2019.04.25. | 

[第2回]めんどくさい料理を、たのしい料理に変えるコツ:うまみで味のバランスを整える

みなさん、日々の料理をたのしんでいますか。「たのしいどころか、めんどくさい……」と感じている方もいるのではないでしょうか。そこで、料理をもっと気軽にたのしむコツを、フードデザイナーの蓮池陽子(はすいけ・ようこ)さんから教わる連載をスタートします。料理をたのしむには、誰かに「おいしい」と言ってもらうことが大切です。そんな体験が重なるうちに、めんどくさい料理がたのしい料理に変わっているはずです。

「どうも味が決まらないなぁ……」。日々のごはんづくりで、こんな風に感じることはありませんか。何を入れたら味が決まるのか分からず、ついコンソメやだしの素を入れて、その場をしのいでいませんか。

前回のコラム「みんなが好きなごはんの作り方」は、

フードデザイナーとして、誰もが好きな料理のレシピもご紹介したい! ということで、次回は具体的な味付けについてお話しします。味付けのコツがわかると、もっと気軽に、みんなに喜んでもらえる料理がつくれるはず。

と締めくくったので、今回はうまみで味のバランスを整える方法をお伝えしたいと思います。

みなさんは、「味付け」と聞くと、なにを思い浮かべますか。

味付けについて大きく分類すると、4つに分けることができます。

ひとつめ 「うまみ=うまみで味のバランスを整える」 
ふたつめ 「香り=香りを重ねて味を決める」
みっつめ 「酸味=酸を加えて味を決める」
よっつめ 「下味=下味で味を整える」
(わかりやすくお伝えするために、ちょっと大雑把な分類にしてみました)

今回はひとつめの「うまみ=うまみで味のバランスを整える」についてお話をしたいと思います。

そもそも「うまみ」とはなんでしょうか。「うまみ」と「おいしさ」の違いについて知っていますか。みんなが好きなごはんの作り方のホームページにわかりやすい解説を見つけたので、ご紹介します。

<おいしさ>
味だけでなく匂いや食感、その場の雰囲気や体調など、多くの要因に影響されて
感じるもの

<うまみ>
5つの基本味(甘味・酸味・塩味・苦味・うま味)の一つで、独立した味を指す公式の呼び名。

「うまみ」は味の一種であり、「おいしさ」は味を含む、食事に対するもっと大きな概念ということです。

代表的なうまみ物質として、昆布やトマトなど野菜に多く含まれる「グルタミン酸」があります。そのほか、肉や鰹節などに含まれる「イノシン酸」。しいたけなどキノコ類に含まれる「グアニル酸」。貝に含まれる「コハク酸」などが知られています。これらのうまみ物質は、さまざまな食材、調味料に含まれています。

あれ、みなさんの頭の上に「?」が浮かんでいそう……。こちらのコラムは、たのしく、わかりやすくがモットー! 難しい話はこのくらいにして、日々の料理で使えるコツへ、軌道修正しましょう。要は、「味が決まらない時は、うまみ成分の含有量が多いものを加える」と覚えてもらったらOKです。

例えば、カレーの味がピンぼけしている場合は、

1)味噌(グルタミン酸)を入れる 
2)すりおろしたマッシュルーム(グアニル酸)をフライパンで加熱して加える。

トマトソースの煮込みなら、

1)味噌(グルタミン酸)を入れる
2)みりん(グルタミン酸)を入れる

野菜スープには、

1)昆布(グルタミン酸)を入れる
2)キノコ(グアニル酸)を入れる
3)魚醤(イノシン酸)を入れる
※スープの具に入っていないうまみアイテムを加える

ハンバーグのソースは、

ケチャップとウスターソースだけでなく
1)みりん(グルタミン酸)を入れる

という風に。

ここに挙げたようなうまみアイテムを覚えておくと、味が決まらなくて困った時のお助けアイテムになるのです。ポイントは、すでに入っているうまみ成分と違うタイプのうまみ成分を加えること。うまみは掛け合わせることで相乗効果が生まれ、味わいが劇的に変わります。「味に深みが出る」というのは、うまみの掛け合わせを指しているのです。

