2019.07.23. | 

[第3回]めんどくさい料理を楽しい料理に変える:下味で味を整える

みなさん、日々の料理をたのしんでいますか。「たのしいどころか、めんどくさい……」と感じている方もいるのではないでしょうか。そこで、料理をもっと気軽にたのしむコツを、フードデザイナーの蓮池陽子(はすいけ・ようこ)さんから教わる連載をスタートします。料理をたのしむには、誰かに「おいしい」と言ってもらうことが大切です。そんな体験が重なるうちに、めんどくさい料理がたのしい料理に変わっているはずです。

「どうも味が決まらないなぁ……」。日々のごはんづくりで、こんな風に感じることはありませんか。何を入れたら味が決まるのか分からず、ついコンソメやだしの素を入れて、その場をしのいでいませんか。

第2回目のコラム「うまみで味のバランスを整える」では、4つの味の決め方のひとつである、「うまみ」について書きました。



ひとつめ 「うまみと=うまみで味のバランスを整える」 

ふたつめ 「香り=香りをプラスして決める」

みっつめ 「酸味=酸をプラスして決める」

よっつめ 「下味=下味で味を整える」

今回は、「下味で味を整える」」についてお伝えします。

全ての料理に下味が必要なわけではなく、下味をつけたほうがいい料理と、そうでない料理があります。下味をつけたほうがいい料理は、和え物、ステーキ、パスタなど。下味が必要ないものは、煮物、煮込みもの、うどんやそうめんなどがあります。加熱時間の長いものや素材に塩が入っているものは、下処理は必要ですが、下味の必要がない(少ない)と言えますね。

 

そもそも下味がなぜ必要なのか、考えてみたことはありますか?

 

素材を数種類合わせて作る和え物は、下味をつけたものとそうでないものの違いがわかりやすいです。家庭料でよく作られるポテトサラダは、それが顕著な料理なので、ポテトサラダを例に下味がなぜ必要か、考えてみましょう。。


ポテトサラダって、味がぼんやりすることがありませんか? 特に作りたてはそう感じることが多いと思います。このぼんやり感、それぞれの素材に下味をつけることで解消することができるんです。塩や酢を使って下味をつけた素材は、音楽でいうチューニング済みのイメージです。様々な楽器で奏でる音が調和するように、バラバラの食材を下味でチューニングしているのです。和え物は特にハーモニーが重要な料理ですから、きちんと下味を整えたものは、はじめは口の中で主張する食材があっても、噛んでいくに従って調和して美味しいと感じます。

具体的には

・キュウリは薄切りにして塩もみ
・玉ねぎは薄切りにして水にさらして辛みをとったあと塩と米酢で合わせる
・人参は塩茹で
・ジャガイモは茹でたてに塩こしょうお酢で味付け

この下味をやってみてください。

ちなみに、ハムは素材に塩味があるので下味は不要です。もう一工夫加えるなら、玉ねぎをマリネしてみて。下味をつけた素材を全部混ぜ合わせ、マヨネーズやオイル、マスタードを絡めたら完成です。ほら、味がぼやけることなく、それぞれの素材がハーモニーを奏でるポテトサラダができたはず!

おひたしも、下味が有効です。茹でた葉物野菜など、水気の多い野菜は、そのまま調味料をかけるよりも「醤油洗い」や「酢洗い」といった下味で一工夫加えると、水っぽくならずに美味しく仕上がります。ちなみに、醤油洗いは青菜のおひたしを作るときに有効な調理法で、茹でた青菜に醤油少々をかけて水気を絞ります。絞るときは手を使っても、巻き簾を使ってもかまいません。醤油洗いのあと、改めて味付けをします。酢洗いは酢の物を作るときの手法で、魚を酢にくぐらせて下味をつけます。生臭みを取ったり、衛生面の効果もあります。

白和えやお正月に食べられる紅白なますも、下味が有効です。白和えは一つひとつの素材を煮て味を付けてから、豆腐やゴマで作った和え衣で和える、ちょっと手のかかる料理ですが、下味が重要だから故の調理法です。ぜひ一度、一手間かけて美味しく作ってみてください。

最後に、肉を焼くときの下味も少しだけ紹介させてください。ステーキのお肉は、焼く30分前に冷蔵庫から出しておいてください。そして、肉の重量の0.8〜1%の塩をふって焼くのがおすすめです。この下味は、食べる際にソースや塩をかけても大丈夫なぐらいの塩分量ですのでご安心を。唐揚げの味が決まらないときも下味を意識して作ってみると良いかもしれません。普段作る時よりしおや醤油を多めにして、漬け時間は15分程度にしてみてください。長時間漬け汁につけておくと、浸透圧で肉から水分が出てしまい、肉がパサつく可能性があるからです。

 

蓮池陽子

ライター / 蓮池 陽子

東京・雑司が谷出身。ビストロ勤務の後、料理教室で講師を務める。アウトドアで山菜や貝などの山や海の恵みを採取する中で、美味しい物の背景には“美しい自然”や“たくさんの物語”があることに開眼。現在は”食の物語を紡ぐしごと”をコンセプトにケータリング、料理教室、フードコーディネート、メニュー開発、執筆などを行う。