2020.05.28. | 

[第6回]東京で自然と共存する飲食店から見える景色:街全体で自然を受けとめる

駅のすぐ近くに綺麗な小川や緑が広がり、都内有数の畑面積を誇る、東京都国分寺市。この街の飲食店「SWITCH KOKUBUNJI」の店長・榎本彩(えのもと・あや)さんが、「都内」で自然と共存する、豊かな食文化に触れあう日々を綴ります。

この春SWITCHはオープン3年目を迎えました。オープンして1年は国分寺の農家さんから届く野菜の移り変わりに翻弄されてばかりで、毎週野菜の発注表やレシピとにらめっこ。「地産の旬野菜だけでカフェのメニューを構成するってこんなに難しいんだ……。」と思う一方で、自然と共存する働き方に魅了されていきました。

2年目だって自然を相手にしているからには一筋縄にはいきません。雹(ひょう)が降ったり、台風がきたり、いつだって「いつも通り」はないのです。今年も、予測不能な1年がはじまります。

そんな節目に振り返ってみると、まだここでお話ししていない国分寺の素敵な取り組みがあることを思い出しました。それは「うどフェスタ」と、「トマトフェスタ」。主催は国分寺市商工会、そしてJA東京むさしや、いつもSWITCHに野菜を届けてくれるこくベジプロジェクトの方々の協力のもと旬野菜の魅力発信や、地産地消の推進を目的として企画されました。

舞台は国分寺市内の飲食店(変動はあれど毎年20〜30店舗ほど参加しています)、主役は国分寺産の野菜です。夏はトマト、冬はうどが、飲食店で姿形を変えて同時多発的にメニューに並ぶわけです。トマトやうどをJA東京むさしから安く買えたり、飲食店は特別メニューを考えたり、そして地元のイラストレーターさんやデザイナーさんによるポスターが街中に配られたりと、なかなか手の込んだ10日間がはじまるのです。

さて、SWITCHでは主役野菜を毎回ポタージュに迎え入れます。トマトフェスタでは、トマトにジャガイモも少し加えて、ジャンキーな味わいに。うどフェスタでは、うどの繊細な苦味をホワイトソースをベースとして和洋折衷風に仕上げました。フェスタの主役にまで登り詰めてくるような旬ど真ん中のお野菜ですし、私もいつにも増して気合が入るので、とっても美味しく出来上がります。お客さんの中には「うどポタージュが美味しすぎてまた来ちゃいました!」と連日訪れる方もいらっしゃるなど、いつもとは一味違う風景が生まれます。

こういうのって「商業施設の飲食フロア」などでよく目にする催事ですよね。これを街単位でできちゃうのが、国分寺のすごいところだなと思います。参加店も多い時は30店舗を超えることもありますし、飲食店側も全体的にとても協力的だということが伺えます。

日頃から、こくベジプロジェクトを通じて国分寺の農家さんから野菜を受け取ると、「来週からカブが収穫できますよ」「もう花が咲いてきたから水菜は終了です」「暖冬のおかげで野菜が豊作です」など、畑に関する情報が入ってきます。先日も「ほうれん草が暖冬で山のように収穫できてしまったので大特価で売ります」と連絡をもらい、20束ほど納品してもらいました(笑)。

さあこの大量のほうれん草をどうしようかと、そこからレシピを考えるのですが、結局またポタージュに迎え入れ(大量にあるのでとっても濃厚に作れました)、しばらくSWITCHだけの「ほうれん草フェスタ」状態に。「ほうれん草のポタージュが美味しすぎてまた来ちゃいました!」と言われた時には、やっぱり旬ってすごいんだなあと自然の力を実感しました。

きっとSWITCHだけでなく、国分寺中の飲食店がこのような体験を重ねることで、地産地消への意欲を深めているのだと思います。だから「トマトフェスタ」も「うどフェスタ」も、街中の離れた飲食店同士で楽しむことができるのです。国分寺という街が野菜によって繋がり、今の地域の関係性があると思うと、やっぱり自然の力ってすごいです。野菜と日々向き合うSWITCHが街にとって欠かせない存在として育っていけるように、着実に根を張っていかないとですね。

 

 

今年の「うどフェスタ」「トマトフェスタ」は内容も日程も未定となっています。決まり次第HPでお伝えしますね。

 

– Information –

店舗名:SWITCH KOKUBUNJI

住所:東京都国分寺市南町3-22-31 島崎ビル201

マッサージ屋さんの入っている建物2階

連絡先:050-1709-0492

営業時間:火-日 11:00-19:00

定休日:月 (月祝は営業、翌水曜が休み)

https://cafe-switch.jp/

ライター / 榎本 彩

1992年生まれ。女子美術大学芸術表象専攻卒業後、コミュニティデザインに興味を持ち人と触れ合える飲食業界へ。2018年4月25日にオープンしたSWTICH KOKUBUNJIの店長となる。人や街をつなぐ食の可能性に魅了されながら日々奮闘中。

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