日本のぶどうで日本人に合ったワインをつくる
深川ワイナリー東京では現在、白、赤、スパークリングの3種類のワインをつくっているそうです。
上野さん:それともうひとつ、「ろ過」と「無ろ過」の違いがあります。ろ過ワインは一般的な透明のワイン。無ろ過ワインは果肉や糖分をろ過せずに残しているので、ジュース感が強いんです。海外ではろ過ワインが主流ですが、無ろ過ワインは日本人と相性が合うなあと思っていて。
日本人に合う、とは?
上野さん:日本では、あまりお酒に強くない人が楽しみたいときにワインを選ぶ傾向があります。そういう人にとってはジュース感が残っている無ろ過ワインのほうが飲みやすい。また、濁ったタイプの飲み物が身近だということもあります。例えばりんごジュースでも、クリアタイプと混濁(こんだく)タイプがあるでしょう。
たしかに、濁ったものの方がよさそうだ、というイメージもあります。
上野さん:味噌汁も飲んでるし、濁ったものに寛容な民族なんだと思います(笑)。
なるほど、無ろ過ワインは日本ならではのワインだといえるのですね。日本ならではといえば、ぶどうの品種にもこだわりがあるそうです。
上野さん:一般的な赤ワインの原料となる種は、日本では育ちにくい。だから、スチューベンのような日本の風土にあったぶどうを使うことで、日本産のぶどうでもおいしいワインができることを知ってほしいんです。
「調和」こそが東京らしさ。アッサンブラージュの豊かな味わい
「ちょっといろいろ試してみますか」と、上野さんがワインの試飲をさせてくださいました。
上野さん:これがアッサンブラージュといって、3地域3品種のぶどうをブレンドしてつくったワインです。
グラスに注がれた瞬間、ジュースのような甘い香りが広がります。口に含むとすっきりした切れ味の良さが印象的です。
上野さん:産地のワインは、その土地の郷土料理に合わせてつくります。でも東京は、いろんな地域から人やおいしいものが集まってきて調和している場所でしょう。だからいろんな地域のぶどうを合わせてみて、おいしいなと感じたらワインにしてみる、という考え方で作っています。
「調和」が東京らしさなんだ、という上野さんの考え方と、それが体現されたワインのおいしさに、大きくうなずきながらグラスを傾け続ける取材チーム一同です。
醸造所で教えていただいた、赤ワインのぶどうで作った白ワインもいただきました。見た目はふつうの白ワインなのに、口に含むと渋みがあって濃厚な、赤ワインそのものの味です。
上野さん:ふしぎな感じでしょう?それなら赤ワインを普通につくったらいいのに、って話かもしれないんだけど(笑)、こんな風に自分が面白いと思うものを、もうひとりの醸造担当者と、あーでもないこーでもないと言いながら作っているんです。
料理とワインが影響し合う、ワイナリーならではの楽しさを街なかで
何種類も飲み比べているうちに、どのワインにも共通する味わいがあることに気づきました。どれも香りが豊かなのにすっきりしています。
上野さん:アッサンブラージュでも単独のぶどうを使ったワインでも、ぶどう本来の味わいを残すということ、香りを重視すること、切れ味抜群であることを大切にしています。
それはなぜなのでしょうか。
上野さん:食事と合わせたいからです。特に、お醤油やお米、魚を使った日本の料理に合うワインにしたい。口に入ってなめらかで、後味が穏やかに残るものですね。
会員制レストラン「WineMan’s Table」では、深川ワイナリーのワインに合わせたお料理が提供されるそうです。
上野さん:料理の味見して、「だったらこのワインがいいよ」って持ってったりするのが、ほんま楽しい(笑)。逆に、ワインの仕上げの時期にはシェフの料理を食べるようにして、仕上げの味を料理に合わせていったりもしています。
そう話す上野さん、とてもいい笑顔です。
上野さん:こういったワイナリーならではの提供の仕方が街なかでできるのが嬉しいですね。おじいちゃんおばあちゃんや飲食店の人たちのように、遠くだとなかなか来れない人が気軽に来られる。それが、この深川という土地でやっている良さだと思うんです。
次回は10/24(木)に公開予定です。
門前仲町の駅の上がワイン畑に!?深川ワイナリー東京が中心になって現在進行中の屋上緑化計画と、今後の展望についてお伝えします。(つづく)
– Information –
深川ワイナリー東京
東京都江東区古石場1-4-10高畠ビル1F
<平日>15:00~22:00
<土日祝日>12:00~22:00
・17:00からバータイム(L.O 21:30)
・試飲は17:00まで
※定休日:火曜日
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