIの店長となる。人や街をつなぐ食の可能性に魅了されながら日々奮闘中。

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