地元のアーティストの方との出会いからはじまったイベント
「何か変わったものができたらしい」。2016年6月のオープン当初、地元の人にはそんな風に思われていたのかもしれません。京王線沿いにある多磨霊園駅から徒歩1分のところ、閑静な住宅街の商店街にできた「FLAT STAND」(以下、フラットスタンド)。
「この近辺にはないお店の外観だったので、異質な雰囲気をかもし出していたかもしれません」と糟谷さんは言います。地域の人に受け入れられるか最初は少し心配だったそうです。そして、オープン数週間前のある夜、商店街に灯りがこぼれるころ、お店の前に近所の人が足を止めます。それを見かけた店長の和田滋夫(わだ・しげお)さんが、お店の中の様子を外から見ていたその人に、「どうもどうも」と声をかけたことで「こういう場所ってあったらいいなと思っていたんです」と会話が始まったそうです。
話を聞くと、その方はすぐ近くに住む作家さん。ギャラリーやワークショプができる空間が欲しかったとのことで、カフェがオープンしてまもないころ、イベントをお店で一緒に開いてくれました。それをきっかけに、ワークショップなどを行うことが増えたそうです。
糟谷さん:そもそも、カフェがやりたかったわけではないんですよね。僕たちが主役ではなく、”スタンド”や”みんなの場所”として使っていただきたいと思っていました。そこに僕たちが”寄り添う”イメージを当初から強くもっていました。
実は、の話ができるゆるやかな信頼関係
フラットスタンドでは、何か催しものをするとき、主催する人とお店が一緒になってつくりあげていくことを大切にしています。その人がどんな思いでイベントやワークショップを行おうとしているのか、できるだけ詳細に聞いて、主催する側も参加する側も楽しめるように、プランを練っていくのだそうです。
糟谷さん:和田はワークショップでも人に寄り添った準備や開催にこだわってきました。オープンから2年の間、彼がそのスタイルをずっと丁寧に続けてきてくれたおかげで、僕もお客さんとの関わりの中で、「実は、訪問看護の仕事をしているんです」という話もできるようになりました。
そうなんです。糟谷さんは、理学療法士でもあり、「株式会社シンクハピネス」の経営者でもあるのです。店長の和田さんは、もともと福祉の世界で働いていました。そしてフラットスタンドでは、時々、医療福祉関係者向けの勉強会も行われています。
糟谷さん:僕がフラットスタンドを立ち上げたのは、健康なうちから心身について関心をもってほしい、そのきっかけとなる場ができればという想いからでした。でも、会社設立当時、自分の中ではその想いが強すぎたのかもしれませんが、医療側の人間と地域の人との間に距離を感じる経験をしました。それもあって、自然な流れで自分や家族の健康に関心をもってもらうにはどうすればいいだろうと考えていました。それが2年たった今、フラットスタンドを通じて実現できてきたように思います。お客さんがフラットスタンドを育ててくださった結果かなと思います。
気付いたら、医療や福祉で頼れる人がそばにいる
人と医療、福祉、そして教育や食、健康、アート、子育てが自然と交じり合うような空間。普段はコーヒーを飲みながら語り合ったり、仕事をしたり、ワークショップに参加したり、思い思いに過ごせる場所だけれど、身体のことで不安に感じた時は、フラットスタンドの誰かに相談すればいい。
糟谷さん:僕がいくら医療、福祉といっても、必要性を感じてもらえないと意味がない。でも、普段からたくさん選択肢があれば選んでもらえる可能性が高いです。フラットスタンドでは、管理栄養士さんや薬剤師さん、介護福祉士さんなどさまざまな専門職の人が勉強会を開いています。将来的には、医者や看護師がコーヒーを淹れているかもしれません。そんなふうに、医療と日常が混じり合った、自然な環境や人間関係が生まれているかもしれません。
和田さんの物腰のやわらかな接客と、1杯1杯丁寧に淹れるコーヒーが美味しくてとても心地いいのですが、これまで飲食業未経験だった和田さんはどのようにしてお店を運営するようになったのでしょうか。そもそも糟谷さんは、なぜ訪問看護の仕事とフラットスタンドを両立させようと思ったのでしょうか。こちらについても興味深いお話が聞けました。(つづく)
– Information –
FLAT STAND
東京都府中市清水が丘3-29-3
<月〜土曜>11:00〜18:00(火曜定休)
<日曜>11:00〜17:00
※外部イベント出店等による臨時休業あり
※イベントによる貸切あり
WEB:http://flat-stand.com/