2019.01.08. | 

[Vol.1]料理をもっと楽しくするきっかけ作り -フードデザイナー蓮池陽子-

フードコーディネート、飲食店のメニュー開発、雑誌やwebサイトへのレシピ提供、食にまつわる執筆活動、ケータリング、料理教室など、様々な分野で活躍するフードデザイナーの蓮池陽子さん。池袋駅から徒歩10分ほどの住宅地にひっそりと可愛らしく佇むアトリエにお邪魔して、現在の活動について伺いました。

食べものにまつわる色々な物語を、料理とともに伝えたい

蓮池さんは、大学卒業後にビストロに勤務し、料理教室の講師、アウトドア施設でのキャンプ料理ワークショップ企画・メニュー開発など、あらゆる仕事に携わった後に、フードデザイナーとして独立しました。食の仕事をするうえで大事にしているのは、「料理を通して何を伝えるか」ということだそうです。

 

蓮池さん:仕事の種類は多岐に渡りますが、「料理の楽しさを伝える」という核はひとつです。さらに言えば、「料理を通して自然のことを伝える」ことも、大きな目的ですね。例えば、「長野県の山菜が美味しいのは、雪が多く、重たい雪の下から出てくるから」とか、「このエリアの海はこういう特徴があるから、こういう種類のお魚が美味しい」とか。メッセージがはっきりしていれば、仕事の手法にはあまりこだわっていません。

 

そのほか、地方の風土や農林漁業の営みを料理として表現する「ローカル・ガストロノミー」や、100年後も残したい食材の使い方を料理しながら伝えていく「未来食卓会議」など、食のスペシャリスト達とのコラボレーションプロジェクトにも積極的に参画しています。料理を通して、食べものの背景にある歴史や自然、作り手の思いといった物語も伝えたいという思いは、「Atelier Story」(「食の物語を紡ぐ」)という屋号にも込められています。

 

みんなで作り、一緒に食べて、楽しむ

「とにかく毎日が楽しい」と、笑顔が止まらない蓮池さんですが、中でもどんなお仕事をしている時が楽しいのでしょう。

 

蓮池さん:目黒区にある「SML」という器屋さんと一緒に開催している「つまみ道」という料理教室が、いまはすごく楽しいですね。お酒に合うつまみをみんなで作り、作家さんの素敵な器に盛り付ける教室です。いい器で美味しい料理をつまみながらみんなで飲むんですよ。いい企画だと思いませんか(笑)デザイン事務所も兼ねているお店なので、レシピもかっこよくまとめて配ってくれるんです。いつかこれで本を作りたいね、なんて話していたりもします。

あとは、3年前から自分のアトリエで開催している「おせち教室」も楽しいですね。30日に、みんなで全員分のおせちを作って、シェアして持って帰るんです。おせちって全て1人で作るとなると大変だし、作りすぎて「こんなにいっぱい作るんじゃなかった」なんて後悔するのもつらいじゃないですか。でも、みんなでわいわい作って、少しずつ持って帰ればいいなと思って。

 

料理教室といっても、一方的に教えるのではなく、「みんなで一緒に作って楽しむ」という体験を大事にしている蓮池さん。そのような体験をきっかけに、料理を作ることが楽しくなる人が増えるといいな、と願っているそうです。

 

ハレの日よりも、ケの日のごはんを通して、料理をもっと楽しく

ビストロでの勤務やケータリングなど、華やかな料理を手がけてきた蓮池さんですが、最近は、日々の家庭料理を伝えたいという思いを強くしているようです。

 

蓮池さん:作って、誰かの笑顔に結びつくということが、私の喜びなんです。もちろん、ハレの日の料理でも笑顔は作れるけれど、日々の笑顔に繋がる食をやりたいんです。そう思うと、ケの日のおうちのごはんだな、ということが最近になって、はっきりしてきました。それに、毎日のことだから、日々の料理がもっと楽しくなるといいですよね。だから家庭料理が大事なんです。

 

料理が義務のようでつらくなっているような人が、料理をもっと楽しめるようになるには、誰かに「おいしい」と言ってもらう体験が大切だと言います。

 

蓮池さん:自分が作ったものを誰かが「おいしい」と言って食べてくれたら、「よし」って思うじゃないですか。料理のやる気スイッチは、誰かが喜んでくれるということでしか入らないと思うんです。そうやって自信をもってほしいですね。

 

蓮池さんと話しながら一緒に手を動かし、作った料理が「おいしい!」って言われたら。そして、蓮池さんに「大丈夫! できるじゃん!」なんて言われたら。どんなに料理に対して苦手意識がある人でも、自信を持つことができそう。蓮池さんの明るい表情には、強い説得力がありました。

 

今の仕事が楽しくてたまらない蓮池さんですが、この仕事につく前は、自分が食に関わるとは思っていなかったし、そもそもほとんど料理をしたことはなかったそうです。一体、どんなきっかけで食の道に進むことになったのでしょうか。次回は、蓮池さんが食の仕事をはじめたきっかけに迫ります。(つづく)

 

– Information –
Atelier Story
WEB:https://www.atelierstory.jp/

ライター / 黒木 瑛子

IT企業で営業職などを経験後、出産を機に、産後女性の支援事業立ち上げに携わる。その後、地域の子育て支援サイトの編集・ライティングや、コミュニティスペースでのイベント開催など、地域活動にも参画し、現在ライターとして活動中。仕事で知らない街に行くと、つい美味しいものを探してしまう食いしん坊。道の駅や物産店も大好き。

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