ここで、味が決まらない時のお助けうまみアイテムをまとめておきますね。

<野菜系のうまみアイテム(グルタミン酸)>
きのこ類(干し椎茸やドライえのきなども)
トマト
昆布
漬物のつけ汁

<肉魚系のうまみアイテム(イノシン酸)>
ベーコン
鰹節
いりこ
干し海老
あたりめ

<調味料系のうまみアイテム>

みりん
醤油
みそ

魚醤

中でも私が頻繁に使用するのは、魚醤とみそ、それにキノコ類です。

みなさんは魚醤を知っていますか。「魚」という字が入っているように、魚介類を発酵させてつくる液体状の調味料です(ちなみに、普段よく使われる醤油は、大豆を発酵させてつくっています)。魚醤油(うおしょうゆ)や塩魚汁(しょっつる)と呼ばれていることも。魚介類を使っているため、匂いがややきついものもあります。私のオススメは「瀬戸内コラトゥーラ」。いりこの良い香りと「こんなにも!」と思うほど凝縮されたうまみがあり、これがあれば今日からみなさん料理上手になれること間違いなし(フードデザイナーの私は職業を失うかもしれません(笑))。それほど美味しい調味料なんです。すっきりと綺麗な味わいかつ、うまみが強いので、お吸い物やおひたし、パスタソースなどにも幅広く使えます。

 

瀬戸内コラトゥーラ
イタリア伝統の魚醤「コラトゥーラ」。瀬戸内海湾内で獲れたカタクチイワシをその日のうちに塩と酒粕で漬け、3年寝かせてつくられた調味料です。
https://www.setouchi-colatura.com/

 

みそもよく使ううまみアイテムです。長期熟成したみそは、驚くほどうまみたっぷり。お湯を注ぐだけでお味噌汁になります。「オススメのみそは?」と聞かれると、とにかく美味しいみそがたくさんあるので、こちらはまた別の機会にご紹介させてください。みそは万能で、カレーに入れたり、トマト系のロールキャベツの隠し味としても使えます。ドレッシングとしても活用しています。そして、料理だけでなく、お菓子にも使えるんです。パウンドケーキの塩の代わりにみそを入れると、複雑な味わいになります。意外かもしれませんが、バターとみそは相性が良いんです。

最後にオススメしたいうまみアイテムは、きのこ。きのこは味を下支えする、素晴らしいアイテムです。きのこのうまみを抽出するには、60度の温度帯をじっくり通過させることが大切です(お風呂のお湯は約40度。かなり熱いけれどしばらく触っていられる程度の熱さが約60度です)。そして、細かく砕くことでさらにうまみが出やすくなります。その2点を忘れずに調理するといいでしょう。

上記の2つのアイテムを使う、子どもからお年寄りまで大好きな味わい(と信じてます)のミートソースをご紹介します。

 

 

一番の味のポイントは、みそとみりんと砂糖です。実験的に、みそ、みりんを入れる前と入れる後で、味比べをしてもいいと思います。これらを入れると、みんなが食べやすい優しい味わいになります。

前回のコラム、「みんなが好きなごはんの作り方」でお伝えした

自分の味を提供するレストランではなく、みんなが好きなごはんをつくりたいなら、つくり手の「好き」を押し付けないことが大切です。みんなの90点の美味しさを目指すことが、みんなが好きなごはんをつくることの100点なのです。

をコンセプトにしたレシピでもあります。

ぜひ作っていたらけたらうれしいです。

蓮池陽子

ライター / 蓮池 陽子

東京・雑司が谷出身。ビストロ勤務の後、料理教室で講師を務める。アウトドアで山菜や貝などの山や海の恵みを採取する中で、美味しい物の背景には“美しい自然”や“たくさんの物語”があることに開眼。現在は”食の物語を紡ぐしごと”をコンセプトにケータリング、料理教室、フードコーディネート、メニュー開発、執筆などを行う。